商標の拒絶理由通知書が来てしまった場合の対応

商標登録は弁理士を使わなくてもできる
最近ではインターネットで商標に関する様々な情報を入手することができます。
また、地方自治体や各種の団体では、商標権などの知的財産権の取得をサポートする試みも行われています。
このような情報やサポートを活用して、商標登録も弁理士に頼まずに、ご自分でしようという方も増えてきているように思います。
商標登録に関する手続は、必ずしも弁理士に依頼する必要はなく、ご自分で行っても全然構わないのです。
厄介なのは拒絶理由通知書への対応
商標登録をするためには、特許庁の審査を受けなければなりません。
この特許庁の審査をすんなりパスできればよいのですが、ときには「拒絶理由通知書」といって、”商標出願について、所定の理由(拒絶理由)があるため商標登録をすることができない”という拒絶通知が届いてしまうことがあります。
拒絶理由通知は、特許庁の最終的な判断ではありません。
そのため、拒絶理由通知に対しては、「意見書」で反論したり、「手続補正書」で出願した内容を補正したりして、商標登録を目指す対応を取ることができます。
しかし、商標登録に関する手続を弁理士を使わずに、ご自分でなさった場合に拒絶理由通知書が来てしまうと、その対応は中々困難であると思われます。
また、いわゆる”格安“系の弁理士事務所に商標の申請を依頼した場合、満足のいく意見書が作成されないことがあります。
中には、拒絶通知が届いたから、その時点で”商標登録を諦めた”といった話も聞くことがあります。
確かに、拒絶通知の内容によっては、意見書や手続補正書を提出しても商標登録をすることが相当困難な場合もあります。このような場合は、拒絶理由通知書が来た時点で商標登録を諦めるのもやむを得ないことと思います。
しかし、拒絶理由通知の内容によっては、意見書などで十分商標登録にもっていけることもありますので、拒絶理由通知書が来たからといって直ちに商標登録を諦めるのはもったいないケースもあります。
商標の拒絶理由の内容は色々
商標出願に対して拒絶理由通知書が届くのは、当該商標出願が所定の商標登録の要件を欠いているためです。
商標登録の要件といっても多数ありますので、拒絶理由通知の内容も様々にある訳です。

典型的なよくある拒絶理由の内容は次の2つです。

1.指定商品・指定役務との関係で普通名称であったり、単なる品質表示である等、”一般的な名称”のため商標登録の要件を欠いている

2.他人の先に出願された登録商標と同一又は類似で、且つ指定商品・指定役務も同一又は類似のため商標登録の要件を欠いている

これら2つの拒絶理由は、商標の拒絶理由通知書では非常によく見受けられるものです。

また、弁理士を使わずに、ご自分で商標登録出願の手続を行われた場合に多く見られる拒絶理由として次のものがあります。

3.指定商品・指定役務の記載内容が不明確である
商標の拒絶理由通知書への対応
拒絶理由通知書に記載されている拒絶理由の内容にもよりますが、拒絶通知が来ても適切に対応すれば、商標登録に持っていけるケースも多くあります。

拒絶理由通知書への対応方法は、基本的には、次の方法のどちらか一方か、両方を行うことで対応します。

「意見書」という書類を特許庁に提出して、拒絶理由通知書に記載されている内容に対して反論をする。つまり、出願した商標には拒絶理由がないことを主張します。(意見書について詳しくは、「商標の意見書には内を書く?」「商標法3条1項3号の拒絶理由通知の対応方法」「商標法4条1項11号の拒絶理由通知の対応方法」「商標法6条の拒絶理由通知の対応方法」

「手続補正書」という書類を特許庁に提出して、商標登録出願の際に提出した商標登録願(願書)の記載を訂正する。願書の記載を訂正するといっても、無制限に訂正をすることはできません。例えば、出願した商標自体を訂正することは、ほぼ不可能です。手続補正書で訂正するのは、主に、指定商品・指定役務の内容で、指定商品・指定役務の内容を出願当初の内容から狭めるように訂正することになります(指定商品・指定役務の内容を当初の内容から別のものに変更したり、範囲を拡大するような訂正は認められません。)。

例えば、上記1.の”一般的な名称”という理由で拒絶通知が来た場合には、意見書で”出願した商標は、一般的な名称ではない”ことを、その根拠とともに主張します。
また、上記2.の”他人の登録商標と類似である”ことを理由に拒絶通知が来た場合には、意見書で”他人の登録商標とは類似でない”ことを、その根拠とともに主張します。他人の登録商標と類似かどうかは、商標だけではなく、指定商品・指定役務も関係してきますので、場合によっては、手続補正書も提出して指定商品・指定役務を補正するといった対応も行います。
上記3.の”指定商品・指定役務の記載内容が不明確である”という拒絶理由通知の場合は、手続補正書によって指定商品・指定役務の内容を補正すれば簡単に商標登録できることが多いので、この拒絶理由で商標登録を諦めるのは非常にもったいないです。

上記1.と上記2.の拒絶理由の場合、意見書や手続補正書を提出したからといって、必ず商標登録できるとは限りません。しかし、例えば、商標登録の可能性が、例えば五分五分の場合でも、せっかく商標出願したのですから、意見書・手続補正書で商標登録に向けてチャレンジするのがよいと考えられます。
特に、上記2.の拒絶理由通知では、出願した商標が他人の登録商標と同一又は類似と認定されてしまっているので、出願した商標を使ってしまうと、その他人の商標権を侵害すると判断されてしまう可能性も高まりますので(正確には、商標権を侵害するかどうかは裁判所が裁判で判断するものですが、特許庁は商標登録に関する専門的な行政機関ですので、その特許庁の類似との判断は商標権を侵害してしまうリスクが高いと考えられる材料になります)、是非とも特許庁から非類似との判断を引き出したいものです。
弊所の商標拒絶理由通知への対応
商標出願をご自分で行って、拒絶理由通知書が届いたから、その後の手続は弁理士に依頼するというケースは、我々弁理士からすると、”中途受任”という形になります。
中途受任の場合、手続の最初から弁理士が関与していないので、その後の手続がやや困難になること等もあり、弁理士によっては割増手数料が発生することもありますが、弊所では中途受任であっても割増料金が発生せず、通常の意見書や手続補正書の料金で対応しております。
上で述べましたように、商標の拒絶通知が届いた場合の対応は、意見書と手続補正書の提出がメインになります。
ちなみに、弁理士による意見書や手続補正書の作成手数料は、一般的には商品・役務の数に応じて増額されますが、弊所では意見書も手続補正書も、商品・役務の区分の数にかかわらず定額にて作成致しておりますので、比較的に安価にご対応しております。

なお、拒絶理由通知書への対応は、原則として、拒絶理由通知書の発送日から40日以内に行う必要がありますので、拒絶理由通知を受け取られたら、お早めに弁理士に相談されることをおススメ致します。
弊所の商標拒絶通知への対応の成功事例①
弊所では、拒絶理由通知書に対して意見書を提出することで、これまで数多くの登録査定を勝ち取ってきましたが、その中でも難易度の高かった事例の意見書をご紹介します。以下の意見書は「J-PlatPat」などで公開されている情報です。

①商標登録第6588703号
本件は、同様の商標が過去3回、特許庁の審査で”一般的な名称”という理由で登録を認められなかったものの、4回目に弊所にご依頼を頂き、意見書を提出して商標登録を勝ち取ったケースです。

1.本願出願人は、令和4年4月8日付起案(令和4年4月13日付発送)の拒絶理由通知書を受領しました。
 拒絶理由の内容は、「この商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」といいます。)は、「チャクラワーク」の文字及び「Chakra Work」の文字を上下二段に、一般的に用いられている書体で横書きしてなります。本願商標構成中、「チャクラ」及び「Chakra」の文字は、「ヨーガで、人体の生命エネルギーの中枢となる部位」(下記インターネット情報(1)参照)を、「ワーク」及び「Work」の文字は、「仕事。作業。また、勉強。研究」(下記インターネット情報(2)参照)をそれぞれ意味します。そして、下記インターネット情報(3)ないし(5)によれば、「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の文字が、「チャクラを活性化させる働きかけ」ほどの意味合いとして一般に使用されており、また、チャクラワークに関するセミナー等が開催されている実情が見受けられます。以上のことからすれば、本願商標は全体として、「チャクラを活性化させる働きかけ」ほどの意味合いを容易に認識させるというのが相当です。そうしますと、本願商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者又は需要者は、当該役務が「チャクラを活性化させる働きかけに関するもの」(例えば、チャクラを活性化させる働きかけに関する「知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,ヨガの教授,資格の検定・認定又は付与,ヨガの興行の企画・運営又は開催,ヨガに関する施設の提供,ヨガに関する用具の貸与」等)であることを認識するにとどまりますから、本願商標は、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当です。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項第16号に該当します。」というものです。

2.出願人は、前記拒絶理由に承服致しかねますので、以下に意見を申し述べます。
 本願商標を構成する「チャクラ」及び「Chakra」の文字並びに「ワーク」及び「Work」の文字は、それぞれ審査官殿が認定された意味を有します。
 したがって、「チャクラ」及び「ワーク」並びに「Chakra」及び「Work」を結合させた本願商標は、漠然と「ヨーガで、人体の生命エネルギーの中枢となる部位に関する作業」程の意味合いを認識し得るものでありますが、むしろ特定の観念を生じない一種の造語として認識されるものです。
 この点、審査官殿は、インターネット情報(3)乃至(5)を引用され、「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の文字が、「チャクラを活性化させる働きかけ」程の意味合いとして使用されている旨認定されています。確かに、「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の文字が、そのような意味合いで使用されている実情はございます。
 しかしながら、「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の名称、並びに「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の名称に係る技法は、遅くとも出願人が2008年に発案・創作した名称及び技法です。出願人は「チャクラワーク協会」なる協会の主宰者であり、当該協会のウェブサイトの関連箇所のURLを以下に記載致します。当該ウェブサイトの関連箇所より、「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の名称、並びに「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の名称に係る技法が出願人により発案及び創作されたものであることをご理解頂けるものと思料致します。

https://chakrawork.jp/chakrawork/yoga-about-masumi/

https://chakrawork.jp/2008/04/

 以上のように、本願商標を構成する「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の語は、遅くとも2008年に出願人が発案・創作した造語であり、その後、10年以上の長きに亘り、当該語に係る技法を多くの者に教授してきた結果、「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の語が、「チャクラを活性化させる働きかけ」程の意味合いで使用されている実情が存在するのです。しかし、その使用は、決して「一般に使用されている」訳ではありません。
 即ち、上述の通り、出願人は、「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の商標の下に、その技法を多くの者に教授してきた結果、出願人の生徒、或いは生徒から選ばれた認定講師が多数存在しており、これらの生徒及び認定講師が、実質的に出願人の使用許諾を受けて、商標「Chakra Work」及び/又は「チャクラワーク」を使用して情報発信を行っているのであり、したがって、「Chakra Work」及び「チャクラワーク」の文字が、「チャクラを活性化させる働きかけ」程の意味合いとして一般に使用されており、また、チャクラワークに関するセミナー等が開催されている訳ではありません。
 その証左として、具体的には、例えば、審査官殿が引用されたインターネット情報(5)は、出願人の生徒が開催するワークショップを告知するウェブサイトです。

 以上のことからすれば、本願商標は、「チャクラを活性化させる働きかけ」程の意味合いを容易に認識させるというよりは、むしろ、出願人の発案・創作に係る「チャクラを活性化させる働きかけ」に関する技法を暗示又は示唆する一種の造語であると認識させるものであり、本願指定役務の出所識別標識として十分に機能しているものです。
 また、そのため、本願商標は、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるものではありません。

 なお、最後に付言するに、商標法及び商標登録制度が商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図ることをその目的の1つにするのであれば、上述したように、出願人により10年以上の長きに亘り使用され、出願人の業務上の信用が化体した本願商標は当然に商標登録を受けられるべきであります。
 本願商標を構成する各文字が、審査官殿ご認定の通りの意味を有するものであれば、本願商標は、その指定役務との関係において役務の質や特徴等を表すものではないことから、仮に、本願商標が未だ使用されておらず、即ち、何ら出願人の業務上の信用が化体していない場合には、本来的に、本願商標は登録を受けられるのに、長年の使用により信用が化体した場合に登録が認められないというのであれば、商標法及び商標登録制度の目的を逸脱し及び違背することに他ならず許されるものではないと思料致します。

3.まとめ
 以上の通り、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当するものではなく、登録適格を有するものですので宜しくご再査願います。
弊所の拒絶通知への対応の成功事例②
②商標登録第6596997号
本件は、以前に別の弁理士事務所より全く同じ商標を出願し、意見書を提出したものの特許庁の審査で他人の先願登録商標と類似という理由で登録を認められず、2回目の出願で弊所にご依頼を頂き、弊所にて意見書を提出して商標登録を勝ち取ったケースです。

1.本願出願人は、令和4年7月11日付起案(令和4年7月13日付発送)の拒絶理由通知書を受領しました。
 拒絶理由の内容は、「この商標登録出願に係る商標は、下記の登録商標と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定役務と同一又は類似の役務について使用するものですから、商標法第4条第1項第11号に該当します。」というものです。
 引用商標:登録第6043590号(商願2017-099049)

2.出願人は、上記拒絶理由について、承服致しかねますので、以下に意見を申し述べます。

(1)本願商標の構成
 本願商標は、「あやめ眼科」を標準文字にて表してなるものです。

(2)引用商標の構成
 引用商標は、「訪問看護ステーション あやめ」を標準文字にて表してなるものです。

(3)外観の差異
 本願商標が5文字で構成されるのに対し、引用商標は13文字で構成され、しかも、本願商標は「眼科」の文字を含みますが、引用商標は当該文字を含まず、引用商標は「訪問看護ステーション」の文字を含みますが、本願商標は当該文字を含みません。
 したがって、本願商標と引用商標の外観は、看者に全く異なる印象を与える相互に非類似のものです。

(4)観念の差異
 本願商標及び引用商標を構成する「あやめ」の文字は、「菖蒲、即ち、アヤメ科の多年草」を意味します。
 本願商標を構成する「眼科」の文字は、「眼に関する医学の一分科」を意味します。
 したがって、本願商標全体としては、「あやめという名称の眼に関する医学の一分科」といった意味合いを漠然と想起させる一種の造語であるか、又は「あやめという名称の眼科医院」という固有の医療機関の名称として認識されるものです。
 引用商標を構成する「訪問」の文字は、「人をたずねること」を意味します。また、引用商標を構成する「看護」の文字は、「傷病者の手当・世話をすること」を意味し、引用商標を構成する「ステーション」の文字は、「ある仕事を引き受ける拠点」を意味します。
 したがって、引用商標は、全体として「あやめという名称の人をたずね傷病者の手当・世話をすることを引き受ける拠点」といった意味合いを漠然と想起させる一種の造語です。
 以上より、本願商標と引用商標の観念は異なり非類似であるか、または、本願商標と引用商標は造語であって観念を比較できませんので類似するものではありません。
 
(5)称呼の差異
 本願商標は、その構成文字に相応する「アヤメガンカ」との称呼のみを生じます。本願商標の称呼は、僅か6音で構成され、語呂良く淀みなく一気に発音できるもので、その構成文字も全て同書・同大・同色にて等間隔にまとまり良く一体的に表されていることからして、本願商標において、これをさらに省略して、例えば、「アヤメ」等の称呼が生じると見るべき合理的な理由は存在しません。
 引用商標は、「ホウモンカンゴステーションアヤメ」との称呼を生じます。
 したがって、本願商標の称呼と引用商標の称呼は、音数及び音構成において相違しますので、相互に非類似のものです。

(6)取引の実情
 上述の通り、本願商標の構成からして、本願商標より「あやめ」の文字部分のみが抽出されて、「アヤメ」なる称呼を生じることはありませんが、このことは、医療の分野における取引の実情に鑑みても妥当します。
 まず、本願指定役務である医業等を提供する医療機関においては、その名称(商標)として、何らかの文字(本願商標でいうと「あやめ」の文字)と「医学の分科名」(本願商標でいうと「眼科」の文字)を組み合わせた名称が多数存在しております。そして、このような医療機関の名称は、構成文字全体から固有の医療機関の名称を表したものと認識されるものとみるのが自然です。即ち、医療機関の名称は、伝統的に、当該医療機関の所在する「地名」と「医学の分科名」を結合させた名称、例えば、「千代田眼科」、「霞が関眼科」等や、当該医療機関の院長の「苗字」と「医学の分科名」を結合させた名称、例えば、「佐藤眼科」、「鈴木眼科」等の名称が多く、医学の分科名を除外した部分のみでは役務の出所識別標識として機能し得ない場合が少なくないためです。したがって、本願商標も同様に、その構成文字全体「あやめ眼科」をもって、固有の医療機関の名称を表しているものと認識されるのです。そのため、本願商標は、その構成文字全体をもって称呼されるのであり、「アヤメ」と略して称呼されることはありません。
 この点は、例えば、本願商標と同様に「花の名称」と「医学の分科名」を結合させた商標の御庁における併存登録例(いずれも類似群コード42V02の付された役務を指定しています。)からも、よりよくご理解頂けるものと思料致します。即ち、「花の名称」と「医学の分科名」を結合させた商標の場合も、その全体をもって、固有の医療機関の名称として認識されることを前提に、以下の登録商標は、相互に非類似のものと御庁に判断され、併存登録されております。
 つまり、特に、医療機関の名称として使用される「花の名称」と「医学の分科名」を結合させた商標に関しては、その構成文字全体をもって一体不可分のものとして把握、認識されるのであって、「医学の分科名」が役務出所識別標識としての機能が無いか又は希薄だからといって、「花の名称」の文字部分のみを要部と認定して抽出し、称呼及び観念が生じると見るのは形式的且つ早計に過ぎます。
 もし仮に、以下のような併存登録例が存在するにも拘らず、本願商標と引用商標が類似すると判断されるというのであれば、それは、御庁のこれまでの審査例とは一線を画する異質なご判断であり御庁の商標審査の不統一性を招来し、及び商標登録の可能性の予測をおよそ不能とする、到底容認できないものであると言わざるを得ません。
 さらに、以下の登録例からも明らかですが、医療機関の名称は、その需要者に親しみを持ってもらうこと等を目的に、花の名称を医療機関の名称に含ませることが少なくなく、上述及び後述するように、本願商標と引用商標との間で混同の生ずるおそれがないにも拘らず、本願商標と引用商標が類似するとして、本願商標の登録を拒絶されるならば、それは、商標を使用しようとする者の商標の選択の余地をいたずらに狭小化させることに他ならず許されるものではありません。

・登録第3025695号「アイリス眼科」と登録第5787943号「アイリス歯科」

・登録第3342579号「サクラ薬局」と登録第5064936号「さくら診療所」と登録第6341827号「桜こどもクリニック」と登録第6562049号「医療法人社団桜」

・登録第6129295号「ローズ皮膚科クリニック」と登録第6454526号「ローズレディースクリニック」

・登録第5478938号「ひまわり歯科クリニック」と登録第5588692号「ひまわりこどもクリニック」と登録第5794083号「ひまわり歯科医院」

 なお、本願商標や引用商標のように、複数の構成部分を組み合わせた、所謂、結合商標は、その全体をもって商標の類否判断を行うのが原則であり、例えば、最高裁平成19年(行ヒ)223号等では、例外的に、所定の場合には「商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許される」ことを示していますが、この判示事項は、「外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべき」であることを前提にしているのでありますから、上述及び後述するような取引の実情を度外視してまで、商標の構成部分の一部を抽出して類否判断することを許す趣旨ではありません。
 したがって、このような最高裁判所の判決等が存在しても、なお、本願商標より「アヤメ」との称呼及び「菖蒲、即ち、アヤメ科の多年草」との観念を生ずる余地はありません。

 本願指定役務の医業等の需要者は、自己の身体の診療という極めて重大な役務の提供を受けるのでありますから、その役務提供者の選択は、極めて高度な注意力をもって慎重に行うのであり、上述したような本願商標と引用商標の外観、観念及び称呼の差異が存在すれば、両者の間で役務の出所について、混同を生じることはあり得ません。
 念のため付言しますと、御庁におかれましては、「簡易迅速を旨とする商取引の実情において」は、本願商標より、「あやめ」の文字部分に着目し、この文字部分をもって取引に当たる場合も少なくないとご判断される場合もありますが、本願指定役務の医業等の分野の取引においては、上述の通り、「簡易迅速」に取引に当たることはあり得ませんので、このようなご判断は、本願商標については妥当しません。

 また、本願商標は、主として、眼科医業の提供にあたり使用されるもので、その役務の提供は、医師により行われ、その主たる需要者は、眼に傷病を抱える者です。
 これに対し、引用商標は、主として、訪問看護の提供にあたり使用されるもので、その役務の提供は、保健師や看護師等により行われ、その主たる需要者は、介護が必要は高齢者です。
 したがって、本願商標の主たる指定役務と引用商標の主たる指定役務は、確かに、類似群という単位では形式的に類似するものと推定されますが、上述の通り、その提供者及び需要者は、異なりますので、そもそも商標の類否に拘らず、本願商標と引用商標との間で役務の出所について、混同を生ずるおそれはありません。

 さらに言えば、引用商標権者は、株式会社であって、本願指定役務の医業等を行い得ないですし、また、大きな病院等を経営する医療法人等であればともかく、本願出願人のように、個人で開業する医師において、訪問看護事業等の多角経営を行うことは通常ありませんので、こうした実情も加味すれば、なおさら、本願商標と引用商標との間で役務の出所について、誤認混同のおそれはありません。

 したがって、取引の実情に照らしても、本願商標は「アヤメガンカ」との称呼のみを生ずるのであって、「アヤメ」との称呼や「菖蒲、即ち、アヤメ科の多年草」との観念を生じる余地はなく、本願商標と引用商標は、何ら相紛らわしいものではなく、取引者・需要者において、本願商標と引用商標との間で混同を生じるおそれは皆無です。

3.まとめ
 以上の通り、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、登録適格を有するものですので宜しくご再査願います。
弊所の拒絶通知への対応の成功事例③
③商標登録第6961558号
本件は、依頼者様がご自分で商標を出願したものの特許庁の審査で他人の先願登録商標と類似という理由で登録を認められず、さらに依頼者様が2回目の出願も行ったのですが、同じ内容の拒絶理由通知所が届いたため、弊所に意見書のご依頼を頂き、弊所にて意見書を提出して商標登録を勝ち取ったケースです。

1.本願出願人は、令和7年4月15日付起案(令和7年4月18日付発送)の拒絶理由通知書を受領しました。
 拒絶理由の内容は、「この商標登録出願に係る商標は、下記の登録商標と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものですから、商標法第4条第1項第11号に該当します。」というものです。
 引用商標:登録第6158436号(商願2019-050465)

2.出願人は、上記拒絶理由について、承服致しかねますので、以下に意見を申し述べます。

(1)本願商標の構成
 本願商標は、横書きされた「銀河Coffee」の文字、該文字の上方に書された上方横線及び下方に書された下方横線、並びに該上方横線の左端に書された星図形及び該下方横線の右端に書された星図形より構成され、前記「Coffee」の文字を構成する「o」の文字がコーヒー豆のごとく図案化され、全ての構成要素がえんじ色に着色されてなるものです。

(2)引用商標の構成
 引用商標は、横書きされた「花巻銀河珈琲」の文字より構成され、各文字の輪郭は白抜きにて縁取られ、全ての文字が同書・同大・同色にて軽重の差なく、且つ各文字は間隙を空けることなく一体不可分に表されてなるものです。

(3)外観の差異
 本願商標は、上記(1)で述べましたように、漢字、欧文字及び図形より構成され、えんじ色に着色されております。
 他方、引用商標は、漢字のみで構成され、着色されておりません。
 また、引用商標は、「花巻」の文字を包含しますが、本願商標は、該文字を含みません。
 したがって、本願商標と引用商標の外観は、一見して明らかに異なるものであり、看者に全く異なる印象を与える相互に顕著に非類似のものです。

(4)観念の差異
 本願商標及び引用商標を構成する「銀河」の文字は、「天の川」、「銀河系の別称」等の意味を有します。また、本願商標を構成する「Coffee」の文字は、「焙煎したコーヒー豆や、それを挽き粉としたもの」又は「焙煎したコーヒー豆の粉を湯で浸出した褐色の飲料」を意味する「コーヒー」の語を欧文字表記したものであり、引用商標を構成する「珈琲」の文字は、「コーヒー」の文字を漢字表記したものです。
 また、引用商標を構成する「花巻」の文字は、「岩手県に所在する市」を意味します。ただし、引用商標の指定商品であるコーヒーに関連する食品の取引者・需要者が、岩手県内の市レベルの地理的名称について格別詳しいとの特段の事情も存しないことに照らせば、「花巻」の文字は、「花を巻く」といった意味合いを連想させる一種の造語とも認識され得ます。
 以上より、本願商標は全体として、漠然と「天の川のコーヒー」程の意味合いを連想させる、特定の観念を生じない一種の造語と認識されるものです。
 また、引用商標は、漠然と「花を巻いた天の川のコーヒー」程の意味合いを連想させる、特定の観念を生じない一種の造語と認識されるものです。
 したがって、本願商標と引用商標の観念は相互に非類似であるか、又は両者は比較できませんので類似するものではありません。
 
(5)称呼の差異
 本願商標は、その構成文字に相応する「ギンガコーヒー」との称呼を生じます。
 引用商標は、その構成文字に相応する「ハナマキギンガコーヒー」との称呼のみを生じます。
 したがって、本願商標の称呼と引用商標の称呼は、音数及び音構成において相違しますので相互に非類似のものです。

 なお、引用商標より、「花巻」の文字を省略して「銀河珈琲」の文字部分より、観念及び称呼が生じることはあり得ません。
 まず、引用商標は、上記(2)で述べましたように、一体不可分に構成された外観構成に鑑みて、しかも、看者の注意を引きやすい先頭に配置された「花巻」の文字を捨象して、その後続部分のみから観念及び称呼が生ずると見るのは極めて不自然です。
 また、上記(4)で述べましたように、「花巻」の文字は、確かに辞書等を調べれば、一部の者は、該文字が「岩手県に所在する市」であることを理解できる場合があるかもしれませんが、引用商標の指定商品の取引者・需要者が特別岩手県内の地理的名称に詳しいといった事情も存しないことから、引用商標における「花巻」の文字は、一種の造語と認識され、自他商品出所識別標識として重要な役割を果たすものであることからして、観念上、該文字を捨象し、「銀河珈琲」の文字部分が要部であると見るのは無理があります。
 さらに、引用商標全体の称呼「ハナマキギンガコーヒー」は、11音からなり、然程冗長ではないことに加え、2つの長音を含むことも手伝って、淀みなく一気に発音できるものであり、称呼上、「花巻」の部分を省略する必要性及び合理的根拠がありません。
 そして、もし仮に、引用商標を構成する「花巻」の文字が「岩手県に所在する市」、即ち、地理的名称であると認識されるならば、該文字は、引用商標の指定商品の産地又は販売地と認識されるのであり、そうとすれば、商品の品質等の誤認を生ずるおそれがあることから、つまり、引用商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものであるから、引用商標の各指定商品は、「岩手県花巻市で生産された又は販売される」商品に限定されるべきでありますが、引用商標の指定商品は、そのような限定を付されていないことからして、引用商標を構成する「花巻」の文字は、御庁において「岩手県に所在する市」、即ち、地理的名称とは認定されなかったものと見るより他はありません。引用商標の審査において、「花巻」の文字が「岩手県に所在する市」と認定されなかったのならば、御庁は、該文字を一種の造語と認定したのであり、引用商標の査定時から僅か6年しか経過していない現在において「花巻」の文字に対する取引者・需要者の認識の変化が生じたとの事情も無く、また、御庁の商標審査に対する統一性及び公平性の要請からも、本願商標の審査においても該文字は造語と認定されるのが至極妥当であります。
 この点、例えば、商標登録第4340075号「花巻寿司/はなまきずし」(第30類 指定商品:すし)なる商標が御庁に登録されております。当該登録商標の指定商品についても、「岩手県花巻市」」に限定されておりませんし、何より、「花巻/はなまき」の文字と商品の普通名称である「寿司/ずし」の文字を結合させただけの当該商標について登録が認められているということは、当該商標に関しても、御庁は「花巻」の文字を地理的名称とは認定されなかったことの証左といえます。
 さらに、2025年5月8日時点で調査し得る、「花巻」の文字を含む最も新しい登録商標は、約1年前の2024年4月26日に登録された商標登録第6800059号「いわて花巻大食堂」(第43類 指定役務:飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与)になりますが、当該商標の指定役務も「岩手県花巻市」に限定されておりません。
 以上のように、これまでの御庁の審査において、「花巻」の文字は、繰り返し、地理的名称ではなく造語と認定されてきたと見ることができますので、本願商標の審査についても、引用商標を構成する「花巻」の文字は造語であって引用商標の要部であることから、類否判断において、引用商標より「花巻」の文字を捨象することは許されず、したがって、本願商標「銀河Coffee」と引用商標「花巻銀河珈琲」は相互に非類似のものと判断されるべきです。
 本願商標と上述した登録商標とは同一の商標ではないため、全く同一の事案ではないものの、「花巻」の文字の意味合いの認定という観点では「事案が異なる」訳ではありません。また、御庁の商標審査が商標毎に個別具体的に行われることは出願人も十分承知するところではありますが、事案毎に「花巻」の文字を地理的名称と認定されたり、造語と認定されたりするといった不統一な審査は、商標使用者の業務上の信用の維持を図ることを困難ならしめるものであって、商標法の趣旨に違背するものと言わざるを得ません。

3.まとめ
 以上の通り、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、登録適格を有するものですので宜しくご再査願います。
 なお、本願商標の登録適格性を確信するものではありますが、万一、審査官殿におかれまして未だ拒絶理由が解消されていないとご判断されるようであれば、本願商標の指定商品・指定役務について補正すること、分割出願すること等も検討致したく、その機会を賜りますようお願い申し上げます。

弊所の拒絶通知への対応の成功事例④
④商標登録第6988977号
本件は、依頼者様がご自分で商標を出願し、特許庁の審査で他人の先願登録商標と類似という拒絶理由通知が来てしまった件で、弊所に意見書のご依頼を頂き、弊所にて意見書を提出して商標登録を勝ち取ったケースです。個人的には、この意見書は、過去一番難易度の高かったものと感じております。

1.本願出願人は、令和7年5月21日付起案(令和7年5月30日付発送)の拒絶理由通知書を受領しました。
 拒絶理由の内容は、「この商標登録出願に係る商標は、下記の登録商標と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものですから、商標法第4条第1項第11号に該当します。」というものです。
 引用商標1:登録第4908457号(商願2004-098997)
 引用商標2:登録第5513241号(商願2007-079383)
 引用商標3:登録第6907242号(商願2022-040893)
 引用商標4:国際登録番号0849259

2.出願人は、上記拒絶理由について、承服致しかねますので、以下に意見を申し述べます。

(1)本願商標の構成
 本願商標は、黒色正方形状背景内に白抜きされた「i」の文字を左右に2つ並べて結合したと思しき特徴的な図形、及び該図形の右方に横書きされた「TWInS」の文字より構成されてなるもので、該「TWInS」の文字の高さは、前記黒色正方形状背景の高さの約半分の寸法であることから、前記図形は、前記「TWInS」の文字に比して顕著に大きく表されております。

(2)引用商標の構成
 引用商標1及び2は、主として、野球ボール図形、並びに該野球ボール図形上に上下2段に横書きされた「MINNESOTA」及び「Twins」の文字より構成されてなるものです。
 引用商標3は、横書きされた「TWINS」の文字、弧状図形を挟み前記「TWINS」の文字の下方に横書きされた「SPECIAL」の文字、及び該「SPECIAL」の文字の左右にそれぞれ3個ずつ描かれた星図形より構成されてなるものです。
 引用商標4は、横書きされた「TWINS」の文字より構成されてなるものです。

(3)外観の差異
 本願商標は、黒色正方形状背景が白抜きされた特徴的な図形と「TWInS」の文字より構成されております。
 他方、引用商標1及び2は、野球ボール図形及び「MINNESOTA」の文字を含みます。
 また、引用商標3は、6つの星図形及び「SPECIAL」の文字を含みます。
 引用商標4は、文字のみで構成され、図形を含みません。
 したがって、本願商標と引用商標1~4の外観は、顕著に異なっており、看者に全く異なる印象を与える相互に明らかに非類似のものです。
 特に、本願商標を構成する前記図形は、特徴的であって、「TWInS」の文字よりも顕著に大きく表記されていることから、本願商標において、看者の注意を最も惹くのは前記図形であり、したがって、本願商標の外観と引用商標1~4の外観の差異は甚大であり、この外観の非類似性は、本願商標及び引用商標1~4が「TWInS」、「Twins」又は「TWINS」の文字を包含することによる近似性を遥かに凌駕するものです。

(4)観念の差異
 本願商標及び引用商標1~4を構成する「TWInS」、「Twins」及び「TWINS」の文字は、「双子。対の。」等の意味を有する英語の複数形です。
 引用商標1及び2を構成する「MINNESOTA」の文字は、米国中北部に所在する州の名称です。
 引用商標3を構成する「SPECIAL」の文字は、「特別の。特別の人・物。」等の意味を有する平易な英語です。
 以上より、本願商標と引用商標4は、「双子。対の。」等の観念を生じます。
 引用商標1及び2は、「MINNESOTA」と「Twins」の文字が結合され、しかも野球ボール図形を伴うこととも相俟って、米国のメジャーリーグに所属する周知なプロ野球チームの名称「ミネソタツインズ」を理解、認識させます。
 引用商標3は、その構成文字より「対の特別の人・物」との観念を生じます。
 したがって、本願商標と引用商標4は共通の観念を生ずる場合があるかもしれませんが、本願商標と引用商標1~3の観念は相互に非類似です。
 
(5)称呼の差異
 本願商標及び引用商標4は、それぞれの構成文字に相応する「ツインズ」との称呼を生じます。
 引用商標1及び2は、前記(4)で述べましたようにメジャーリーグの周知なプロ野球チーム名称「ミネソタツインズ」との称呼のみを生じます。引用商標1及び2について、「MINNESOTA」の文字を除外して「ツインズ」なる称呼は生じません。具体的には、米国のプロスポーツチームは、本拠地となる地元地域との結び付きが強いことに加え、北米にはメジャーなスポーツのリーグとして野球のメジャーリーグ(MLB)の他、NFL(National Football League)、NBA(National Basketball Association)及びNHL(National Hockey League)等が存在するところ、他のリーグとの間で共通するチーム名の愛称を持つチームもあり(例えば、New York Giants(NFL)とSan Francisco Giants(MLB)、Arizona Cardinals(NFL)とSt.Louis Cardinals(MLB)、Carolina Panthers(NFL)とFlorida Panthers(NHL)、Sacramento Kings(NBA)とLosAngeles Kings(NHL)等)、「Twins」等のチーム名の愛称の部分のみではチームを識別できないことから、必ず「MINNESOTA」等の地域名称と「Twins」等の愛称はセットで称呼されるものであり、このような慣習は、我が国においても踏襲されています。さらに、我が国にも独自の野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール等のスポーツのリーグが存在し、各リーグに所属するチーム名の愛称も多々あるといった社会的実情を考慮するならば、なおさら、「MINNESOTA」等の地域名称は識別要素として重要な役割を占めるのでありますから、これを捨象することはあり得ません。
 引用商標3は、その構成文字に相応する「ツインズスペシャル」との称呼のみを生じます。審査官殿が引用された全ての商標に「TWINS」の文字が含まれていることに加え、2025年6月18日時点で調査可能な範囲において、「TWIN」の文字を含む商標が1,185件、御庁に登録又は出願されていることからして、「TWIN(S)」の文字は商標として又は商標の一部として多用されていることが明らかであり、そのため「TWIN(S)」の文字は独創性を欠き、商品役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではなく、そうとすれば引用商標3は、「TWINS」の文字と「SPECILA」の文字が結合されることによって商品の出所識別標識として機能するものと見るべきであり、しかも、「TWINS SPECIAL」の文字全体から生ずる「ツインズスペシャル」の称呼も僅か8音で語呂良く淀みなく一気に発音できることから、これを省略すべき理由もありません。
 したがって、本願商標と引用商標4の称呼は共通する場合があるかもしれませんが、本願商標と引用商標1~3の称呼は音数及び音構成において相違しますので相互に非類似です。

(6)引用商標同士の類否
 引用商標1及び2と、引用商標4とは商標権者が異なり、相互に同一の類似群コードが付与された商品・役務を指定しておりますが、引用商標1が登録されていながら後願の引用商標4について登録が認められ、引用商標4が登録されていながら後願の引用商標2について登録が認められています。
 つまり、御庁は、引用商標1及び2と、引用商標4とは相互に非類似の商標と判断されております。
 これは、上記(4)及び(5)で述べました通り、引用商標1及び2については「MINNESOTA Twins」の文字全体をもって出所識別標識として機能するのであり、類否判断においても同様に、引用商標1及び2に関しては「MINNESOTA Twins」の文字全体と、引用商標4「TWINS」の文字を対比観察したことの結果であると見ることができます。
 したがって、本願商標と引用商標1及び2についても、当然に同様の類否判断がなされるべきです。

(7)商品の類否
 本願商標と引用商標4の指定商品について、類似群コードを対比しますと18A01が共通しています。本願商標の指定商品のうち類似群コード18A01が付与される商品は「組みひも」です。
 他方、引用商標4の指定商品のうち第18類に属する商品と類似群コードの対応関係は以下のようになります。

「革(34C01)及び模造の革(16C02・34C01)」
「バッグ(21C01)」
「傘(22B01)」
「日傘(22B01)及びつえ(22C01)」
「むち、引き革及び馬具類(19B33・24C02)」

 したがって、引用商標4の指定商品において、類似群コード18A01が付与される商品は、一見、上掲以外の商品である「獣皮及びその他の革(加工済み又は半加工)」になると考えられます。しかし、御庁編「類似商品・役務審査基準[国際分類第12-2025版対応]」及び所謂国際分類によれば「未加工又は半加工の革」は、類似群コード34C01が付与されています。そのため、商品「獣皮及びその他の革(加工済み又は半加工)」のうち「(半加工)」の部分は類似群コード34C01となりますので、18A01が付与されるならば「獣皮及びその他の革(加工済み)」の部分になると解されます。
 ここで、御庁編「類似商品・役務審査基準[国際分類第12-2025版対応]」を参酌すると、第18類には「皮革」との包括概念表示について類似群コード18A01、34C01及び34C02が付与され、且つ参考英訳として「leather and fur, unworked or semi-worked」と記載されております。当該英訳が、あくまで参考であることは承知致しますが、これによれば第18類の「皮革」は、「未加工又は半加工のもの」であることが理解できます。つまり、「類似商品・役務審査基準[国際分類第12-2025版対応]」の記載に基づいて解釈すれば、引用商標4の指定商品中、一見、類似群コード18A01が付与されていると解される「獣皮及びその他の革(加工済み)」の部分は、実際には、第18類の「皮革」に包含されるものでも、「皮革」と類似関係にあるものでもないものであって、その内容及び範囲が不明確です。
 また、そもそも「獣皮及びその他の革(加工済み)」、即ち、「加工済みの獣皮及びその他の革」が、未加工の商品でも半加工の商品でもないとするならば、最終製品のことを意味していると解釈せざるを得ません。しかし、これを、皮革を使用した最終製品と見るならば、当該最終製品は、その用途及び機能に応じた区分に属し、それに相応する類似群コードが付与されるべきであり、少なくとも第18類に属する商品でも、類似群コード18A01が付与される商品でもありません。
 いずれにしても、引用商標4の指定商品のうち「獣皮及びその他の革(加工済み)」の部分は、上述のように、本来、不明確であることから類似群コードを付与することは不能でありますので、当該商品に類似群コード18A01が付与されているのは御庁の過誤によるものであり、したがって、本願商標の指定商品「組みひも」と引用商標4の指定商品は同一又は類似するものではありません。
 以上より、指定商品が相互に類似するものではないか又は非類似でありますので、本願商標は、商標自体の類否にかかわらず、引用商標4との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するものではありません。

(8)取引の実情
 本願指定商品「靴ひも,組みひも,被服用ひも,ヘアバンド」は、被服、履物等に付随する商品又は頭飾品であり、所謂ファッション関連の商品ともいえるものです。そのため、本願指定商品の取引者・需要者は、これらの商品のデザインや機能、具体的には、形状、寸法、色、光沢、材質、強度、触感等々の見た目や手触り等に関心を持ちます。このような事情から、本願指定商品の取引に際し、取引者・需要者は、これらの商品の実物を見たり触ったり、或いは、実物に接する機会が無い場合には、コンピュータ等のディスプレイやカタログ等によって視覚的にこれらの商品を観察するのが、本願指定商品の分野における恒常的な取引の実情です。この点、被服等を購入する際に、購入を検討している被服等の実物や画像を見ないで、被服等に係る商標の称呼のみを頼りに、即ち、例えば、電話を介して口頭で商品購入の勧誘を受けて購入することなどあり得ないことは、審査官殿ご自身のご経験からもご理解頂けるものと思料致します。そして、取引者・需要者は、これらの商品を視覚的に確認するにあたり、必然的に、これらの商品に付された商標の外観にも接することになります。上記(3)で述べました通り、本願商標と引用商標1~4は、外観が顕著に異なっておりますので、このような本願指定商品の取引の実情に鑑みれば、本願商標と引用商標1~4とは明確に区別できるのであり、本願商標と引用商標1~4との間で商品・役務の出所の混同が生じる余地はありません。なお、本願商標と引用商標4とは、観念及び称呼において共通する場合があるかもしれませんが、前記(7)で述べた指定商品の非類似性と、ここで述べた取引の実情に照らせば、本願商標と引用商標4の間でも商品の出所の混同は生じません。

(9)最高裁判所判決
 昭39(行ツ)第110号、所謂、「氷山印」事件最高裁判決によれば、「商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準に過ぎず、従って、右三点のうちその一つにおいて類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他の取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない」ことが示されています。
 よって、仮に、本願商標と引用商標4の観念、称呼とが共通する場合があったとしても、上述の通り、本願商標と引用商標4の外観の差異は顕著であって、観念及び称呼の共通性を遥かに凌駕するものであり、しかも、本願商標及び引用商標4の指定商品の非類似性、並びに本願商標の指定商品に係る取引の実情を考慮すれば、本願商標と引用商標1~3は当然として、本願商標と引用商標4についても、前記最高裁判決に照らし、類似商標と解すべきではありません。

3.まとめ
 以上の通り、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、登録適格を有するものですので宜しくご再査願います。
 今後、延長請求、意見書、手続補正書の提出は行いませんので、拒絶理由通知書への応答期限を待たずに対応頂きますようお願いします。
 なお、本願商標の登録適格性を確信するものではありますが、万一、審査官殿におかれまして未だ拒絶理由が解消されていないとご判断されるようであれば、本願商標の指定商品について補正すること、分割出願すること等も検討致したく、その機会を賜りますようお願い申し上げます。
以上のように、拒絶理由通知書に対する意見書の内容によって、登録できるケースと登録を拒絶されるケースが分かれることがあります。
そのため、商標の拒絶通知に対する意見書は、”強い”、”勝てる”意見書を書ける弁理士に依頼することが重要となります。
 

 

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弊所弁理士宮下桂輔は、弊所案件の他、2021年以降2026年現在まで千葉県知財総合支援窓口にて、商標の拒絶理由通知対応のご相談に多数応じてきておりますので、ご安心してご相談頂けます。

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