クリニック・病院の商標登録

病院・クリニックの名称も商標登録の対象

お医者様方にとって、”商標”はあまり馴染みのないことかもしれません。
しかし、商標は、自己のサービスと他者のサービスとを識別する標識であるため、医業というサービスを提供しているお医者様方にも決して無縁のものではありません。

ちなみに、商標登録をする際には、その商標をどのような商品・サービスに使用するのかを決めます。これを「指定商品・指定役務」と呼び、商品・役務は45通りの「区分」に分類されています。
商品・役務に関しては、特許庁が「類似商品・役務審査基準」を定めており、これには各商品・役務がどの区分に属するかを規定しています。
病院・クリニックに関連するものは、第44類という区分で「医業、医療情報の提供、健康診断、歯科医業、調剤」といったサービスが含まれます。
ですので、病院・クリニックが提供するサービスも当然に商標登録の対象となるのです。

そもそも商標登録とは?

商標登録とは、簡単にいえば、商標を特許庁に登録することです。

商標は、商品名、サービス名、店舗名、マスコットキャラクター、ロゴマーク、会社名などが典型例として挙げられますが、医療関係者様で言うと、クリニック名、医院名、病院名、医療法人名やこれらのロゴマークが該当すると考えられます。

そして、このような商標を、冒頭述べましたように、当該商標をご使用になる商品・サービスとセットで登録します。
クリニック様等の場合は、サービスとして登録されるべきは「医業」などが中心になると思われます。

商標登録を受けるためには、特許庁に「商標登録出願」という手続をします。商標登録出願は、正式な表現ですが、よく「商標申請」「商標出願」とも呼ばれています。
商標登録出願は、「商標登録願」という名称の願書を特許庁に提出する手続です。
商標登録願には、登録を希望する商標、商品・サービス、出願人の名称・住所などを記載します。

商標出願(商標申請)を行うと、あとは特許庁の審査待ちとなります。
希望する商標が全て登録される訳ではなく、特許庁の審査を通過したもののみが登録できます。特許庁の審査では、先に出願された他の登録商標と似ていないか、商品・サービスの一般的な名称でないか等が主な審査項目となります。
特許庁の商標審査には、2023年12月時点で、約半年程時間がかかっています。審査期間は、その時々で変わることがあります。

特許庁の審査を通過して、特許庁に登録料を納付すると商標登録されます。
商標登録されると、「商標権」という権利を取得します。商標権は、登録した商標を登録した商品・サービスの範囲で独占使用することができる権利です。
したがいまして、登録した商標と同じような商標を、他人が同じような商品・サービスに使用してきた場合には、法律的に、商標権の侵害を理由に、当該他人の商標使用を止めさせることができます。
ここで注意されたいのは、商標権が、そのような効力を持つということは、他人に先に同じような商標を同じような商品・サービスで商標登録されてしまうと、ご自分の商標を使用することができなくなってしまう(ご自分が他人の商標権を侵害してしまう)点です。

クリニック開業前が大事

上で商標権の効力のご説明を致しましたが、改めて述べますと、既に医業関係のサービスについて登録されている商標と同じような商標を使うと、登録している他人の商標権を侵害してしまいます。
そのため、これからクリニックを開業することを検討されている方は、クリニック名やクリニックのロゴマークを決めてしまう前に、同じような商標が医業関係で既に登録されていないかを確認することが極めて重要になります。
ちなみに、同じような商標が関連する商品・サービスの分野で既に登録されていないかを確認する作業を「商標調査」といいます。

商標調査をせずに、クリニック名やロゴマークを決めてしまって、看板、ホームページ等々に、その名称やロゴマークを表示して使用を開始してしまうと、最悪の場合、もし、同じような商標が医業関係で登録されていたとすると、登録した商標権者から、商標使用や損害賠償を求める警告書が来て、看板等全て作り直さなければならないケースも想定されます。
なお、商標登録は、”早い者勝ちの制度”ですので、先に使用しているクリニック名などであっても商標登録していない場合は、他人に先に商標登録されてしまうと、原則として、商標権侵害となってしまいます。

ありがちなクリニック名も実はキケン?!

ここまで、商標登録の基本的なこと、商標権の効力、商標登録しないリスクなどをご説明してきました。
次に、クリニック名や病院名特有の商標リスクをお伝えします。

病院やクリニックの名称として、次のような、お医者様の苗字や病院が所在する地名と「病院」、「医院」、「クリニック」を組み合わせた名称がよく使用されていると思われます。
「鈴木病院」
「佐藤外科医院」
「新宿病院」
「横浜内科医院」
「埼玉クリニック」
「千葉歯科医院」

商標法には、「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない、という規定があります。
また、当該規定に関連して特許庁が定める「商標審査基準」には、「著名な地理的名称、ありふれた氏、業種名等やこれらを結合したものに、商号や屋号に慣用的に付される文字や会社等の種類名を表す文字等を結合したものは、原則として、「ありふれた名称」に該当すると判断する。」との記載があります。
上述した「新宿」や「横浜」は「著名な地理的名称」に、「鈴木」、「佐藤」は「ありふれた氏」に、「病院」、「医院」、「クリニック」は「商号や屋号に慣用的に付される文字や会社等の種類名を表す文字等」と考えられるため、こうした病院やクリニックの名称は、商標登録を受けることができないように思われます。
つまり、「院長様の名字+科名+クリニック」「地名+病院」「地名+科名+医院」などのような名称は、”一般的な名称”だから、商標登録できないとも考えられます。
そして、商標登録を受けることができないということは、他者にそのような名称を商標登録をされてしまう心配が無いと考えられます。

しかし、本当にその心配が無いとは言い切れないのが現状です。
まず、「著名な地理的名称」となっていますので、著名でない地名は該当しませんので、著名でない地名を含む病院の名称は商標登録される可能性があります。ちなみに、商標の分野で「著名」といえば、全国的に知られているというレベルの有名性と考えられていますので、この商標審査基準における「著名」もかなり有名でないと該当しないと考えられます。
また、「ありふれた氏」なので、珍しい氏も該当せず、商標登録される可能性があるといえます。
さらに、「原則として」との文言が入っていますので、「例外がある」と考えられます。

こうしてみますと、何気なくご使用になられている「苗字+クリニック」や「地名+病院」といった名称も、苗字がそれほどありふれてなく、有名な地名でもなければ、商標登録される、つまり、ご自分で商標登録しておかないと、他人に商標登録されてしまう危険性があると考えられます。

また、次に具体的にご説明しますが、このようなクリニック・医院・病院名についての特許庁の審査にブレ(登録を認めたり、認めなかったり)もあります。

病院・クリニックの名称の商標登録の状況

実際に、どのような名称が病院やクリニックの名称として商標登録されているのか、特許庁が提供しているデータベースで検索をしてみました。
第44類「医業、医療情報の提供、健康診断、歯科医業、調剤」を指定役務として、「病院」、「医院」又は「クリニック」という文字を含む商標を検索しました(検索日:2017年6月5日)。
その結果、731件の登録済みの商標又は出願中の商標がヒットしました。

結果を分析した結果、おおまかに申しますと、「〇〇病院」と「△△クリニック」とでは、特許庁における審査は大分異なっている様子が伺えます。

まず、「病院」を含む登録商標のうち、注目すべき商標を幾つか挙げます。
「小諸病院」
「山陽病院」
「自由が丘病院」
これらの商標は、単に「地名」と「病院」を組み合わせただけの商標です。件数は少ないですが、こうした商標が登録されているのは要注意です。「著名な地理的名称」ではないという判断かもしれません。

「甲府脳神経外科病院」
「大分整形外科病院」
「綾瀬循環器病院」
これらの商標は、「地名」と「病院」の間に科の名称が組み合わされています。少なくとも「甲府」や「大分」は、「著名な地理的名称」に該当するように思われますが、科の名称を加えることで商標登録の可能性が出てくるとも考えられます(件数が少ないため、断定できません。)。

「筑波記念病院」
「名古屋セントラル病院」
「西条市民病院」
「さいじょう市民病院」
「亀田総合病院」
「日本国際医療病院」
「神奈川中央病院」
「総社市民病院」
「恵比寿総合病院」
これらの商標は、「地名」又は「氏」と「病院」との間に、病院名称でよく使われる「記念」、「市民」、「総合」、「中央」等の文字を含む商標です。我々弁理士やその他の士業の事務所名称の商標でもこういった傾向はありますが、「総合」、「中央」といった一般的とも考えられる文字を加えた場合、商標登録の可能性は高まると考えられます。

次に、「クリニック」を含む、注目すべき登録商標はをご紹介します。
最も注目すべきは、「神奈川クリニック」です。
「神奈川」は「著名な地理的名称」と考えられ、それと「クリニック」とを組み合わせただけの商標です。

以下、「病院」と同様の観点で注目すべき「クリニック」を含む登録商標を羅列します。
「新宿新都心クリニック」、「東葛クリニック」、「吉祥寺形成クリニック」、「医療法人広島クリニック」、「八戸西クリニック」、「湘南美容外科クリニック」、「春日クリニック」、「銀座 美容外科 クリニック」、「亀田クリニック」、「あやせ循環器クリニック」、「浜町町第一クリニック」、「ひばりがおかクリニック」、「東京血管外科クリニック」、「水戸中央美容形成クリニック」、「東京駅前クリニック」、「品川近視クリニック」、「さっぽろ内科クリニック」、「東京下肢静脈瘤クリニック」、「東京国際クリニック」、「アロマ美容外科クリニック」、「おはなクリニック」、「恵比寿美容クリニック」、「新宿センタークリニック」、「銀座フェイスクリニック」、「有明こどもクリニック」、「銀座総合美容クリニック」
以上のように、一見、一般的で商標登録が難しいように見える商標ですが、これだけの登録商標が存在しています。
逆に言えば、このように一般的とも思える商標でも、自分で商標登録をしていないと、他人に商標登録されてしまう危険性があるということになります。

結論としては、病院やクリニックの名称は、一般的な名称と思えても意外と商標登録されている実情があり、今後、自己の病院・クリニックの名称を商標登録していないと、他者に同じような商標を登録されてしまう可能性があります。

弁理士事務所LABRADORの強み

弊所は、2015年の開業以来、様々なジャンルの事業者様から商標登録のご依頼を頂いておりますが、特に、クリニック様、病院様、医院様、医療法人様等の医療機関様から多くご依頼を頂いてきております。

例えば、次のようなお客様から商標登録のご依頼を頂き、商標登録を成功させています。
これらの弊所での商標登録事例の中には、他の弁理士事務所では特許庁の審査に通せずに商標登録できなかった案件で、弊所にご依頼頂いて特許庁の審査に通して商標登録できたというものもございます。

・福島の医療法人様の商標登録
・東京西部の病院様の商標登録
・神奈川の眼科様の商標登録
・京都の皮膚科形成外科様の商標登録
・千葉の歯科医院様の商標登録
・愛知の医療法人様の商標登録
・東京都心の皮膚科様の商標登録
・沖縄の美容外科様の商標登録
・千葉の歯科医院様の商標登録
・静岡の歯科医院様の商標登録
・埼玉の産婦人科様の商標登録
・東京の鍼灸院様の商標登録
・大阪の鍼灸院様の商標登録
・東京の眼科様の商標登録
・東京のAGAクリニック様の商標登録
・千葉の薬局様の商標登録
・埼玉の内科様の商標登録
・埼玉の内科様の商標登録
・大阪の整体院様の商標登録
・千葉の接骨院様の商標登録
・静岡の内科医院様の商標登録
・東京の歯科医院様の商標登録

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