歯医者様の商標登録

本稿では、歯医者様・歯科医院様の商標登録について述べたいと思います。

歯科医院の商標登録の状況

まずは、歯科医院の商標登録の状況を特許庁提供の知的財産権のデータベース「J-PlatPat」を利用して調べてみました。
「歯科医業」等のサービスについての「歯科」の文字を含む商標を対象として調べましたところ、2020年2月6日の時点で、222件の登録商標と50件の出願中の商標が見つかりました。
これらの中には、「〇〇歯科大学」、「△△歯科協会」、「□□歯科ナビ」等のように、歯科医院ではない事業者等の商標も混在していますが、それらは少数なので、概ね、200件以上の歯科医院の登録商標や出願中の商標が存在しているものと思われます。

歯科医院の数は、コンビニエンスストアの数よりも多いとよく聞きますね。数年前の数字で6万8000の歯科医院が存在するとのことでしたので、200件の登録商標・出願中の商標は割と少ない方なのかもしれません。

しかし、過去に歯科医院同士で商標権侵害が争われた裁判もございますので、やはり、歯医者様も商標のことを無視する訳にはいかないように思います。
(歯科医院同士で商標権侵害が争われた裁判⇒「本当に病院・クリニック名の商標登録は必要か?」

ちなみに、申し遅れましたが、歯科医院様の商標とは、最も典型的には、歯科医院の名称が該当します。

歯科医院の名称の登録商標の傾向

次に、登録されている歯科医院の名称と考えられる商標には、どのようなものが存在しているのか、比較的多く見られるパターンごとに以下にお示し致します。

・簡単な英単語と「歯科」を組み合わせた商標

「ベル歯科医院」
「エンジェル歯科」
「スワン小児歯科クリニック」
「ファミリー歯科」
「ファイン矯正歯科」
「ライオン歯科」
「コメット歯科」
「おれんじ歯科」
「クリア歯科」
「パール歯科医院」
「マザー歯科クリニック」
「フローラル歯科クリニック」
「アポロ歯科」

・柔らかくやさしい印象を与える言葉と「歯科」を組み合わせた商標

「にこにこ小児歯科」
「えがお歯科」
「さくらんぼ歯科」
「ひまわり歯科クリニック」
「げんき歯科」

・地域の名称と「歯科」を組み合わせた商標

「すずらん台歯科」
「つつじがおか歯科」
「ほたる野歯科医院」

地域名称と「歯科」を組み合わせた商標についての検討

上述しましたように、「すずらん台」、「つつじがおか」及び「ほたる野」といった地域の名称と考えられる言葉と、「歯科」又は「歯科医院」を組み合わせた商標が商標登録されています。

このように医院が所在する地域の名称と「歯科」或いは「歯科医院」を組み合わせた歯科医院の名称のネーミングは、歯科医院に限らず、各種の病院・クリニックの名称のネーミング手法の常套手段といえるでしょう。

そのため、「地域名称+歯科(医院)」という名称の歯科医院がかなり多く存在すると思いますので、このような名称の商標登録の状況について、もう少し掘り下げて検討致します。

繰り返しになりますが、上述した具体的な歯科医院の名称の商標は、既に特許庁に商標登録されているものです。
つまり、特許庁の商標審査に通って、商標登録が認められたものです。

以下の商標は、今のところ、まだ商標登録出願中で、特許庁の最終的な審査結果が出ているものではありませんが、特許庁の一次的な審査結果としては、「商標登録を認めない」との判断が示されております。

「神戸歯周病治療歯科」
「麻布台歯科医院 Azabudai Dental Office」
「幸町歯科口腔外科医院」
「西小倉駅前歯科」

これら4件の商標も基本的には「地域名称+歯科(医院)」という商標ですので、上記「すずらん台歯科」等と同様の商標といえるはずなのに、特許庁の判断は分かれているように思われます。

ちなみに、これら4件の商標について、特許庁が商標登録を認めないという判断の理由は、以下の通りです。

まず、そもそも商標とは、ある商品やサービスが、どの事業者から提供されたものなのかを区別するための標識といわれております。
ですので、商品やサービスの普通名称や単なる品質を表示するような”一般的な名称”からなる商標は、商品・サービスの提供者を区別できないので、そのような商標は商標登録すべきでないという決まりがあります。

この決まりに基づいて当該4件の商標について考えると、これら4件の商標は、それぞれの商標に含まれる地域名称の地域に所在する歯科医院を意味するに過ぎないとか、さらに、その地域には複数の歯科医院が存在するであろうから、どの歯科医院か区別できない、という判断のようです。

以上のような特許庁の判断理由も分からなくはありませんが、そうすると、上記「すずらん台歯科」等の3件の商標が商標登録されていることと矛盾が生じます。

このような特許庁の判断の矛盾は、度々あることで、特許庁的には、それぞれ”事案が異なる”から審査結果がそれぞれ異なっても矛盾しないという考えなのだと思います。

しかし、商標登録出願をする方の側からすると、このように特許庁の判断が分かれているのは困ったものです。

上記商標登録された3件の商標の商標登録された年を見てみます。

それぞれ、「すずらん台歯科」は2010年、「つつじがおか歯科」は2013年、「ほたる野歯科医院」は2016年です。

一方、商標登録を認めないと判断された4件の商標の商標登録出願された年を見てみますと次の通りです。

「神戸歯周病治療歯科」2018年、「麻布台歯科医院 Azabudai Dental Office」2018年、「幸町歯科口腔外科医院」2018年、「西小倉駅前歯科」2019年です。

これら4件の商標は商標登録出願中のものなので、比較的最近商標登録出願されたものばかりです。
これだけを見ると、特許庁は、近年、「地域名称+歯科(医院)」という商標の商標登録を認めない傾向にあるように見えます。

さらに遡って調べてみると、2016年以前でも「地域名称+歯科(医院)」といった商標が”一般的な名称”であることを理由に商標登録が認められていない例が幾つか見られました。
ただし、これらの2016年以前に商標登録が認められなかった商標に含まれる地域名称は、「すずらん台」、「つつじがおか」及び「ほたる野」よりも有名な地域名称でした。
つまり、2016年以前は、「地域名称+歯科(医院)」という商標について、地域名称が有名であれば商標登録を認めない、それほど有名でなければ商標登録を認めるという判断基準であったのかもしれません。

そして、2018年~2019年では、「神戸」は有名な地域名称ですが、その他の地域名称はどうなのでしょう? それほど有名でもないとすると、やはり、近年、特許庁は「地域名称+歯科(医院)」という商標について審査を厳しくしている、つまり、商標登録を認めない方向に判断基準を持って行っているようにも伺えます。

 

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