病院・クリニックの名称は特に商標登録をしておきたい理由とは?

最近では、病院・クリニックも飽和状態にあるという話を度々耳にします(これは、我々弁理士などの士業も同様ですが)。
そうなると、競争が激しくなってきますので、病院・クリニックでもサービスの充実化や専門特化などを行うことで強みや特徴を打ち出し、顧客・患者の獲得が必要になってくると思います。

ところで、「商標」や「商標登録」というと、いわゆる”ビジネス・ツール”であり、ややもすると、医業をなされている医師の方々には無縁のものとお考えになられていることもあろうかと思われますが、商標法上、医業もビジネスにおける役務(サービス)と考えられているため、病院・クリニックの名前やロゴマークなどは商標登録の対象となります

そこで、本稿では、まず商標登録の基本的な内容をご説明し、そのうえで、病院・クリニックにおける商標登録の仕方や、特に病院・クリニックの名称を商標登録しておくことが望ましい理由をご説明致します。

商標登録の基本

まず、そもそも商標とは、「商(あきない)」の「標(しるし)」で、自己の商品・サービスと他者の商品・サービスとを区別するための標識です。
商標は、典型的には、病院・クリニックの名称、ロゴマークといったものが該当します。

そして、商標登録とは、商標を特許庁に登録することで、最初に「商標登録願」という願書を特許庁に提出して(商標出願)、特許庁の商標審査を受け、商標審査に通って所定の登録料を特許庁に納めると商標登録がされます。

ちなみに、商標登録願には、商標登録を受けたい商標や商標の出願人の氏名・名称、住所等を記載しますが、さらに、その商標をどのような商品・サービスに使用するのかも記載します。この商品・サービスを「指定商品・指定役務」と呼んでいます。
指定商品・指定役務は、第1類から第45類までに分類された商品・役務のいずれかの「区分」に属します。
病院・クリニックに直接的に関係してくる役務は、第44類という区分に含まれます。

商標登録の効果は、商標登録した商標を、指定商品・指定役務の範囲で独占的に使用することができることです。
これは、次の2つのことを意味します。

1.商標を指定商品・指定役務について独占使用できるので、他者に同じような商標を使われずに済みます。仮に使われたとしても、法律的根拠をもって、その商標の使用の中止を求めることができます。
ですので、病院・クリニックの名称を商標登録しておけば、他の病院・クリニックに同じような名称を使われることがないというメリットがあります。

2.上記1.の裏返しとも言えますが、ご自分の商標を登録していない場合に、他者に同じような商標を登録されてしまうと、ご自分がその商標を使うと、他者の商標権を侵害することになるので、今まで使用してきた商標が使えなくなります
例えば、病院・クリニックの名前を商標登録していない状態で、他の病院・クリニックに同じような名前を商標登録されてしまうと、今まで使用してきた病院名・クリニック名が使えなくなるので、病院名・クリニック名の変更を余儀なくされ、さらに損害賠償を求められることもあります。

以上が商標登録の基本的事項のご説明になります。

病院・クリニックの商標登録はどうする?

病院やクリニックで商標登録すべきと考えられる典型例は、病院・クリニックの名称とロゴマークです。

また、病院・クリニックの名前やロゴマークの商標は、第44類の「医業、医療情報の提供、健康診断、歯科医業、栄養の指導、あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり治療」といったところを指定するのが一般的です。

この場合は、区分が第44類だけですみますので、商標出願から10年分の商標登録料までを含めて、弊所の場合、約14万円で行うことができます

病院・クリニックの事業にもっと広がりがある場合は、第44類の他に別の区分の商品・役務も指定する必要があります(指定商品・指定役務は、複数種類の商品・サービスを記載することができますので、区分の数も1つに限らず複数個になる場合があります。区分の数が多くなるほど商標登録の費用も大きくなります。)。

病院・クリニックが特に商標登録しておくことが望ましい理由

私が述べるまでもありませんが、近年、コンビニエンスストアの数と比較されるほど、病院・クリニックの数が非常に増えています。
このように膨大の数の病院・クリニックの中から、どの病院・クリニックを選ぶべきか、個人的にも迷った経験がありますが、病院・クリニックを決める決定的要因は口コミです。
口コミが発生するためには、冒頭述べたような病院・クリニックの特徴や強みが必要と考えられますが、そのうえで口コミで伝達されるには病院・クリニックの名前が不可欠です。

その意味で、病院名・クリニック名を守ることがとても重要と考えられます。
つまり、病院名・クリニック名を商標登録することが重要です。

病院名・クリニック名を商標登録していないと、他の病院・クリニックに同じような名称を名乗られても、これを止めさせることはできません。当該他の病院・クリニックのサービスが劣悪な場合、顧客・患者は、同じような名前を使用しているアナタの病院・クリニックと混同して、アナタの病院・クリニックの評判も落ちてしまう危険性があります。

そして、病院名・クリニック名を商標登録していないことのもう1つのリスクは、他の病院名・クリニックに同じような名前を先に商標登録されてしまうことです。アナタの病院・クリニックが評判良く口コミにのっていたとしても、他者に商標登録されてしまうと、病院名・クリニック名の変更を余儀なくされるので、せっかくの口コミが台無しになってしまいます。つまり、これまでその病院名・クリニック名のもとに築いてきた信用・評判が無となってしまいます。

以上より、病院名・クリニック名は特に商標登録をして保護することが重要です。

 

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