実例に見るキャラクターの商標登録(ちぃたん)

最近話題(?)のキャラクター「ちぃたん☆」を取り上げます。

「ちぃたん」は、”コツメカワウソの妖精”という設定で、高知県須崎市の観光大使に任命されているとのことです。
その「ちぃたん」ですが、”ゆるキャラ”らしからぬ激しい動きで人気を博しているようです。

ところで、高知県須崎市のマスコットキャラクターといえば「しんじょう君」ですね。
「しんじょう君」は、”ニホンカワウソ”との設定で、2016年の「ゆるキャラグランプリ」で第一位を獲得しており、こちらも大人気のキャラクターです。

そんな「ちぃたん」と「しんじょう君」ですが、須崎市つながりで2人は友達だそうです。
2人とも”カワウソ”ということもありますし、どことなく似ています。

以前、本「実例に見るキャラクターの商標登録」シリーズで「しんじょう君」を取り上げましたが、本稿では「ちぃたん」を取り上げます。

「ちぃたん」の商標登録の状況

「ちぃたん」はまだ商標登録されていないのが現状です。
と言っても、何ら商標の手当てをしていない訳ではなく、1件商標登録出願中のものがあります。
商標は、「ちぃたんのキャラクター図形」と「ちぃたん☆」(文字と星のマーク)を組み合わせた商標です。
この商標出願中の「ちぃたん」商標の指定商品・指定役務は、以下のようになっています。

第9類:腕時計型携帯情報端末,スマートフォン,電子応用機械器具及びその部品,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物

第14類:キーホルダー,記念カップ,記念たて,身飾品,時計

第16類:紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て

第24類:織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)

第25類:被服,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服

第28類:遊園地用機械器具,愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具

第41類:技芸・スポーツ又は知識の教授,電子出版物の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットによる画像の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),娯楽イベントの企画・運営又は開催


この「ちぃたん」商標の出願人は、株式会社クリーブラッツという東京の会社でデザインやキャラクター商品のデザイン・販売等を行っているようです。
ちなみに、「しんじょう君」の登録商標は、須崎市が商標権者になっています。

「ちぃたん」商標の気になる点

「しんじょう君」は、須崎市のマスコットキャラクター。
一方、「ちぃたん」は、須崎市の観光大使ではあるものの、おそらく須崎市のキャラクターではない。

という理由で、「しんじょう君」は須崎市が商標権者になっていて、「ちぃたん」は株式会社クリーブラッツが商標出願人になっているのでしょう。

しかし、「しんじょう君」と「ちぃたん」は、いずれも”カワウソ”ということで似ているし、須崎市とつながりがある。
ので、詳しい内部事情はわかりませんが、外から見ていると、これら2つのキャラクターは、須崎市か株式会社クリーブラッツのいずれか一方が商標を取得して一元的に管理をした方が良いようにも思えます。
「しんじょう君」と「ちぃたん」がコラボレーションする企画が増えていくようなら尚更です。。

もう1つ気になるのは商標についての指定商品・指定役務です。
出願中の「ちぃたん」商標の指定商品・指定役務は、上記しましたが、キャラクター商標の指定商品・指定役務としては無難な内容と思われます。
ここで気になるのは、「しんじょう君」の登録商標の指定商品・指定役務との相違です。
商品・役務の区分で比較してみます(本来、商品・役務の比較を区分単位で行うのはやや乱暴とも言えるのですが、ここでは議論を簡略化するために、あえて区分で比較します。)。

前述のように、「ちぃたん」商標の指定商品・指定役務の区分は、第9類、第14類、第16類、第24類、第25類、第28類、第41類です。

一方、「しんじょう君」商標の指定商品・指定役務の区分は、第9類、第14類、第16類、第25類、第28類、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類、第35類、第41類です。

このように、両商標の区分は共通する部分もありますが、異なる部分もあります。

このような場合、「しんじょう君」と「ちぃたん」のコラボ商品を販売するような時に困ることがあります。
例えば、食品のパッケージにこれらのキャラクターの図柄などを印刷した食品関係のキャラクター商品の販売をしようというケースです。
食品関係の商品区分は、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類です。「しんじょう君」商標は、これらの食品関係の区分は指定していますが、「ちぃたん」商標の方は、これら食品関係の区分は指定していません。
ですので、こういった食品関係のコラボ商品について、「しんじょう君」は商標登録で保護されますが、「ちぃたん」の方は商標登録で保護されていませんので、「ちぃたん」の部分については商標的にリスクがあることになります。

以上のように、関連する2つ以上のキャラクター商標の場合、商標権者(商標登録出願人)や指定商品・指定役務は揃えておく方が得策といえるかもしれません。

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