”実例に見るキャラクターの商標登録”シリーズの第7弾は、高知県須崎市のキャラクター「しんじょう君」です。
「しんじょう君」は、「ゆるキャラグランプリ2016」で「ご当地ゆるキャラ部門」で第1位に輝きました。
「しんじょう君」は、最後に目撃されたニホンカワウソで、年齢は5才くらい、特技はダンスと水泳、趣味はオシャレとアニメだそうです。
その「しんじょう君」の商標登録の状況を見てみます。
特許庁の商標等のデータベースJ-PlatPatで、商標の出願人・権利者を須崎市として調べると1件の商標が出願されています。
こちらは、2016年10月に商標出願されたもので、「しんじょう君」のイラストの商標です。
指定商品・指定役務は比較的に広い範囲を指定しており、第9類、第14類、第16類、第25類、第28類、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類、第35類、第41類を指定しています。
12個の区分を指定していますので、印紙代だけでも商標出願時に¥106,600、商標登録時に¥338,400(10年納付の場合)がかかります。
しかし、キャラクターで特に「ゆるキャラグランプリ」で上位に来るほどの知名度であれば致し方ないといえるでしょう。
第9類にはスマホケース等、第14類にはキーホルダー等、第16類には文房具や印刷物、第25類には衣服、第28類にはおもちゃ、第29類~第33類には食品、第35類には広告業や小売業等、第41類にはイベントの企画・運営・開催等が含まれ、いずれもキャラクター商標の場合、まずは押さえておきたい商品・役務の区分です。
この須崎市の「しんじょう君」の商標出願は、特許庁での商標審査において拒絶理由通知がかかって、まだ商標登録されていません。
拒絶理由の内容は、おそらく、1つの区分の中で多くの商品・役務を指定し過ぎたため、本当にそのような広い範囲で当該商標を使用するのか疑義があるとの内容と推測されます。
この拒絶理由は、特許庁の基準で形式的に定められており、1つの区分の中で商品・役務を幅広く選択し過ぎると、その旨の拒絶理由通知書が来てしまいます。区分の数を多くすることは問題無いのですが(区分を増やすと印紙代も高くなりますので必要以上に広い範囲でおさえないであろうと考えられるためです。)、1つの区分内で多すぎると問題です。
キャラクター商標の場合、この拒絶理由は鬼門です。今後、当該キャラクターの商品化がどのように広がりを見せていくのかわからない段階ですので、なるべく広い範囲で商品・役務を指定しておきたいためです。
もちろん、そのような広い範囲の商品・サービスに当該商標を使用していて(或いは近い将来使用予定があって)、それを証明する資料を特許庁に提出できればよいのですが、それができない場合は、このような拒絶理由通知がなされないギリギリの範囲で商品・役務を指定するべきでしょう。
上述の通り、須崎市は「しんじょう君」のイラストの商標を1件出願しているのみです。
実は、この対応も少し心配です。
仮に、この商標が商標登録されたとしても、「しんじょう君」という文字は商標権で保護されません。
実際に、2016年1月に高知県の企業に「しんじょう君ミレーサンド」という「しんじょう君」を含む商標を出願されてしまい話題となりました。
キャラクター商標の場合、そのキャラクターのイラストを商標登録で保護することも重要ですが、キャラクターのネーミングの方がカブリ易いため、むしろ重要ともいえます。