商標登録をすると、登録した商標を独占的に使用することができるようになります。
この商標登録の効果によって、商標登録をした者(商標権者)は、同じような商標を他者に使われてしまうことを防止することができますし、また、ご自分の商標を安全に使用することができます。
しかし、一般に、商標登録をした商標を独占使用できるというのは、ありとあらゆる商品・サービスについて独占使用できるという意味ではなく、基本的には、商標出願時に決定した商品・サービスの範囲で独占的に使用することができるという意味になります。
”商標出願時に決定した商品・サービス”は、「指定商品・指定役務」と呼ばれます(ちなみに、「役務」はサービスのことです。)。
商標登録は、商標出願人が商標登録しようとする商標を、使用している商品・サービスについて商標登録を受けることができるとされています。つまり、使いもしない商品・サービスの範囲まで商標登録をして、商標を独占し他者に使わせないというのは許されないという考え方があります。(もっとも、特許庁では、商標出願人が出願した商標をどの商品・サービスの範囲で使用するのかをチェックしない(所定の場合はすることがあります)ので、一応、使用しない商品・サービスの範囲で商標登録をすることは可能です。また、現在は使用していない商品・サービスでも、将来的に使用する予定のある商品・サービスは指定しておくべきで、そのような対応も可能です。)
やや話がそれましたが、上述の通り、商標登録をするためには、最初に特許庁に商標出願(正式には「商標登録出願」)という手続をしますが、その出願手続において、指定商品・指定役務を決める必要があります。
そして、商品・役務は、45通りに分類された「区分」のいずれかに属しますので、商標出願時には、指定商品・指定役務を決めるとともに、それら商品・役務が属する区分も決める必要があります。
商標登録の手続、より具体的には、商標出願の手続において、最も悩ましいのが指定商品・指定役務と区分の決定です。
そこで、本稿では、商標登録における区分について、ご説明致します。
商標登録における商品・役務の区分とは?
商標登録における商品・役務の区分については、本ホームページでも過去に取り上げております。
下記の過去の区分に関する記事では、区分の全体像(45通りの区分のそれぞれの内容)、決定した区分の数によって商標登録の費用が決まること、及び商標が類似するか否かの判断においては指定商品・指定役務が類似するか否かも関係するところ、同じ区分に属する商品・役務同士が必ずしも類似するとは限らないこと等をご説明しています。
以下のリンクでご覧頂けますので、もしよろしればご覧ください。
商標登録における区分の問題点
商標出願時に、指定商品・指定役務及びそれらの区分を決める必要があり、これが商標登録において最も悩ましい点であることを上述しました。
商標登録をする場合に、商標登録をしようとしている商標の元で提供している商品・サービスを漏れなく指定商品・指定役務とするべきです。提供している商品・サービスに漏れがあると、商標登録による保護が不完全になってしまうからです。
しかし、一方で商品・役務を漏れなく指定しようとすると、それに応じて区分の数も増えていくことが一般的です。
(ちなみに、商品・役務は、1つの商標出願で複数種類のものを指定することが可能で、区分の複数個にすることができます。)
上記過去記事でも記載しましたが、区分の数は、商標登録のコストを決める要因であり、区分の数が増えると商標登録のコストも上昇します。
したがって、商標出願時には、過不足なく商品・役務を指定することが重要となります。
実際の商品・役務の指定方法と区分の選択
以下では、実際にどの業種はどのような商品・役務を指定し、その場合の区分はどうなるのか、ということをご説明していきます。
1.まずは注目度の高い第41類
業種によっては全く関係の無いことも考えられますが、弊所においてご依頼頂いている商標登録において、最も頻出度の高いのは第41類という区分です。
第41類は、大まかには「教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動」に関するサービスが含まれます。
第41類で、より具体的に注目したいのが「技芸・スポーツ又は知識の教授」というサービスです。
所謂、”ものを教えるサービス”がこれに含まれます。
最近では、コンサルタントや士業の方をはじめ、セミナー等で各種の知識を教えるサービスを提供されている事業者の方が多いですが、その際に使用する商標は、ここのサービスに使用している商標といえます。
その他、小学校、中学校、高校、大学などの学校のサービスもここに含まれますし、学習塾、各種スポーツ教室、生け花・茶道・そろばん・美容・簿記などを教えるサービスも含まれます。
ちなみに、コーチングもここに含まれます。
このように、ありとあらゆる”教える”サービスが第41類に含まれますので、第41類は激戦区ともいえる区分になります。
2.食品関係の区分(主に食品メーカーを対象)
区分は45通りに分類と先にご説明しましたが、そのうち、第29類~第33類までの5つの区分が食品関係の区分になります(食品の小売業・飲食業は除きます)。
したがって、一口に食品関係の商品に使う商標といっても、具体的な商品内容に応じて、第29類から第33類までのいずれか必要な区分を選択する必要があります。
第29類から第33類というのは、食品の商品ブランドとして使用する場合に該当しますので、食品スーパーなどの食品の小売業や飲食店などは、別の区分となります。
食品の商品ブランドとしての商標の典型例は、商品名やその商品の製造メーカーの商標(ブランド)が該当します。
食品の小売業は、第35類という区分に属する”小売業”関係のサービスに該当します。
また、飲食業は、第43類の「飲食物の提供」というサービスに該当します。
小売業や飲食業の商標の典型例は、小売店・飲食店の名称とロゴマークです。
なお、飲食業でも、テイクアウト商品がある場合は、テイクアウト商品に関しては、商品内容に応じて第29類~第33類の商品も指定するべきと考えられています。
3.医療関係の区分
医療関係、主に病院やクリニックの名称・ロゴマークを商標登録する場合は、第44類にほぼ集約されるといってもよいと思われます。
第44類には、各種医業が含まれます。さらに、あん摩、マッサージ、指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり治療といったサービスも第44類に含まれます。
さらに第44類には美容関係のサービスも含まれますので、脱毛などのサービスも提供される場合には、こちらの第44類という1つの区分で足りるというメリットがあります。
もっとも、医療機関において、セミナーなどを行う場合は、第44類に加えて第41類も必要になります。
4.アパレル・キャラクターの区分
商標の区分が多岐にわたり必要となりがちなのが、アパレル関係とキャラクターの商標です。
まず、アパレル関係ですと、まずは衣服や靴などが含まれる第25類が必要です。
アパレル関係のブランドは、衣服に加え、バッグや財布などの取り扱いもあることが多いですので、その場合は第18類も必要になります。
さらに、ジュエリーの取り扱いもあれば、第14類、という具合で、少なくとも3つ位の区分が必要になることが多いです。
次に、キャラクターに関する商標ですが、キャラクターグッズの製造販売をされる場合も区分が複数必要になるケースが一般的です。
典型例を挙げれば、第16類の文房具、第25類の衣服、第28類のおもちゃや、食品関係にも使用するのであれば上述のように第29類から第33類が関係してきます。
まとめ
以上、商標登録をするにあたり、漏れなく商標登録の効果を得るには、お取り扱い商品・サービスを漏れなく指定する必要がありますが、むやみに広範囲の商品・サービスを指定すると商標登録の費用が大きくなってしまいます。
そのため、商標登録に向けた商品・サービスについては専門家である弁理士にご相談されることをお奨め致します。