「類似商品・役務審査基準〔国際分類第11ー2020版対応〕」の改訂に伴う商品「菓子」の取り扱いについて

商標登録をする場合には、その商標登録を使用としている商標をどのような商品・サービスに使用するのかを決め、決定した商品・サービスを「指定商品・指定役務」として商標登録願(願書)に記載し、特許庁に願書を提出します。
ここで、願書にはさらに、指定商品・指定役務に対応する、第1類から第45類に分類された「区分」も記載します。

「類似商品・役務審査基準」とは、簡単に言えば、どの区分にどの商品・役務(サービス)が含まれるのかを示す、特許庁審査官等が商標審査を行う際に利用する基準であり、多くの例が記載されています。
我々弁理士も商標の実務を行うにあたり、「類似商品・役務審査基準」を非常によく利用しています。

「類似商品・役務審査基準」は、国際的な協定と整合させる必要があるため、毎年のように改訂がなされています。

今回、「類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2019版対応〕」から「類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2020版対応〕」に改訂され、令和2(2020年)年1月1日の商標登録出願から「類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2020版対応〕」が適用されます。

「類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2020版対応〕」で最も注目すべき改訂点は、商品「菓子」についての取り扱いの変更です。

本稿では、「類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2020版対応〕」で改訂された、商品「菓子」の取り扱いについてご説明致します。

商品「菓子」が2つの区分に分かれる

元々「類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2019版対応〕」までは、商品「菓子」は第30類という区分に含まれていました。
しかし、今回の改訂で一部の菓子は、これまで通り、第30類に残り、一部の菓子は、第29類という区分に含まれることとなりました。

具体的には、以下のように菓子を切り分けることとなります。

第29類:「菓子(果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)」
第30類:「菓子(果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」

これだけを見ると、主原料が果物、野菜、豆類又はナッツかどうかが分かれ目のように思われますが、そう単純でもなさそうです。

根本的な性質を変えない程度の加工・調味

特許庁の説明によれば、果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とし、それらの根本的な性質を変えない程度の煎る、煮る、焼く、揚げる等の加工及び調味をしてなる商品が、第29類の「菓子(果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)」に該当するとのことです。

”根本的な性質を変えない程度”とは、具体的にどの程度なのか、やや不明ですが、以下の菓子が第29類の菓子に該当するとの例示もなされています。

・甘栗
・甘納豆
・いり栗
・いり豆
・焼きりんご
・ゆで小豆

やや馴染みのない菓子もありますが、甘栗、甘納豆、焼きりんごあたりは、イメージの湧きやすい菓子かもしれません。
この例示から、第29類に分類される菓子は、元の果物や豆の原形を保っているもののようにも思えるのですが...

同じく特許庁の説明では、ポテトチップスも第29類の菓子に該当します。
こちらは、ジャガイモの原形は保っていないので、原形を保っているか否かで切り分けることはできそうもありません。

第30類に残るのは?

上述した第29類に移行する菓子以外の菓子が第30類に残るといえそうですが、具体的には、まず以下の菓子が第30類の菓子として例示されています。

・アイスクリーム
・あめ
・クッキー
・チョコレート
・ドーナツ
・パイ

ちなみに、これらの菓子の原材料の中で果物、野菜、豆類又はナッツが最も大きな割合を占める場合であっても、第29類ではなく第30類の菓子になるようです。
つまり、第29類の「菓子(果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)」と第30類の「菓子(果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」は、文字面からは、果物、野菜、豆類又はナッツを主原料とするか否かで両者を切り分けできそうなのですが、実は、この「主原料」は必ずしも切り分けのポイントになるとは限らないようです。
また、例えば、羊羹は、小豆を主原料としていますが、加工度が極めて高いから第29類ではなく第30類になるそうです。

第30類に残る菓子は上掲の他に、穀粉や穀物からなる加工品、例えば、せんべいやポップコーンなどです。

ポテトチップスは第29類で、せんべいが第30類...なかなかわかりにくいですね。

また、チョコレートでコーティングされたナッツ菓子の第30類とのことです。

整理すると...

これまで見てきましたように、第29類に移行する菓子と第30類に残る菓子との線引きは難しい...というより不明瞭ではないかと思います。

とはいえ、現時点の理解では、一応、概ね以下のように考えております。

第29類の菓子
果物、野菜、豆類又はナッツの原形を保っている菓子
果物、野菜、豆類又はナッツの原形を保っていいない甘くない菓子

第30類の菓子
果物、野菜、豆類又はナッツの原形を保っていない甘い菓子
穀物又は穀粉を加工した菓子

 

商標登録に関する手続等は、国際的に調和させるべきであり(国際条約上その要請もあり)、今回の類似商品・役務審査基準の改訂もそのために行われるものであって、その必要性は理解できるのですが、やはり、日本の菓子文化には馴染まない改訂と思わざるを得ません。

 

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