商標登録をする場合、その商標をどのようなビジネスに使うか、具体的には、どのような商品・役務(サービス)に使うのか、という観点から、商標登録をする商品・役務(サービス)の「区分」を決める必要があります。
どの区分で商標登録をするかによって、商標登録をした商標の権利(商標権)の範囲が決まりますので、区分の決定は非常に重要です。
しかし、区分の決定は場合により中々難しいことがありますので、本稿では商標登録における区分の選択・決定方法についての考え方をご説明します。
そもそも「区分」とは?
商標登録をすれば、その商標はオールマイティーにあらゆるビジネス分野で有効で、つまり、全てのビジネス分野で独占使用できるものでは基本的にありません。
商標登録をする場合には、その商標をどのような商品・役務(サービス)に使用するのかを決め、それら商品・役務を「指定商品・指定役務」として、商標登録をする場合の出願(申請)書類に記載します。
指定商品・指定役務に加えて、商標登録出願(申請)書類には、商品・役務の「区分」も記載します。
区分は全部で45個あります。「第1類」という区分から「第45類」という区分まであり、商品・役務は、これら45の区分のいずれかに属することになっています。
なるべく広い範囲で商標登録をしたいということから、たくさんの区分を選択することも考えられるのですが、後述しますが、区分の数を増やすと、その分商標登録のコストも大きくなってしまいます。
商標登録の費用と区分の関係
商標登録にかかる費用と区分の数とは密接な関係にあります。
商標登録の費用は、特許庁に支払う印紙代と、弁理士に頼む場合は弁理士報酬があります。
区分の数が増えると確実に印紙代は高くなりますし、弁理士報酬は弁理士により報酬体系は異なるものの一般的には弁理士報酬も区分の数が増えると高くなります。
まず、商標出願(申請)する際の印紙代(特許庁手数料)は、次のように計算されます。
¥8,600×区分の数+¥3,400
区分の数が1つの場合は¥12,000、2つ場合は¥20,600、3つの場合は¥29,200という具合です。
商標出願をして特許庁の審査に通ると、今度は特許庁に登録料としての印紙代を支払います。この場合の印紙代は次のように計算されます。
10年分の登録料を一括で納める場合、¥28,200×区分の数
5年分ごとに分割で納める場合、¥16,400×区分の数
10年分を一括納付で1区分の場合¥28,200、2区分の場合¥56,400、3区分の場合¥84,600となり、5年分分割で1区分の場合¥16,400、2区分¥32,800、3区分¥49,200となります。
弁理士報酬については一概に言えませんが、少なくとも印紙代だけを見ても、1区分増えるごとに数万円コストが上昇しますので、不必要に多くの区分を選択するのは得策とはいえません。
区分は弁理士任せでよいか?
上述しましたように、むやみに区分の数を増やしてしまうと商標登録のコストが大きくなってしまいますので、区分の数は適切な範囲にとどめるべきです。
区分の数の適切な範囲とはどういうことでしょうか?
抽象的な表現になってしまいますが、その商標登録をしようとしている商標をどのような商品・役務について使用するのか、実際に使用する商品・役務、或いは使用予定・使用可能性のある商品・役務の範囲といえます。
この点は、ご自身が一番よく把握されていますので、商標登録を弁理士に依頼する場合でも、ご自身でしっかりと検討されることをお薦め致します。
とはいえ、区分や区分と関係する指定商品・指定役務の選択はやや専門知識も必要ですので、弁理士に相談しながら進めることが推奨されます。
例えば、指定商品・指定役務に関して間違いやすい事例をご紹介します。
上で、”使用する商品・役務の範囲で区分を選択すべき”と述べましたが、ここで商標を何に使用するのかがポイントになりますが、「自社商品・サービスのチラシに商標を表示するから、チラシ、つまり広告物に商標を使うから「広告」の分野で商標登録すればよい」という意見を聞くことがあります。
確かに、チラシに商標を表示しているのですが、このご意見は誤りで、もしその商標を第35類の「広告」を指定役務として商標登録してしまうと、ほとんど意味の無い商標登録となってしまいます。
この場合は、チラシについて商標登録するのではなく、そのチラシで広告をするその会社の商品・サービスの分野で商標登録をするべきなのです。
この例は、非常によくありがちな典型的な間違いなのですが、こうした間違いを防ぐためにも弁理士に相談することをお薦め致します。
区分の数を増やし過ぎると無駄に商標登録のコストが上がってしまいますが、不足があると、せっかくの商標登録も漏れがあるもになってしまいますので、過不足なく区分を選択する必要があります。