「商標の類似」とは、ある商標と、それとは別の商標とが似ているかどうかという問題です。
商標が類似するかどうかは、商標の実務において非常に重要な問題です。
商標の類似が問題になるのは、主として、次の2つの場面です。
1.ある商標を商標登録できるかどうか
2.ある商標を使用しても他人の商標権を侵害しないかどうか
ここで、2つの商標が同一である場合は比較的にわかりやすいです。
既にある商標が商標登録されていて(かつ指定商品・指定役務も同一・類似であれば)、その商標と同一の商標を別の者が商標登録をすることはできませんし、また、既に商標登録されている商標と同一の商標を使用すると当該商標登録をしている者の商標権を侵害することになります。
商標が類似していれば、上と同様に、商標登録できないとか、商標権を侵害してしまうという重大な問題が生ずるのですが、商標が類似しているか否かについては明確な線引きがある訳でもなく、やや曖昧です。
そこで、本稿では、商標が類似するか否かを考えるうえで参考になる情報をお伝え致します。
商標の類似の基本的な考え方
2つの商標が似ているかどうかの判断は、基本的には、商標の外観(見た目)、称呼(呼び方)、観念(意味合い)と取引の実情などを総合的に判断して行われることになっています。
しかし、特に、特許庁が商標登録をするかどうかという審査をする段階では、外観、称呼、観念のいずれか1つが似ていたら、2つの商標は類似と判断されるケースが多いです。つまり、この段階では比較的に形式的に類似するかどうかの判断がなされます。また、付け加えると、商標の外観、称呼、観念の中では、称呼が最も重視される傾向があるといえます。
外観、称呼、観念類似の具体的なヒント
外観類似
商標の外観が類似するかどうかは、文字の商標よりもロゴマークやキャラクターなどの図形商標の場合に問題となりやすいです。
観念類似
商標の観念類似は、2つの商標の意味合いが共通するかどうかということが問題になり、例えば、「青い鳥」と「ブルーバード」のように、日本語と英語とで同じ意味を持つ商標のような場合に観念類似となり得ます。しかし、日本であまりその意味が知られていないような外国語の言葉の商標と、それと同じ意味を持つ日本語の言葉の商標とでは非類似と判断されることが多いです。
称呼類似
商標の称呼類似は、上述しましたように最も重視される傾向もあり、問題となることが多いです。
称呼類似に該当するかどうかは、例えば、次のようなことが影響してきます。
”称呼=呼び方”なので、通常は、文字の商標が関係し、その商標を構成する文字から発せられる”音”に着目します。
同一ではなく、類似かどうかという判断になりますので、2つの商標間で音が相違していることが前提となります。
〈商標を構成する音数〉
単純に、相違する音が多ければ多いほど、両商標は非類似と判断される傾向があります。
しかし、例えば、両商標ともに僅か3音からなる商標で、そのうちの1音が相違していれば、僅か1音の相違でも全体で3音なので、その1音の相違は影響が大きく、非類似と判断されるかもしれません。
逆に、両商標ともに10音からなる商標で1音相違の場合は、1音相違の影響は少なく、聴き分けにくく、両商標は類似と判断されるかもしれません。
〈相違音の種類〉
相違する音が、母音を共通にする場合、50音図の同行に属する場合(例えば、同じカ行の「カ」と「キ」の相違)、清音・濁音・半濁音の相違でしかない場合などは、比較的に違いを聴き分けにくいので、称呼類似と判断されやすいといえます。
〈相違音の位置〉
相違する音が、商標の先頭に存在する場合と、中間、末尾にある場合とでも違ってくることがあります。特に、先頭の音が相違している場合は、比較的に聴き分けやすく非類似と判断される傾向もあります。
以上は、称呼類似に影響を及ぼす全ての要素ではありませんが、少しヒントになればと思います。