地域ブランドと商標登録

地域ブランドが話題になると、あわせてよく聞かれるのが「商標登録」です。
例えば、ある地方の名産品や伝統工芸品の名称(地域ブランド)が、その地域の団体等によって商標登録されるというケースです。
このようなケースでは、地域ブランドを商標登録することによって、その地域ブランドを盛り上げ、育成していくという狙いがあるのが一般的です。

本稿では、地域ブランドの育成に商標登録がどのように機能するのかを検討したいと思います。

地域ブランドとは?

地域ブランドに関しては、明確な定義は無いと思われますが、簡単に言うと、”地域の特産品や名産品の名称など”といえるのではないでしょうか。
農産物、水産物、加工品、工芸品などがあると思われますが、こうした流通可能な物品に限らず、温泉の名称なども地域ブランドに該当すると考えられます。

地域ブランドに特化して、これを保護する仕組みとして、「地域団体商標制度」があります。
この地域団体商標制度は、導入されて、まだ10数年しか経っていない、商標登録制度としては比較的に新しい制度です。平成29年12月31日の時点で617件の地域ブランドが地域団体商標として商標登録されています。
地域団体商標として商標登録されている地域ブランドで、比較的有名と思われるものを幾つかご紹介します。

・「長崎カステラ」
・「高崎だるま」
・「沖縄そば」
・「博多人形」
・「下呂温泉」

地域団体商標を商標登録できる主体は、農業協同組合などの組合組織、NPO法人、商工会議所、商工会です。
一個人や一般企業が地域ブランドを商標登録できてしまうと、地元の関係者など、その地域ブランドを本来使用するべき事業者が使うことができなくなってしまうためです。

商標登録の効果

次に、商標登録の効果をご案内します。

ある商標を商標登録すると、その商標について商標権という権利が発生します。
商標権の内容は、商標権者が登録商標を独占的に使用することができるというものです。
”商標権者が独占使用できる”ということは、商標権者以外は、その登録商標を使えなくなることを意味します。
つまり、商標登録をすると、その商標の無断使用を止めさせることができるのです。

別の見方をすると、他人に自分が使用している商標を商標登録されてしまうと、自分がその商標を使えなくなるともいえますので、こうした事態を防ぐために商標登録は非常に有効な手段になりますが、地域ブランドは、上で地域団体商標の具体例を示しましたように、「地域名称」と「商品・サービスの普通名称」を組み合わせたものが多いので、その地域ブランドと無関係の者に商標登録されてしまう危険性は比較的に低い(商標登録の要件を満たさないことが多いため)ので、地域ブランドの場合は、むしろ上述した”商標と独占使用できる”という商標登録の効果に着目するべきと考えられます。

ちなみに、地域ブランドを商標登録すると、そのことだけでニュースになることもあり、知名度を上げるのにも役立つかもしれません。

地域ブランドを商標登録するメリット

地域ブランドの育成を阻害する要因は概ね次の2点に集約されるのではないでしょうか?

・当該地域外の事業者に当該地域ブランドを無断使用されてしまい、当該地域ブランドと当該地域との結び付きが希薄になる。

・当該地域内の事業者による当該地域ブランドの使用であっても、提供する商品・サービスの質にブレがある場合には当該地域ブランドの評判が低下する。

まず、1点目の地域外事業者による地域ブランドの無断使用ですが、これは、商標登録の効果である”登録商標を独占使用できる”、つまり無断使用を禁止することができますので、商標登録により対処可能です。

2点目の商品・サービスの質のブレ対策ですが、こちらも商標登録によって可能と考えられます。
地域ブランドの商標登録は、地域団体商標のところでも述べたように、基本的には組合、商工会議所、商工会又はNPO法人が商標権者となります。
したがって、当該地域ブランドの地域内事業者であっても商標権者ではないので、好き勝手に当該地域ブランドを使用できる訳ではなく、上述した商標権者の許諾のもとに地域ブランドを使用することになるので、商標権者としては、一定水準を超える質を有する商品・サービスにのみ当該地域ブランドの使用を許諾するという条件を付すことが可能です。
地域ブランド育成では、対外的なアピール等も重要と思われますが、こうした品質の管理が最重要と思われ、それを支えるのが地域ブランドの商標登録であるといえます。

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