商標登録に100%や0%はない?!

商標登録を中心に業務を行っている弁理士として、お客様等から次のようなご質問を頂くことがよくあります。

”この商標、商標登録できますか?”

こうしたご質問に、”はい。その商標は商標登録できます。”とか、”その商標は商標登録できません。”といったお答えをすることはありません。(少なくとも私の場合は)

質問をされる方からすると、商標の専門家である弁理士から、商標登録できるのかどうか、ハッキリとした回答が欲しいというご意向があるのは承知しております。
しかし、”商標登録できる”或いは”商標登録できない”といった断定的なお答えはできないのです。
そのため、お答えとしては、”商標登録できる可能性は高い”、”商標登録は難しい”というような、やや曖昧な回答になります。場合によっては、”○○%の確率で商標登録できると考えます。”のように数字をお示しすることはあります。

なぜ、断定的なお答えはできないのか?
その理由は次の通りです。

1.商標出願をした商標を商標登録するか否かの判断は特許庁の審査官が行うため。

商標登録をするためには、特許庁に商標出願という手続を行なって、出願した商標が商標登録されるべきか特許庁の審査官によって審査されます。

我々弁理士は、商標に関する法令や特許庁の商標審査基準、過去の商標の審査例・審判例・裁判例などに基づいて、ある商標の商標登録の可能性を予測することはできます。

しかし、審査をするのは、あくまで特許庁審査官であり、我々弁理士とは異なる見解・認識を持つことがありますし、また、極端な例を挙げると、審査官も明らかな審査ミスをすることがあります。

審査官の審査ミスでいうと、私が担当させて頂いた案件でも明らかな審査ミスと思われる事例もありました。
また、私自身が担当していなくても、”どうして、このような商標が商標登録されているのだろう?”というような、本来であれば商標登録されるべきでない商標が商標登録されている例も散見されます。

2.特許庁の審査の傾向が変わることがあるため。

商標登録の要件の1つに”識別力”というものがあります。
商標とは、そもそも、自社の商品・サービスと、他社の商品・サービスとを区別するための標識です。
そのため、商標登録の要件として、”区別”できること、つまり”識別力”が備わっていることが必要となります。
識別力がある商標とは、商品・サービスの一般的な名称等ではない商標を意味します。

例えば、商品が「パン」で商標が「食パン」の場合、食パンはパンの一般的な名称のため識別力がないので、商標登録の要件を欠くため商標登録できないということになります。
一方、商品「パン」に「ラブラドール」という商標であれば、ラブラドールはパンの一般的な名称ではないので識別力があり、少なくとも、この商標登録の要件は満たしているということになります。

そして、特許庁の審査の傾向として、識別力を厳しく判断する(商標登録の要件を厳格に判断するため、商標登録しにくくなる)時期があるかと思えば、逆に識別力を緩やかに判断する(商標登録の要件を甘く判断するため、商標登録しやすくなる)時期もあったりします。
このように、特許庁全体として、審査にブレを感じることもあるため、我々弁理士のこれまでの経験則での判断と、特許庁での判断が逆になることもあり得るのです

3.商標調査には限界があるため。

商標登録の主要な要件として、もう1つ”類似”があります。
これは、先に出願して登録された他人の登録商標と同一又は類似の商標は商標登録を受けることができない、という要件です。
この要件を満たしているかどうかは、商標出願前の商標調査で一応知ることができます。

商標調査とは、商標のデータベースを用いて、出願しようとしている商標と同じような商標が既に商標登録されていないかを調べる作業です。

ここで、どの商標データベースを利用しても、直近のデータはデータベースに反映されていません。
極端な例で申すと、今日、商標調査をして調べても、昨日出願された商標のデータはデータベースにまだ反映されていないので、昨日出願された商標の情報は把握することが不可能です。つまり、これから出願しようとしている商標と全く同じ商標が昨日出願されていても、その情報は知り得ないので、商標調査では商標登録できると思われても、実は全く同じ商標が他人に数日前に出願されていて商標登録できなかった、ということもあり得るのです。


以上挙げた理由が全てでないかもしれませんが、こうした事情があるため、商標登録できるか否かを断定的にお答えすることはできません。
逆に、断定的にお答えしてしまうと、”ウソ”になりかねないので、そのような回答はしないようにしております。

無料相談はこちら。

トップページ