実例に見るキャラクターの商標登録(うなりくん)

「ゆるキャラグランプリ2017」のご当地部門の第一位に千葉県成田市のマスコットキャラクター「うなりくん」が選ばれました。
成田名物のウナギと飛行機をモチーフにしたキャラクターですね。
成田市は、比較的ご近所なので何となく嬉しさを感じます。

成田市では、「ゆるキャラグランプリ2017」に向けて、”選挙対策本部”を立ち上げて、投票を呼び掛けていたそうです。こうした努力が実ったのですね。おめでとうございます。

ところで、このキャラクター「うなりくん」の商標登録の状況はどうなっているのか、調べてみました。
「ゆるキャラグランプリ」で上位に入賞するキャラクターは、地元の自治体等が力を入れているので、通常商標登録もされているのが一般的です。

キャラクター「うなりくん」の商標登録の状況

成田市が商標権者となって、「うなりくん」の登録商標が2件存在しています。
商標は、2件とも、「うなりくん」の図柄があって、その下に「うなりくん」という文字が記載されている、キャラクターの絵とキャラクターの名前を組み合わせた商標になっています。
キャラクターの図柄とキャラクターの名称をまとめて保護できるという意味で、コストパフォーマンスの高い商標の取り方といえるでしょう。

これらの2件の登録の商標は上述のように同じ内容なのですが、それぞれの指定商品の内容は異なります。

まず最初に商標登録されたのは、商標登録第5324201号という登録番号の商標です。
こちらは、2009年に商標登録出願されています。
「うなりくん」は2009年に誕生したそうなので、すぐに商標出願をしたのでしょう。
こちらの登録商標の指定商品は、次の通りです。
・第9類:携帯電話機ストラップ
・第16類:印刷物
・第28類:おもちゃ、人形

次に、2件目の登録商標は、商標登録第5403205号です。
こちらは、翌2010年に商標登録出願されています。
1件目の商標登録でカバーできていなかった指定商品も保護したかったのだと思われます。特に、キャラクターの商標登録ではよくあるパターンです。
ちなみに、商標登録出願をした後に、後から指定商品・指定役務を追加することはできませんので、「うなりくん」のように、別途、2件目の商標登録出願をする必要があります。
2件目の登録商標の指定商品は、次の通りです。
・第16類:紙製包装用容器、紙製のぼり、紙製旗、紙類、文房具類、紙製の看板
・第24類:布製身の回り品、のぼり及び旗(紙製のものを除く。)
・第25類:被服、着ぐるみ用衣服

「うなりくん」の指定商品はこれでよいのか?

商標登録をする場合には、指定商品・指定役務を決める必要があります。
これは、商標登録をされるクライアント様のご意向と弁理士の専門知識をすり合わせて行います。
当然、成田市のそうした意向は全く不明なので、以下の文章は、私の勝手な推測に基づくものであることを、お断りしておきます。

商品の幅が狭い?

商標登録をすると商標権という権利が発生しますが、商標権の範囲は、商標と指定商品・指定役務で決まります。
一般的には、なるべく広い範囲の権利にしたいので、指定商品・指定役務をなるべく幅広く書きたいと考える傾向があります。
特に、キャラクター商標の場合は、そのキャラクターのグッズを販売する可能性等があれば、相当広い商品にキャラクターが使用されることが予想されるので、指定商品もなるべく広い範囲で押さえておきたいものです。

と考えると、「うなりくん」の商標登録の指定商品、特に1件目の商標の指定商品は、幅が狭いような気がします。

もっとも、指定商品・指定役務を広げることにはデメリットもあります。

その1つは、商標登録のコストが大きくなることです。商標登録のコストは第9類とか第16類といった、「区分」の数が増えるごとに増加します。
ただ、「うなりくん」のケースで上述したのは、もっと区分の数を増やした方が良い、ということではなく、1つ区分の中に含まれる商品の幅を広げるべきという意味になります。例えば、「うなりくん」の1件目の登録商標の第16類は、指定商品として「印刷物」しかありませんが、第16類に含まれる商品は他にもあるので、第16類に含まれるその他の商品も幾つか指定商品に含めておくべきではないか、という意味です。

2つ目のデメリットは、1つの区分内の商品・役務をたくさん指定し過ぎると、特許庁より、それらの幅広い商品・役務に本当に商標を使用するのか、証拠の提出を求められる点です。
しかし、特許庁が証拠の提出を求めるか否かの基準は明確なので、(証拠を提出できるのなら気にする必要はありませんが)証拠の提出を求められないギリギリの範囲で指定商品・指定役務のご提案をすることは可能です。

3つ目のデメリットは、一般論として、指定商品・指定役務の幅を広げれば広げるほど、他人の似たような登録商標が見つかり易くなり、商標登録できる可能性が低下する。
これは、あくまで一般論で、商標調査を行えば、特に問題とならない可能性があります。

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