A.「早期審査」という制度があり、早期審査の要件に当てはまれば、早期審査の申し出を特許庁にすることにより、商標審査を早めてもらうことができます。
特許庁の商標審査
ここのところ(2017年11月)の特許庁の商標審査のスピードを見ていると、商標登録出願をしてから、最初の特許庁の審査結果の通知が来るまでに約半年かかっています。
数ケ月前は、4ケ月ほどでこの通知が来ていましたが、ここ最近では6~7ケ月ほどかかっているようです。
いずれにしても、10年以上まえから商標業務を行っている者からすると、特許庁の商標審査もかなり早くなったと実感しています。
しかし、一般のクライアント様からは、商標審査に半年かかるというと、”そんなにかかるの?!”と驚かれることも多いです。
商標登録は、”先願主義”といって、先に特許庁に商標登録出願をした者が優先される”早い者勝ち”の制度を採用しています。ですので、同じような商標が複数の者から出願された場合、一番最初に出願を行った者が商標登録でき(その他の商標登録の要件も備わっていれば)、2番目以降に出願をした者は、一番最初の者の商標と類似であるから商標登録できないことになります。
このような先願主義が採用されているため、とにかく、早く商標出願の手続を行うことが重要で、商標出願を行って一番最初に出願をした地位を得ておけば、その後の審査に時間がかかっても、あまり気にする必要も無いとも考えられます。
しかし、商標登録出願を行っても、特許庁の審査がありますので、出願した商標が全て商標登録される訳ではありません。そのため、商標出願を行ってから、特許庁の審査結果が出るまでは、商標登録できるかどうか不安な状態が続きますので、もっと早く審査結果を知りたいというニーズもあります
その他にも、諸々の理由で早く商標登録をしたいというニーズもあり、特許庁では「早期審査」という制度を設けています。
早期審査
上述のように、通常の商標審査は約半年かかります。
しかし、早期審査を利用すれば、一般的には約2ケ月ほどで審査結果が出ます。
早期審査の適用を受けるためには、以下のいずれかに該当する必要があります。
1.出願人又はライセンサーが、出願商標を指定商品・指定役務に既に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、権利化について緊急性を要する出願であること
ここで、「権利化について緊急性を要する」というのは、次のような場合です(ややざっくりご説明します。)。
・第三者が許可なく、出願商標と同じような商標を使用している場合
・出願商標を使用することにつき、第三者から警告を受けている場合
・出願商標について、第三者から使用許諾を求められている場合
・出願商標を外国にも出願している場合
2.出願人又はライセンシーが、出願商標を既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願であること
3.出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に既に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、商標法施行規則別表や類似商品・役務審査基準等に掲載されている商品・役務のみを指定している出願であること
以上の1.~3.のいずれかに該当する場合は、特許庁に早期審査の申出をすることにより、早期審査の対象として商標審査を早めてもらうことができます。
上記1.~3.の類型をもっと簡単にまとめると以下のようになります。
1.商標を既に使用or使用の準備 + 権利化の緊急性
2.商標を既に使用or使用の準備 + 指定商品・指定役務は使用or準備の商品役務のみ
3.商標を既に使用or使用の準備 + 指定商品・指定役務は商標法施行規則別表や類似商品・役務審査基準等に掲載されている商品・役務のみ
このように、いずれの類型においても、出願している商標を実際に使用しているか、相当程度準備を進めている必要があります。
そのうえで、第1類型では、外的要因などの権利化の緊急性が必要です。
第2類型では、指定商品・指定役務は、実際に使用又は相当程度準備を進めている商品・役務に限られます。
第3類型では、指定商品・指定役務の記載の仕方として、所定の別表や基準に基づいている必要があります。
第3類型は、比較的最近追加された類型で、「商標法施行規則別表」や「類似商品・役務審査基準」は、やや馴染みが無いとは思いますが、この第3類型は割と使い勝手がよいと思います。
早期審査の適用を受けるための手続
早期審査の適用を受けるためには、特許庁に早期審査の申出をすると述べましたが、具体的には、「早期審査に関する事情説明書」という文書を特許庁に提出します。
この早期審査に関する事情説明書には、上記1.~3.のいずれかに該当することの証拠書類を添付する必要があります。
早期審査に関する事情説明書の提出は、商標出願と同時に行うこともできますが、出願を行った後に行うこともできます。
早期審査の適用を受けるために印紙代は発生しませんが、弁理士に手続を依頼する場合は弁理士報酬が発生します。