商標法の目的と商標登録をすべき実際の意味

近年、商標に関するニュースが報道される機会が増えてきていることもあり、商標登録に関する関心が高まっているのでしょうか?
日本における商標の出願件数は、ここ数年、右肩上がりに増えてきています。
2016年は、年間で約15万件の商標出願がありました。

そんな中、ビジネスをされていながら、未だ商標登録をされていらっしゃらない方々は、”なぜ商標登録が必要なのだろうか?”という疑問をお持ちの方も多いかと思います。

そこで、本稿では、商標登録をすべき理由について、ご説明致します。

商標登録に関する大きな誤解

商標に関して、中小企業経営者の方や個人事業主の方とお話をしていると、よくこんなセリフを耳にします。

”ウチのブランド(商標)は、まだまだ認知度が低いから、マネされる訳がないし、そもそもマネをされても構わない。”

このセリフ、上の見出しに書きましたように、個人的には大きな誤解をしていると考えているのですが、あながち的外れなセリフでもありません。

商標法の考える商標登録の目的

商標登録などについて定めている法律である商標法の第1条には、商標法の目的が規定されています。

商標法第1条
「この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」

商標法の第1条は、商標を保護すること、つまり、商標登録制度を用意して、商標登録をした者に、その商標を独占使用させることにより、(1)商標使用者の業務上の信用の維持を図り、(2)産業の発達に寄与し、(3)需要者の利益を保護する、ことを目的とすると定めています。

ここで、皆様、商標を使用している事業者様にとっては、商標登録の目的は、”商標使用者の業務上の信用の維持を図ること”と考えられます。

”商標使用者の業務上の信用の維持を図る”とは、例えば、アナタがある商標の元、優良な商品・サービスを提供していて顧客から好評を得ていたとします。
そのような状況において、他者がアナタの商標と似たような商標を使用して、同じような種類ではあるものの粗悪な商品・サービスの提供を始めたとします。
顧客からすれば、商標が似ているので、アナタと当該他者は、何らかの提携関係にある等と思うことでしょう。そうすると、粗悪な商品・サービスを提供している他者から商品・サービスの提供を受けた顧客は、アナタの商品・サービスについても質が落ちたと勘違いをし、アナタの業務上の信用も低下します。
このような事態を避けるべく、商標法は、商標登録制度を用意して、このような似たような商標を使用する他者を排除できるようにしています。

ですので、商標法は、捉えようによっては、商標をマネされることを前提に考えていますので、上述のセリフ”認知度が低いからマネされない”、”だから商標登録も必要無い”と考えるのは、商標法の目的に照らせば、それ程間違いともいえません。

ところが、現実の商標登録の必要性は他にある

上で見ましたように、”ウチの商標はマネされない”とか、商標法の目的は、アナタの商標がマネされるということを念頭に置いています。

しかし、冒頭に述べましたように、近年、日本の商標出願件数は増えており、いや増えていなくとも年間軽く10万件以上の商標出願がある状況です。

このような大量の商標出願がある現状において、アナタの商標がマネされるということよりも、アナタ自身が他社の登録商標をマネすることにならないようにすることを考えるべき、というのが現実を見るならばむしろ重要なことです。

他人の登録商標と同じような商標を使用してしまうと、アナタがその他人の商標権を侵害することになってしまいます。事業者である以上、他人の商標権を侵害しないよう注意を払うべきと考えられていますので、中小企業・個人事業主であっても、他人の登録商標の存在を知らなかったでは済まされません。

ですので、他人に同じような商標を登録されてしまう前に、アナタ自身がご自分の商標を登録しておくべきなのです。

これが、現実的に、商標登録をしておくべき理由です。

自分がマネされるではなく、自分がマネしないこと

つまり、自分の商標をマネされるかどうかということよりも、自分が他社の登録商標をマネすることにならないように、まずは、ご自分の商標を登録すべきと考えられます。

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