A.「特定侵害訴訟代理業務付記」とは、簡単に言いますと、知的財産権に関する侵害訴訟に関して、弁護士とともにであれば、訴訟代理人になれることを意味しています。
弁理士のプロフィールや弁理士の名刺を見ると、たまに「特定侵害訴訟代理業務付記」という文言が表示されていることがあります。
「特定侵害訴訟代理業務付記」など、普段聞き慣れない堅苦しい言葉ですが、以下にご説明致します。
我々弁理士は、自分の氏名、生年月日、事務所所在地などを、日本弁理士会の弁理士登録簿に登録しています。(この登録をしないと弁理士にはなれません。)
その前に、基本的には、弁理士になるためには、「弁理士試験」に合格しなければなりませんが、弁理士試験とは別に「特定侵害訴訟代理業務試験」という試験が年1回行われ、特定侵害訴訟代理業務試験に合格すると、前述の弁理士登録簿に特定侵害訴訟代理業務試験に合格した旨が付記されます。
これが、「特定侵害訴訟代理業務付記」の意味になります。
特定侵害訴訟代理業務付記となると、冒頭申しましたように、知的財産権に関する侵害訴訟について、弁護士とともにであれば訴訟代理人になれます。
ちなみに、知的財産権に関する侵害訴訟とは、具体的には、特許、実用新案、意匠、商標若しくは回路配置に関する権利の侵害又は特定不正競争による営業上の利益の侵害に関する訴訟です。
基本的に、訴訟の代理人になれるのは弁護士のみです。
ですが、特定侵害訴訟代理業務付記されると、弁護士と一緒であれば、知的財産権侵害訴訟の代理人になれるという訳です。
そのため、特定侵害訴訟代理業務試験では、民法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法などの知識が問われます。
特定侵害訴訟代理業務付記とは別の話になりますが、弁理士の業務の関係で、弁護士のみが訴訟代理人になれるということの例外がもう1つあります。
特許、実用新案、意匠及び商標のように、特許庁に対して行う手続に関しては、特許庁で「審判」という手続が行われることがあります。
審判は、例えば、商標登録出願をしたけれども商標登録できず拒絶された場合の「拒絶査定不服審判」、登録商標を無効にすべきことを請求する「無効審判」などがありますが、審判の結果は「審決」と呼びます。(審決は裁判の判決のようなものです。)
また、審判とは別に異議申立てという特許庁における手続があります。
こうした審決や異議申立ての決定に不服があるときは、訴訟を提起することができます。このような訴訟を”審決等取消訴訟”と呼ぶことがありますが、審決等取消訴訟が、特定侵害訴訟代理業務付記されていなくても、また弁護士とともにでなくとも、弁理士が訴訟代理人になることができます。