商標登録された「チバニアン」

地球のN極とS極とが最後に逆転した約77万年前の痕跡がわかるという地磁気逆転地層が千葉県市原市にあるそうです。
この千葉県市原市の地層が、国際地質科学連合が定める国際標準模式地の候補になっていて、日本の研究チームが「チバニン」の名称で申請する予定になっているそうです。
なお、「チバニアン」とは、ラテン語で「千葉時代」を意味するそうです。

そんな折、「チバニアン」という商標が千葉県市川市の個人によって、商標登録されました。
また、「チバニあん」という商標も千葉縁千葉市の個人によって、商標出願されています。
さらに、「記号」と「千葉時代」の文字からなる商標も千葉県市原市の会社が商標出願しています。

以上のような第三者の商標があっても、上述の研究チームによる学会への申請行為への影響は無いと考えられます。
当該申請において「チバニアン」の名称を用いても、その「チバニアン」は、商標として使用されている訳ではないため、第三者の商標権侵害には該当しないためです。
ただし、今後、この研究チームや関連組織等が、派生して「チバニアン」を商標的に使用する場合は影響が出る可能性はあります。

ところで、こうした話に関連して、「PPAP」などをピコ太郎氏とは無関係の者が商標出願したとして大変話題になったニュースが記憶に新しいです。

「チバニアン」と「PPAP」の問題は、似ているようで全く異なります。
よく報道で「〇〇が商標出願されていた!」、「△△が商標登録された!」等といった見出しが見られます。
「商標出願」と「商標登録」を混同しているケースが多く見られます。
報道をする側は、記事に興味を持ってもらいたいとの考えがあるでしょうし、或いは商標登録に関する知識があまり無いからかもしれません、報道が正確でない場合があります。
読者の方も商標登録に関する知識はあまり無いケースも多いです。
「商標出願」と「商標登録」とでは、全く意味が異なります。

商標出願と商標登録は別物

商標出願(正確には「商標登録出願」と呼びます。一般の方は「商標申請」等と呼ばれることもあります。)は、商標登録を受けたい商標を特許庁に出願しただけの状態です。より具体的には、商標登録を受けたい商標などを記載した願書を特許庁に提出しただけの状態です。つまり、まだ商標登録された訳ではなく、当然商標権も発生していません。商標出願された商標は、特許庁で商標登録の要件を満たしているかの審査をされますので、将来的に、その商標が商標登録されるのか否かもまだわからない状態といえます。先の「PPAP」は商標出願されただけの状態です。

商標登録は、特許庁の審査を経て出願した商標が特許庁に登録されたことを意味します。この場合は、商標権も発生していますので、商標権者以外の者は、当該商標と同一又は類似の商標を使用することができなくなります。「チバニアン」については、商標登録されましたので、こちらのケースに該当します。

商標の知名度によって事情が変わる

商標「PPAP」の問題は、「PPAP」が著名な流行語であり、また、この商標を出願した無関係の第三者が特許庁も目を付けているような特殊な人物(或いはその関連会社)であるため、比較対象としては特殊過ぎるかもしれませんが、商標の認知度によっても諸々と事情が変わってきます。

ある商標が無関係の第三者によって商標登録出願されてしまった場合、商標を出願されてしまった”本家”の商標が有名であれば、商標登録の要件を満たさず、第三者の商標は商標登録を受けることができません。
また、無関係の第三者の商標が商標登録されてしまっても、本家の方に「先使用権」が認められる余地があります。

しかし、本家の商標が有名でないとそうもいきません。
特許庁における商標審査で、第三者が悪意であるか等の審査は基本的には行いませんし、本家が有名でなければ、それを先取り出願したとは限らないため、十分、商標登録されてしまう可能性はあります。
また、そもそも著名商標でない商標について悪意で商標出願を行っても、それを正面から排除するような商標法の条文はありません。

”早い者勝ち”の先願主義

日本の商標登録制度は、先に商標登録出願した方を優先させる「先願主義」を採用しています。
そのため、上述しましたように、商標がある程度有名になっていないと、結局は先に特許庁に商標出願した方が勝つ、”早い者勝ち”の制度であることから、なるべく早期に商標登録出願をしておくことが望まれます。

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