Q.自分で使わない商標でも商標登録できますか?

A.結論としては、自分で使わない商標でも商標登録できる場合もありますが、商標登録できない場合もあります。

お答えになっていないようでもあるのですが、実際、商標登録できる場合とできない場合があります。

まずは、前提となる考え方からお伝え致します。

商標登録制度というものは、実は、商標そのものである文字や図形を保護しようとするものではありません。
商品・サービスについて、ある商標が使用された結果、その商標にはその商品・サービスを提供している事業者の信用や評判が蓄積されます。
商標登録制度は、この事業者の”信用”を商標を保護すること通じて保護しようとしています。
そのため、使用されていない商標には”信用”が蓄積されるはずがないので、使用されていない商標は商標登録で保護するに値しないとも考えられます。

商標登録の要件を定めている商標法第3条の第1項柱書は、次のように記載されています。

「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」

ここでのポイントは、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする」です。
つまり、使用しない商標は商標登録を受けることができなさそうです。

また、「使用をする」には、現在使用している商標はもちろんのこと、近い将来使用する予定のある商標も含まれます。
ちなみに、”近い将来”は、特許庁の商標審査基準によれば、「商標出願後3~4年以内」となっていますので、これを一応の目安と考えることができます。

以上が商標登録制度の目的や商標法上の商標登録の要件のご説明です。

次に、特許庁における実際の商標審査についてお伝え致します。

上述の商標法第3条第1項柱書から、使用しない商標は商標登録を受けることができないと考えられるのですが、特許庁の商標審査では、出願された商標が、その出願人によって使用されているのか、或いは近い将来使用予定があるのか、といったことは基本的には審査をしません。

ですので、その意味では、その他の商標登録の要件を満たしていれば、使用しない商標であっても商標登録を受けることができます。

冒頭、使用しない商標は商標登録を受けることができない場合があるとも述べました。
これは、特許庁が例外的に、商標の使用をするのかを審査・確認する場合があるためです。
特許庁が例外的に商標の使用を確認するのは、例えば、以下のようなケースです。
・指定役務が国家資格を有していないと提供できない役務であるのに、出願人の名称から当該国家資格を有していると考えられない場合。
・1つの区分の中で広範囲の商品・役務を指定している場合(指定役務が”小売等役務”の場合、はよりハードルの高い要件が課せられます。)。

上のようなケースで商標の使用の確認が必要とされると、そのような国家資格を有していることの証明資料や、本当にそのような広い範囲の商品・役務の取り扱いがあることの資料の提出が必要となりますので、十分な資料が提出できないと商標登録を受けることができないと考えられます。

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