2006年4月から導入されている地域団体商標制度ですが、導入後10年が経過した最近の地域団体商標の利用状況から、最近の傾向をご説明致します。
地域団体商標制度は、地域ブランドを保護するために創設されました。
「地域名称+商品・サービスの普通名称等」という組合せの商標が対象になります。このような組み合わせの商標は、基本的には、その商標を使用しても”どの事業者の商品・サービスか区別がつかない”ため、商標登録の要件を充たさず、商標登録できないことから保護が不十分でした。
そこで、通常の商標登録とは異なる要件を付加して、「地域名称+商品・サービスの普通名称等」といった商標の登録を認めることとしたものです。
地域団体商標制度ができた当初は、農産物や水産物、伝統工芸品のようなものについての地域団体商標の登録が比較的多い傾向がありました。
地域団体商標の登録要件の1つに”周知性”という要件があります。全国的に有名でなくとも、所定の範囲での有名性が必要ということです。
そのため、最近名付けたばかりの「地域名称+商品・サービスの普通名称等」という商標は、地域団体商標として登録をすることは困難です。ある程度の期間、その商品・サービスを販売・営業しないと所定の周知性を獲得することは困難であると考えられるからです。
そうしてみると、地域団体商標制度ができて10年も経てば、”出尽くした感”もあるように思われてきます。
最近の地域団体商標の登録状況を見ても、やはり以前よりも件数は減少傾向にあります。
しかしながら、そうは言っても、最近でも新しく地域団体商標として登録されている案件はあります。
少なくはなりましたが、このような最近の地域団体商標の傾向を以下にお伝え致します。
元々、地域団体商標は、所定の条件を満たした組合という組織しか、登録を受けることができないという要件がありました。
その後の法改正によって、商工会、商工会議所及びNPO法人も地域団体商標の商標権者となることができるようになりました。(会社や個人は、地域団体商標を登録することはできません。)
そのため、最近の地域団体商標の1つの傾向として、商工会、商工会議所、NPO法人名義での商標出願が多いことが挙げられます。
もう1つの傾向は、加工食品についての地域団体商標が多い点です。
例えば、ごく最近地域団体商標として登録を受けたものとして、「龍ケ崎コロッケ」、「駒ヶ根ソースかつ丼」、「習志野ソーセージ」といった商標があります。ちなみに、これらの商標権者は、商工会と商工会議所です。
加工食品は、地域ごとにオリジナル性のある商品を比較的に作り出し易く、また、一般に組合よりも商工会・商工会議所の方が商標の周知化に向けた活動が活発であるとも考えられるため、こうした傾向が見られるのではないかと考えられます。