Q.商標権侵害、”知らなかった”で済みますか?

A.結論的に言いますと、”知らなかったでは済まされません。”

商標権侵害とは、典型的には、他人の登録商標と同一又は類似の商標を、当該登録商標の指定商品・指定役務と同一又は類似の商品・サービスに使用することです。

そして、商標権の侵害者に対しては、商標権者は、当該商標の使用差止(当該商標の使用中止)や損害賠償等を請求することができます。

上述した商標の差止請求権については、商標法第36条に定められていますが、特に「故意」や「過失」といった要件が定められている訳でもありませんので、”知らなかった”といった事情は考慮されません。

一方、商標権侵害に基づく損害賠償請求権については、民法の不法行為による損害賠償を基本としますので、「故意」又は「過失」が要件となります。しかし、商標法では、商標権侵害行為については過失があったものと推定するとの規定を置いていますので、(過失の推定を覆すことができれば別ですが)やはり、”知らなかった”といった事情は考慮されません。

中小企業や個人事業主の方の場合、他人がどのような登録商標を所有しているか等、通常知り得ないと思われ、上述の商標権侵害に関する商標法の規定は厳し過ぎるようにも感じられるかもしれません。

しかし、特許庁に商標登録出願がなされると、このような商標が特許庁に商標登録出願されたということを一般公衆に知らしめるために、「公開商標公報」という公報が発行されます。
また、商標登録出願された商標が特許庁に登録されると、当該商標が商標登録されたことを一般公衆に知らせるために「商標公報」が発行されます。
このように、(現実には中小企業経営者・個人事業主の方がこうした商標に関する公報にアクセスすることは稀とは思いますが)商標に関する出願や登録の情報は周知されている(と考えられている)ため、知り得る情報であると考えられているのです。
さらには、登録商標に関する情報は、特許庁に備えられた商標原簿で確認することもできますし、特許庁が提供しているデータベース「J-PlatPat」で調査・検索することもできます。
そして、商標権侵害となる行為は、基本的にはビジネス上での商標の使用行為等なので、侵害者は”事業者”なので、他人の登録商標に注意を払うべきと考えられていることもあります。

以上の通り、”知らなかった”では済まされない商標権侵害ですが、商標権を侵害してしまうことを回避する最も有効な手段は、ご自身が使用している商標について商標調査を実施し、問題が無ければ、その商標を商標登録することです。

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