中小企業の経営者の方や個人事業主の方と商標のことを話していると、たまにこういう発言を聞くことがあります。
”ウチの商標は、認知度が低いのでマネをされることがないし、そもそもマネをされてもどうってことないので構わない。だから、商標登録は必要ない。”
まず、”マネをされても構わない”という点から考えてみます。
この点は、1つの経営判断とも言えるため、あながち間違いとは言えません。
しかしながら、意図的にマネをされるであれ、偶然同じような商標を使用されてしまうのであれ、他者に同一又は類似の商標を使用されると次のような不都合が発生します。
例えば、洋食料理店の場合を想定します。
A店とB店が同じような店名(商標)であったとします。
店名が似たようなものなので、お客さんはA店とB店は姉妹店であったり、何かしら両店は関係があるお店同士であろうと思うでしょう。
このような時に、A店がとても美味しい料理を提供し且つ接客サービスも素晴らしい優良店であるとして、一方、B店は真逆で料理はマズイし接客も悪いとします。
そうすると、元々A店の客であった人がB店に行くと、A店の信用・評判も低下してしまうという事態が起こります。
これは、このような店舗型サービスを提供している事業者に限らず、商品を製造販売しているような会社にも当てはまります。
次に、”ウチの商標は、認知度が低いのでマネをされることがない”という点です。
確かに、その通りかもしれません。普通は、ある程度売れていて認知された商標だからこそ、マネをしたくなるものです。その人気にあやかるためですね。ちなみに、こういうケースを「顧客吸引力にフリーライドする」と呼んだりします。
しかし、商標を考えるうえで、意図的にマネをされることだけを考えるのは間違いです。
世の中には多くの商標が存在しています。その中には、商標登録されているものもされていないものもあります。
いずれにしても偶然の一致で他者が同じような商標を使用している可能性は十分にあるのです。
最後に、上記発言で決定的に誤りがあるのは、自分の商標をマネされるかどうかしか考えていないということです。
商標で、特に重要なことは、まず自分が意図的であれ、意図的でないのであれ、他者の商標をマネしないことです。
上述の通り、世の中にはたくさんの商標で溢れかえっています。
そして、最近では年間10万件以上の商標登録出願がなされていることを考えると、商標登録をしないということは、他者の登録商標と同じような商標をご自分が使用することになってしまう危険があるということです。
他者の登録商標と同一又は類似の商標を使用するということは、その他者の商標権を侵害することになりますので、何が何でも避けなくてはなりませんよね。