商標登録の要件(公序良俗違反)2 国家資格等と誤認を生ずるおそれのある商標

商標法第4条第1項第7号は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けることができないことを定めています。
所謂”公序良俗違反”の商標は商標登録を受けることができません。
しかし、どのような商標が公序良俗違反に該当するのかは曖昧ですので、特許庁の商標審査基準や商標審査便覧で、そのうちの一部が詳しく説明されています。

昨今、民間企業や一般社団法人において、独自の資格を創設して、その資格の認定・付与等を行うことが多く見受けられます。
このような場合に、同じような内容の資格を作る場合、その資格の名称は、どうしても似たようなものになりがちです。そこで、そういった資格の名称を守るツールとして商標登録が広く利用されている実態もあります。

一方で、こうした資格名称は、国家資格等と誤認を生ずるおそれがあるケースも十分に考えられます。
このように、国家資格等と誤認を生ずるおそれのある商標は、古くから商標登録出願がなされた背景もあり、場合により、国家資格等の制度に対する社会的信用を低下させるおそれもあることから、特許庁では国家資格等と誤認を生ずるおそれのある商標は商標法第4条第1項第7号に規定する公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するとして商標登録を認めないこととしています。
具体的には、以下のような商標が公序良俗違反(国家資格等と誤認を生ずるおそれがある)として商標登録を認められませんでした。
「特許管理士」
「特許理工学博士」
「特許工学博士」
「特許哲学博士」
「特許政経学博士」
「特許建築学博士」
「特許修士」
「管理食養士」
「食養士」
(「特許」の文字を含む例示が多くなりましたが、そこではなく、むしろ「〇〇士」や「〇〇博士」のように、末尾に「士」、「博士」等を含むものが該当しやすくなるといえます。)
また、上の例示にはありませんが、「〇〇技能士」といった商標も一般的には商標登録が困難であると考えられます。
もちろん、国家資格等と関連する組織が、当該国家資格等の名称を商標登録出願をした場合には、公序良俗違反とは判断されず、その他の商標登録の要件を満たせば商標登録され得ることとなります。

逆に、
「お風呂の美容士」
「義士」
「梅博士」
「おむつ博士」
「手打ちうどん博士」
などは、公序良俗違反とは判断されていません。

一般論としては、近年徐々に商標法第4条第1項第7号該当性に関する特許庁の審査はやや厳しくなってきているようにも思われます。

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