最近の商標に関するニュース(20170320)

「商標」というと、一般の方にはあまり馴染みのない言葉かもしれません。
そのため、一般の方向けの新聞・雑誌・ニュース等で商標に関連する事項が取り上げられることもあまりありませんが、最近、一般の方にも大きく話題となった商標に関するニュースが何件かありましたので、ご紹介致します。

・「PPAP」事件

言わずと知れた、ピコ太郎氏の「ペンパイナッポーアッポーペン」やその略称「PPAP」等が、ピコ太郎氏とは無関係の会社に商標登録出願されてしまったという事件です。
これによって、ピコ太郎氏がご自分の歌を歌えなくなる?!といった疑問もあったようですが、商標はあくまで「商品・サービスの出所識別標識」であり、一方、歌詞や歌のタイトルは「商品・サービスの出所識別標識」ではないので、特にそのような問題になる可能性は低いと考えられます。
また、そもそも当該無関係の会社の商標登録出願は、出願中なのであって、商標登録された訳ではありませんし、商標登録されてしまう可能性も極めて低いと考えられます。
ちなみに、この無関係の会社は、元弁理士の関連会社で、当該元弁理士個人とともに、大量に商標登録出願を行っています。元弁理士なので、コストをかけずに、流行語やビジネスで多用されそうな言葉を狙って大量に商標登録出願を行っています。

・「フランク三浦」事件

最高裁判所まで争われた事件です。
事件の流れは以下の通りです。

・「フランク三浦」が特許庁に商標登録された。
・その登録商標「フランク三浦」が特許庁の無効審判で無効とされた。
・特許庁の無効審判における無効の判断(無効審決)が知的財産高等裁判所で取り消された(つまり、「フランク三浦」の登録商標は有効との判断)。
・最高裁判所が知的財産高等裁判所の判断を支持した(つまり、「フランク三浦」の登録商標の有効性が確定した)。

ご注意頂きたいのは、この事件は、フランク・ミューラー側が、商標権侵害でフランク三浦側を訴えていた事件ではなく、「フランク三浦」商標の登録の有効性が争われた事例だという点です。

・「マリカー」事件

公道カートレンタル会社の登録商標「マリカー」の商標登録を取り消すよう任天堂が異議申立てを行った事件です。
異議申立ては、登録商標について、一定期間内であれば特許庁に商標登録を取り消すよう異議を申し立てることのできる制度です。
異議申立ての結論は、特許庁の判断では登録商標「マリカー」の商標登録は維持することとなりました。おそらく任天堂側は、自社の周知の「マリオカート」の略称「マリカー」も周知なので、当該レンタル会社の商標「マリカー」と混同が生ずるといった主張を行ったと思われますが、任天堂の略称「マリカー」は周知ではないとして任天堂の主張は受け入れられなかったようです。
ちなみに、この事件も登録商標の有効性が争われた事件で、商標権侵害の事件ではありません。
なお、別の裁判で任天堂が当該レンタル会社に対して著作権侵害を理由とする訴訟を提起しているようです。

・「J-PlatPat」利用停止事件

これは「事件」と書きましたが、上の3件とは趣を異にします。
本件は、上3件とは異なり、一般の方にはあまり知られていない事柄と思われますし、裁判所や特許庁での争いでもありませんが、我々知的財産業界の人間にとっては非常に大きなインパクト・影響のある事件でした。
特許庁の外郭団体「独立行政法人工業所有権情報・研修館」が提供している知的財産権に関するデータべース「特許情報プラットフォーム J-PlatPat」が外部からの攻撃を受けたするセキュリティ上の問題で約1週間利用停止状態に陥りました。「J-PlatPat」は、無料で利用することができる知的財産データベースで、商標や特許の検索に非常によく使われております。たまに、週末の時間を利用してメンテナンスのため利用できない時間がありますが、1週間も利用できないというのは前代未聞でした。いずれにしましても、現在では利用再開されましたので、今後このような事態が起きないよう期待するところです。

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