「実用新案」とは?

「実用新案」という言葉を目にしたり、耳にしたりすることは比較的よくあるかもしれません。
例えば、日用雑貨などのパッケージに「実用新案登録第〇〇〇号」のような表示がされているのを見かけたことがあるのではないでしょうか?
しかし、実用新案は特許とは違うのか? 
或いは、特許と何が違うのか?
といった疑問を持たれている方は多いのではないでしょうか?
そこで、ここでは、実用新案の特徴や特許との違いをわかりやすくご説明致します。

まず、実用新案の保護対象は「考案」です。
考案とは、実用新案について定めている法律「実用新案法」によれば、「自然法則を利用した技術的思想の創作」です。
「技術的思想」は、わかりやすく言えば「技術的なアイデア」です。
ですので、簡単に言いますと、特許庁に実用新案登録をすれば、「技術的なアイデア」である考案を独占的に実施することができます。なお、ご自分で実施しない場合でも、他者にライセンスをすることもできます。
ちなみに、特許の保護対象は「発明」です。特許法によれば、発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」となります。
実用新案の保護対象である考案と、特許の保護対象である発明とは、それぞれの定義がよく似ています。異なる点は、発明の定義には「高度のもの」という記載があることです。この「高度のもの」とは、考案と比較して高度のものという意味合いになりますので、逆に言えば、実用新案法で保護する考案は、それほど高度のものでなくても良い、ということになります。そのため、実用新案で保護される考案は「小発明」と呼ばれることもあります。
もう1点、保護対象という面で、実用新案が特許と違うのは、実用新案では「方法」に関する考案は保護されません。実用新案で保護される考案は、「物品の形状、構造又は組合せ」となります。特許では、例えば「製法特許」といった言葉を聞くこともあるように、物の製造方法などの「方法」も保護されます。

次に、実用新案権の存続期間ですが、実用新案登録出願の日から最長10年間になります。
特許の場合は、特許出願の日から最長20年間です(一部例外はあります。)。
実用新案は、ライフサイクルの短い商品等を保護することを1つの目的としていますので、特許と比べて存続期間が短く設定されています。
また、実用新案と特許は、制度的に似通っているため、こういった存続期間等で違いを出さないと、制度の存在意義が失われると考えられるからと言えるかもしれません。
ちなみ、以前は実用新案権の存続期間が6年間とされていた時期もありましたが、実用新案の利用者が激減したため、実用新案制度の魅力向上の一環として存続期間を10年間に伸長したという経緯があります(さらに、その前は15年間という時期もありました。)。

最後に、実用新案についての特許庁の審査についてご説明致します。
実用新案と特許との違いは、他にもたくさんありますが、細かいことであったり、多岐に亘りますので、現行の実用新案制度の最も特徴的な「無審査主義」についてご説明します。
特許、実用新案、意匠、商標は、ぞれぞれ発明、考案、意匠(デザイン)、商標を特許庁に登録することで、特許権、実用新案権、意匠権、商標権が発生し、発明、考案、意匠、商標を独占的に実施・使用する権利を取得することができます。これらを独占的に実施・使用する権利は、非常に強力なので、何でもかんでも登録する訳にもいきませんので、基本的には、登録に値するものであるか審査をします。
ここで例外は実用新案です。
特許、意匠及び商標に関しては、特許において、出願された発明、意匠及び商標が登録に値するか(登録要件を具備しているか)を審査して、審査に合格すれば登録されます。
しかし、実用新案の場合は、形式的な部分の審査はするものの、考案の内容について登録要件を満たしているかの審査を特許庁ではせずに、実用新案登録をすることとしています。これを「無審査主義」と呼んでいます。
つまり、実用新案の場合、出願をすれば、ほとんど何でも実用新案登録されることになります。
上述しましたが、実用新案は、ライフサイクルの短い商品を保護することを目的の1つとしています。ですので、考案の内容を審査しないで、早期に登録を認めることとしているのです。
無審査主義が採用されていますので、本来であれば実用新案登録に値しない考案まで登録されることになりますので、そのような考案について実用新案権が発生すると社会的に混乱することが予想されます。例えば、既に世の中に出回っている物品の形状、構造、組合せ等を今さら実用新案登録して、こうした物品の製造・販売をしている事業者に実用新案権侵害を主張する行為等が行われると、非常に混乱してしまいます。
そこで、実用新案法は、このような事態を防止するため、実用新案権を行使する場合には慎重にならざるを得ないような制度を幾つか用意しています。これらの制度はやや細かく専門的でありますので、ここでは触れませんが、実用新案は、「早期に何でも登録されるけれども、権利を行使する際は慎重に」ということを覚えておいて頂ければと思います。

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