「類似商品・役務審査基準〔国際分類第11ー2017版対応〕」の改訂でここが変わる!

特許庁の「審査基準」の1つである「類似商品・役務審査基準」が改訂されます。
改訂後の基準は、「類似商品・役務審査基準〔国際分類第11ー2017版対応〕」(以下、「新基準」といいます)となり、2017年1月1日以降の商標登録出願に適用されます。

「類似商品・役務審査基準」の改訂によって、実務的にそれほど大きな変更があるように思われません。
例えば、新基準には、新しく以下の商品・役務の表示が追加されます。
・「腕時計型携帯情報端末」
・「スマートフォン」
・「後見」

これらの商品・役務は、時代背景の要請に沿って、新基準に明記されましたが、従前より、これらの商品・役務を指定して商標登録をすることは可能でしたので、実務的に特に変更すべきことはないと考えられます。

そんな中で、個人的にやや注目しているのは、第36類の「建物又は土地の情報の提供」という役務の類似群が「36E01」から「36D01」に変更される点です。

ちなみに、「類似群」とは、類似すると推定される商品・役務をグループ化したものです。
商品・役務は、45通りの「区分」に分類されていますが、区分は商品・役務の類似関係を必ずしも示すものではなく、区分をさらに細分化してグルーピングした類似群によって、特許庁では商品・役務の類似関係を審査しています。

商標登録をするための願書には、指定商品・指定役務を記載するとともに、それらの商品・役務が属する区分も記載します。ここで、指定商品・指定役務は複数種類の商品・役務を指定してもよいので、区分の数も複数個となる場合があります。
一方、弁理士報酬や印紙代は、区分の数が増えるごとに増額されます。逆に言えば、区分の数が変わらなければ費用も変わりません。
以上のことから、1つの区分の中の商品・役務は、たくさん指定しても金額が変わらないため、なるべく多く指定して広い範囲の商標権を取得したいとの考えも出てきます。
しかしながら、金額が変わらないからといって、必要以上に多くの商品・役務を指定して商標登録をしてしまうと、第三者の商標の選択の幅が狭くなってしまい、社会的には問題があります。
そこで、特許庁では、1つの区分に属する類似群を8個以上指定する商標登録出願に対しては、”本当にそのような広い範囲の商品・役務について、当該商標を使用するのか疑義がある”として、拒絶理由通知書を発する運用をしています(1つの区分で類似群が7個までであれば、このような拒絶理由通知書は来ません。ただし、小売等役務はこの限りではありません。)。この拒絶理由通知書に対しては、実際にそれらの商品・役務に当該商標を使用している、或いは使用する予定があることを示す証拠を提出しなければなりません。

話を、今回の「類似商品・役務審査基準」の改訂点の1つである、第36類の「建物又は土地の情報の提供」の類似群の変更に戻しますと、「建物又は土地の情報の提供」は、これまで「36E01」という類似群となっていましたが、改訂後は「36D01」となります。
「36D01」には、元々「建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、建物の売買の代理又は媒介、建物又は土地の鑑定評価、土地の管理、土地の貸借の代理又は媒介、土地の貸与、土地の売買、土地の売買の代理又は媒介」という役務が含まれていました。
ですので、従前は、「建物又は土地の情報の提供」と「建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、建物の売買の代理又は媒介、建物又は土地の鑑定評価、土地の管理、土地の貸借の代理又は媒介、土地の貸与、土地の売買、土地の売買の代理又は媒介」とを指定すると、類似群は2つになるため、前述の拒絶理由通知書を回避するためには、第36類では残りあと5つの類似群しか指定できませんでした。
これに対し、今回の改訂により、「建物又は土地の情報の提供」と「建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、建物の売買の代理又は媒介、建物又は土地の鑑定評価、土地の管理、土地の貸借の代理又は媒介、土地の貸与、土地の売買、土地の売買の代理又は媒介」とは同じ類似群「36D01」となるため、あと6つの類似群を指定することができるようになります。

以上が、今回の「類似商品・役務審査基準」の改訂により実務的に変わってくるポイントの1つとなります。

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