商標法第五十三条は、専用使用権者又は通常使用権者による商標の不当使用による商標登録の取消しの審判に関する規定です。
第一項
具体的には、専用使用権者又は通常使用権者が、登録商標の同一又は類似の範囲で、商品・役務の質の誤認又は出所の混同を生ずる商標の使用をした場合には、何人も当該商標登録を取り消すために審判を請求することができるとするものです。
本審判も制裁的な規定になりますが、商標権者自身の使用に基づかない取消審判のため、商標権者にも一定の救済規定がただし書きにあります。即ち、商標権者が、当該事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたときは商標登録の取り消しを免れることができます。
具体的な条文は以下の通りです。
「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかつた場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。 」
第二項
第二項も制裁規定で、商標の不当使用をした専用使用権者又は通常使用権者は、一定期間、当該商標と同一又は類似の商標の登録をすることができません。
具体的な条文は以下の通りです。
「当該商標権者であつた者又は専用使用権者若しくは通常使用権者であつた者であつて前項に規定する使用をしたものは、同項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から五年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができない。 」
第三項
第三項は、第五十二条の規定を準用しています。そのため、第一項の審判請求についても除斥期間が適用されます。
具体的な条文は以下の通りです。
「第五十二条の規定は、第一項の審判に準用する。 」