商標登録にかかる費用は複雑です。
なぜかというと、一度に費用が発生するのではなく、何段階かに分かれて費用が発生するためです。
これによって、商標登録にかかるトータルのコストがわかりにくくなっているのです。
一方、インターネット上には、”商標申請1万円”のような広告をよく見かけますが、この金額は、最初にかかる商標申請の弁理士報酬のみで、印紙代は含まれていません。また、商標登録の費用は、上述のように何回かに分かれて発生しますので、商標申請以降の費用が分かりにくくなっています。
そこで、本稿では、商標登録のトータルのコストをご理解頂けるように、ご説明致します。
また、商標登録の費用に関して、”これを知らないと損をする”情報もお伝えします。
以下のご説明は、商標登録を弁理士に依頼した場合を想定しています。
商標登録の流れ
まずは、費用の前に、商標登録されるまでの手続の流れをご説明します。
商標登録とは、特許庁に商標を登録することです。そのため、最初に特許庁に商標を登録してもらうために、「商標登録願」という願書を特許庁に提出します。これが、「商標登録出願」という手続になります。(商標登録出願というのが正式な手続の名称になりますが、「商標出願」とか「商標申請」などと呼ぶ方もいます。)
商標登録出願をすると、特許庁が出願された商標を審査します。(2021年5月の状況では)特許庁の審査結果が出るまでには約1年ほどかかるのが一般的です。
特許庁の審査で、出願された商標を登録してもよいと判断されると、「登録査定」という書類が特許庁より送られてきます。
一方、特許庁の審査にすんなりと通らない場合は、「拒絶理由通知書」という書類が送られてきます。拒絶理由通知書に対しては、「意見書」や「手続補正書」という書類を提出して反論や補正などの手続を行って、再度審査するように特許庁に求めることができます。反論等を行っても審査に通らない場合は「拒絶査定」となります。拒絶査定は、商標登録をしないという特許庁の審査結果です。拒絶査定に対しては、さらに「拒絶査定不服審判」という手続で、商標登録を認めるよう、改めて特許庁に審理を求めることができますが、拒絶査定不服審判の詳細は、ここでは割愛します。拒絶理由通知書に対する反論が認められれば、「登録査定」を得ることができます。
登録査定が送られてきてから所定期間内に特許庁に登録料を納めると、その商標は商標登録されます。
商標登録された後は、5年後か10年後に、必要に応じて商標登録の更新の手続を行います。
以上の商標登録の手続の流れは、以下のようになります。
商標登録出願
↓
特許庁による審査
↓ ↓
↓ 拒絶理由通知書
↓ ↓
↓ 意見書・手続補正書
↓ ↓
登録査定←←←
↓
登録料納付
↓
商標登録
↓
商標登録の更新
このフローチャートで緑の文字で示したところで費用が発生します。
次に、これらの各費用が発生する手続の具体的な金額や注意点などをご説明します。
商標登録費用の内訳
商標登録の費用の内訳は、弁理士報酬(手数料)と印紙代です。
弁理士報酬は、弁理士事務所によって金額が異なります。したがいまして、以下ご説明する弁理士報酬の金額は弊所の場合の金額になります。また、弁理士報酬には消費税がかかります。
印紙代は、どの弁理士事務所も金額が同じです。
商標登録出願の費用
商標登録を行う際、最初に行うのが商標登録出願という手続です。
ここで、特許庁に提出する商標登録願には、商標登録を受けたい商標や出願人の名称・住所等を記載しますが、加えて、その商標をどのような商品・サービスに使用するのかも記載します。この商品・サービスのことを「指定商品・指定役務」と呼びます。
商標では、商品・サービスを45通りの「区分」に分類しています。ですので、商標登録願に記載した指定商品・指定役務は、第1類から第45類までのいずれかの区分に属することになります。
指定商品・指定役務として記載できるのは、1種類の商品・サービスでなくてもよいので、複数種類の商品・サービスを記載することもできます。そのため、区分も1つだけの場合もあれば、複数の区分となる場合もあります。
商品・サービスの区分の数がいくつになるかによって、商標登録の費用が変わってくる仕組みになっています。
区分の数が増えるほど、印紙代は高くなります。弁理士報酬も、区分が増えるほど高くなるのが一般的です。
【弁理士報酬】
弊所の商標登録出願の弁理士報酬は、次のように計算します。
¥30,000+¥20,000×区分の数(税別。以下同じ。)
例えば、1~3区分の場合は、次の表の金額になります。
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\50,000 | \70,000 | \90,000 |
【印紙代】
ここでの印紙代は、特許庁の手数料です。
商標登録出願の印紙代は、次の計算方法になります。
¥3,400+¥8,600×区分の数
例えば、1~3区分の場合は、次の表の金額になります。
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\12,000 | \20,600 | \29,200 |
以上が商標登録出願時にかかる費用です。
例えば、1~3区分の場合、商標登録出願時のトータルの金額は、次の表のようになります。
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\62,000 | \90,600 | \119,200 |
意見書・手続補正書の費用
意見書・手続補正書の費用は、特許庁の審査にすんなりと通る場合は発生しません。特許庁の審査で拒絶理由通知書が送られてきた場合に発生する費用です。
拒絶理由通知書の内容によって、(1)意見書だけ必要、(2)手続補正書だけ必要、(3)意見書と手続補正書の両方必要という3つのパターンがあります。
したがって、意見書の費用だけ発生する場合と、手続補正書の費用だけ発生する場合と、意見書と手続補正書の両方の費用が発生する場合があります。
ちなみに、意見書や手続補正書を提出する手続のことを「拒絶理由応答手続」、「中間手続」などと呼ぶこともありますので、ここで発生する費用を「中間手続費用」などと呼ぶ場合もあります。
意見書・手続補正書に関しては、印紙代はかかりませんので(まれに印紙代が発生することはあります)、基本的には弁理士報酬のみとなります。
弊所の金額は次の通りです。
意見書 | \50,000 |
---|---|
手続補正書 | \10,000 |
意見書や手続補正書の費用も区分の数が増えるごとに増額する弁理士特許事務所が多いです。
しかし、弊所では、意見書と手続補正書の費用は、区分の数にかかわらず定額にしておりますので、クライアント様にメリットがあると思います。
拒絶理由通知書が来たということは、一旦、特許庁は商標登録しないと判断しているので、意見書や手続補正書を提出しても商標登録できないリスクがあります。
しかし、意見書・手続補正書の費用を区分の数に応じて増額してしまうと、意外と高くなってしまい、コスト的なリスクがますます大きくなると思いますので、弊所では定額にしています。
また、意見書の内容によって、商標登録できる・できないが変わってきます。その意味で意見書の出来は、弁理士の実力に左右されるものですので、弊所では自信をもって5万円という金額に設定しています。
商標登録時の費用
登録査定が送られてくると、所定の期間内に特許庁に商標登録料の納付が必要です。
【弁理士報酬】
ここでの弁理士報酬は、(1)出願した商標が特許庁の審査に通ったので成功報酬という意味合いと、(2)登録料の納付手数料という意味合いがあります。
そのため、「成功報酬」や「登録料納付手数料」などの名目で呼ばれる弁理士報酬です。
弊所の商標登録時の弁理士報酬(成功報酬)は次の通りです。
成功報酬・登録料納付手数料 | \50,000 |
---|
意見書・手続補正書と同様に、弊所では区分の数にかかわらず、¥50,000という固定の金額にさせて頂いております。
商標登録時の費用について、商標登録出願時や意見書・手続補正書の弁理士報酬のように、区分が増えるごとに増額する弁理士特許事務所も多いです。
しかし、この後お伝えしますが、商標登録料の印紙代は区分の数が増えると結構高額になり、クライアント様のご負担が大きくなるので、弊所では弁理士報酬は固定金額にしています。
【印紙代】
ここでの印紙代は、商標登録料です。
商標登録の期間は10年間で、その後は、何回でも更新をすることができます。
商標登録料は、10年分を一括で支払う方法と、5年分を分割して支払う方法(「分納」と呼びます)とがあります。
冒頭で、”これを知らないと損をする”情報もお伝えすると述べましたが、その最大の情報は、「商標登録料を10年分一括で納付することと、5年ごとの分納をすることによる金額の違い」です。
商標登録料の印紙代は、次の計算式によって計算されます。
この式から明らかですが、商標登録料は、区分の数が増えるごとに倍々に金額が大きくなっていきます。
・10年一括の場合 区分の数×¥28,200
・5年分納の場合 区分の数×¥16,400
例えば、1~3区分の場合は、次の表の金額になります。
10年一括納付
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\28,200 | \56,400 | \84,600 |
5年分納の場合
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\16,400 | \32,800 | \49,200 |
〈知らないと損をする①〉
上の表の印紙代の金額だけでは分かりにくいのですが、5年の分納を2回繰り返して、10年間商標登録を維持する場合を想定してみてください。
具体的な金額は、次の表の通りです。
5年分納を2回繰り返して10年間商標登録を維持する場合
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\32,800 | \65,600 | \98,400 |
10年一括納付の金額を比較して頂ければと思いますが、5年ごとに登録料を納付する場合は、印紙代が割高になるのです。
〈知らないと損をする②〉
商標登録時の弁理士報酬には、商標登録料の納付手数料の意味合いがあることを前述しました。
つまり、5年分納を繰り返す場合には、5年ごとに弁理士に登録料納付手数料を支払う必要があることを意味します。10年一括納付の場合は、弁理士に支払う登録料納付手数料は10年に一度で済むので、5年分納の場合、弁理士の登録料納付手数料が2倍になるのです。
以上が商標登録時に発生する費用です。
登録料を10年分一括で払う場合の商標登録時の費用の合計(商標登録時の弁理士報酬と印紙代の合計)は、例えば、区分が1~3つの場合、次の表のようになります。
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\78,200 | \106,400 | \134,600 |
なお、商標登録出願をした商標が全て商標登録される訳ではありません。特許庁の審査に通らなかった場合は商標登録できませんので、ここでご説明した商標登録時の費用は発生しません。(一方、この場合でも商標登録出願時の費用や意見書・手続補正書の費用は返還されないのが一般的です。)
商標登録出願から商標登録までのトータルコスト
これまで見てきましたように、商標登録のコストは、弁理士報酬と印紙代があり、費用の発生するタイミングは(特許庁の審査にすんなりと通り拒絶理由通知書が来ない場合)、商標登録出願時と商標登録時です。
商標登録出願から商標登録までのトータルのコストは、例えば、区分の数が1~3つの場合、次のようになります(特許庁の審査にすんなりと通り拒絶理由通知書が来ない場合)。
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\140,200 | \197,000 | \253,800 |
商標登録の更新費用
商標登録時に10年分の登録料を一括納付した場合は10年後に商標登録の更新の手続、5年分納の場合は5年後に残りの5年分の登録料の納付手続を行ないます。
更新の手続を行う場合も費用が発生します。ここでは、弁理士報酬と印紙代があります。
【弁理士報酬】
弊所の更新手続の弁理士報酬は、¥10,000です。
更新手数料 | \10,000 |
---|
更新時の弁理士報酬も区分が増えるごとに増額するのが一般的ですが、商標登録時の費用と同様の理由で、弊所では弁理士報酬を定額にしています。
また、商標登録の更新の手続は、それ程難しくもなく、手間のかかるものではないため、1万円という低い金額で対応させて頂いております。
【印紙代】
更新商標登録料の印紙代は、次の計算式によって計算されます。
商標登録料の場合と同様に、区分の数が増えるごとに倍々に金額が大きくなっていきます。商標登録料の印紙代よりも更新登録料の印紙代の方が高くなっています。
・10年一括更新の場合 区分の数×¥38,800
・5年分納更新の場合 区分の数×¥22,600
例えば、1~3区分の場合は、次の表の金額になります。
10年一括更新
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\38,800 | \77,600 | \116,400 |
5年分納更新
1区分 | 2区分 | 3区分 |
---|---|---|
\22,600 | \45,200 | \67,800 |
〈知らないと損をする③〉
商標登録料の納付の場合と同じように、商標登録の更新も10年一括と5年分の分納を選択できます。
そして、同様に、更新登録料の5年分納は10年一括よりも割高(更新登録料の方が商標登録料よりも金額が大きいので、更新の方がより割高になります)であることと、5年ごとに弁理士報酬が発生するというデメリットがあります。
ここまで、商標登録料と更新登録料について、5年分の分納は、(1)印紙代が割高、(2)弁理士の納付手数料が2倍になるというデメリットをお伝えしましたが、分割納付が絶対的に悪いものという訳ではありません。
例えば、ライフサイクルが短い商品・サービスに使う商標のように10年も商標登録が必要ないと想定される場合や初期投資を抑えたい場合には、5年分納を利用するのが得策です。
したがって、逆に言えば、会社のロゴや社名、店舗のロゴや店名のように長期間使用することが想定される商標の場合は10年一括納付にしないとコスト的に損をしてしまいます。
その他の商標登録に関連する費用
これまで見てきたものが商標登録にかかる基本的な費用になります。
その他、出願人や商標登録の名義や住所を変更する場合、特許庁の審査を早める早期審査の手続を行う場合など、別途発生する費用があります。
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