「特許法等の一部を改正する法律案」が令和3年5月14日に可決・成立し、5月21日に法律第42号として公布されました。
この「特許法等」というのは、特許法、商標法、実用新案法、意匠法等の法律のことです。特許法や商標法などは、毎年のように改正されていますが、特許法に関連する法律をまとめて「特許法等」と呼ぶことが多いようです。
そのような訳で、商標法も一部改正されます。本稿では、商標法の改正を中心にお伝えします。
令和3年の法改正では、政府が推進するデジタル化や新型コロナウイルス感染症に伴う手続のデジタル化に関連する項目が多くなっています。
そんな中、商標ユーザーの皆様が最も関心があるのは、料金関係ではないかと思いますので、この点に絞って、お伝えします。
商標登録料の見直し
経済産業省の説明では、”審査負担増大や手続のデジタル化に対応し収支バランスの確保を図るべく、商標登録料の料金体系を見直す”ということになっています。
”見直す”では、値上がりするのか、値下がりするのかわかりませんが、値上がりする方向になります。
商標登録にかかる費用は、弁理士に支払う弁理士報酬と特許庁に支払う印紙代です。
弁理士報酬は、法律で金額が定められているものではありませんので、法改正とは関係ありません。
したがって、値上がりすることが予想されるのは印紙代です。
印紙代は、商標出願(商標申請)の時と、その後特許庁の審査に通って特許庁に商標登録料を納める時に支払います。
今回値上がりすることが予想されるのは、印紙代のうち、商標登録料として支払う印紙代の方です。
商標登録料はいくら値上がる?
今の時点(2021年5月21日)では、いくら値上がりするかわかりません。
現状の商標登録料は、次の式により計算されることが商標法に規定されています。
【28,200円×区分の数】
(なお、商標出願の際に、出願する商標をどのような商品・サービスに使用するのか決めるとともに、商品・サービスは45通りの「区分」に分類されていますので、どの区分で商標登録するかも決めます。以下の「区分」は、この商品・サービスの分類「区分」です。)
今回の改正法では、次のように計算されることが規定されています。
【32,900円を超えない範囲内で政令で定める額×区分の数】
現在の商標法の規定では、はっきりと【28,200円】ということが決まっているのですが、改正法では上限の【32,900円】が決まっているだけで、具体的な金額は、今後の政令で決まることになっています。
そのため、現時点では、改正法によって商標登録料がいくらになるかわからないのです。
ちなみに、商標登録は更新をすることができますが、更新するときの更新登録料も同様に値上がりが予想されます。
商標登録料はいつから値上がる?
法律の改正があると、改正法はいつから適用されるのか、という問題があります。
まず、今回の料金関係の改正項目は、この法律の公布日(令和3年5月21日)から1年以内に施行されることとなっています。いつになるのかはっきりしませんが、翌年令和4年4月1日に施行されるパターンが多いので、ここでは仮に令和4年4月1日に施行されるという前提でお話します。
改正後の新料金が令和4年4月1日から適用されるとしても、どの商標案件が適用されるのか、という問題もあります。
具体的には、商標の出願(申請)日を基準にして、出願日が令和4年3月31日以前であれば旧料金、令和4年4月1日以降であれば新料金が適用されるという考え方があります。
一方、商標登録料の納付日を基準にして、商標登録料の納付日が令和4年3月31日以前であれば旧料金、令和4年4月1日以降であれば新料金が適用されるという考え方もあります。
ちなみに、平成27年の特許法等の改正で、商標登録料が値下がりしました。この時は、納付日を基準にして、改正法の施行後に商標登録料を納付する場合は、値下がりした新料金が適用されました。
新料金の適用を、商標出願日を基準にするのか、或いは、商標登録料の納付日を基準にするのかで、大きな違いが出てきます。
今回の改正では商標登録料の値上がりが予想されますので、商標出願日を基準にした方が、商標ユーザーにとっては有利です。商標出願日基準であれば、令和3年3月31日までに商標出願をすれば安い旧料金が適用されるためです。
これが納付日基準にすると、現状の通常の商標審査に1年かかっているので、今(令和3年5月21日)出願しても、商標登録料を納付するのは令和4年5月頃になるので、高い新料金が適用されてしまいます。
前述の平成27年改正では値下がりしましたので、逆に、納付日基準の方が安い新料金の適用を受けやすいというメリットがありました(施行日前に商標出願した案件でも納付日が施行日後であれば、安い新料金が適用され、施行日後の商標出願案件は当然に安い新料金が適用されましたので)。
今回の料金改定の適用関係が、”出願日基準”になるか、”納付日基準”になるか、現時点で不明ですが、
出願日基準の場合は、改正法の施行前になるべく早く商標出願する、
納付日基準の場合は、「早期審査」や「ファストトラック審査」という特許庁の審査を早める方法でなるべく早く商標出願する、
のが商標登録料を安くするためには得策かもしれません。
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