商標法第六十八条の三十二

商標法第六十八条の三十二は、国際登録に基づく商標権又は国際商標登録出願に係る国際登録が取り消された場合の救済規定です。マドプロの規定に基づいており、いわゆる”セントラルアタック”を受けた場合の救済規定です。

第一項

第一項は、国際登録が取り消された場合に商標登録出願をできる旨規定しています。
本規定の適用を受け得るのは、日本を指定していた国際登録であり、また、保護が失われた一部についても認められるので、商品又は役務の一部についても商標登録出願をすることができます。
具体的な条文は以下の通りです。

「議定書第六条(4)の規定により日本国を指定する国際登録の対象であつた商標について、当該国際登録において指定されていた商品又は役務の全部又は一部について当該国際登録が取り消されたときは、当該国際登録の名義人であつた者は、当該商品又は役務の全部又は一部について商標登録出願をすることができる。 」

第二項

第二項は、第一項の商標登録出願について、出願日を国際登録日又は事後指定日までの遡及効を認める効果と要件を規定しています。
具体的な条文は以下の通りです。

「前項の規定による商標登録出願は、次の各号のいずれにも該当するときは、同項の国際登録の国際登録の日(同項の国際登録が事後指定に係るものである場合は当該国際登録に係る事後指定の日)にされたものとみなす。
一  前項の商標登録出願が同項の国際登録が取り消された日から三月以内にされたものであること。
二  商標登録を受けようとする商標が前項の国際登録の対象であつた商標と同一であること。
三  前項の商標登録出願に係る指定商品又は指定役務が同項の国際登録において指定されていた商品又は役務の範囲に含まれていること。 」

第三項

第三項では、第一項の商標登録出願に関してもパリ条約の規定による優先権を受け得ることを規定しています。
具体的な条文は以下の通りです。

「第一項の国際登録に係る国際商標登録出願についてパリ条約第四条の規定による優先権が認められていたときは、同項の規定による商標登録出願に当該優先権が認められる。 」

第四項

第四項は、第一項の商標登録出願についてもパリ条約の例による優先権を受け得ることを規定しています。
具体的な条文は以下の通りです。

「第一項の国際登録に係る国際商標登録出願について第九条の三又は第十三条第一項において読み替えて準用する特許法第四十三条の三第二項 の規定による優先権が認められていたときも、前項と同様とする。 」

第五項

第五項は、第一項の商標登録出願について、分割の特例を規定しています。
即ち、分割において遡及効が認められるのは、国際登録で指定されていた商品又は役務に限られます。
具体的な条文は以下の通りです。

「第一項の規定による商標登録出願についての第十条第一項の規定の適用については、同項中「商標登録出願の一部」とあるのは、「商標登録出願の一部(第六十八条の三十二第一項の国際登録において指定されていた商品又は役務の範囲に含まれているものに限る。)」とする。 」

第六項

第六は、第一項の商標登録出願の手続期間を徒過した場合の救済規定を定めています。
具体的な条文は以下の通りです。

「第一項の規定による商標登録出願をする者がその責めに帰することができない理由により第二項第一号に規定する期間内にその出願をすることができないときは、同号の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその出願をすることができる。 」

第七項

第七項は、前項の救済規定の効果を規定しています。
第一項の規定に基づく商標登録出願の出願日は、基本的には国際登録日又は事後指定日に遡及しますが、前項の規定の適用を受ける場合は、国際登録日又は事後指定日まで遡及せず、国際登録が取り消された日から3月経過した日までした遡及しないことを規定しています。
具体的な条文は以下の通りです。

「前項の規定によりされた商標登録出願は、第二項第一号に規定する期間が満了する時にされたものとみなす。 」