商標法第六十四条

商標法第六十四条は、防護標章登録の要件について規定しています。
防護標章登録制度は、登録商標が著名となった場合に、当該登録商標にかかる指定商品・指定役務とは非類似の商品・役務についても当該登録商標を保護するための制度といえます。
つまり、商標権は、本来、商標権者が登録商標と同一の商標を指定商品・指定役務と同一の商品・役務に独占的に使用することができる権利であり(商標法第二十五条:専用権)、また商標権者以外の者は、登録商標と同一の商標を指定商品・指定役務と類似の商品・役務について使用することを禁止され、登録商標と類似の商標を指定商品・指定役務と同一又は類似の商品・役務について使用することを禁止されます(商標法第三十七条第一号:禁止権)。
このように、商標権は、商標と商品・役務について同一・類似の範囲を保護するものです。
しかし、商標登録制度の目的は、まず、商標使用者の業務上の信用を保護することです。業務上の信用は、必ずしも同一・類似の範囲を保護すれば足りるとは限りません。商品・役務について、非類似の範囲も保護しないと、商標使用者の業務上の信用を保護することができない場合もあり得ます。その場合に備えて、登録商標と同一の商標について、非類似の商品・役務を保護するのが防護標章登録です。

第一項

第一項は、商品に係る登録商標についての防護標章登録の要件を規定しています。
具体的な条文は以下の通りです。

「商標権者は、商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。 」

第二項

第二項は、役務に係る登録商標についての防護標章登録の要件を規定しています。
具体的な条文は以下の通りです。

「商標権者は、役務に係る登録商標が自己の業務に係る指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定役務及びこれに類似する役務以外の役務又は指定役務に類似する商品以外の商品について他人が登録商標の使用をすることによりその役務又は商品と自己の業務に係る指定役務とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある役務又は商品について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。 」

第三項

第三項は、地域団体商標についての防護標章登録における特則を定めています。
具体的な条文は以下の通りです。

「地域団体商標に係る商標権に係る防護標章登録についての前二項の規定の適用については、これらの規定中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。 」