商標法第五十一条

商標法第五十一条は、商標の不当な使用による商標登録の取消しの審判に関する規定です。
商標権者が故意に、類似の範囲での商標の使用により、商品・役務の質の誤認又は他人の商品・役務と混同を生ずるものをした場合の商標登録の取消し審判です。

第一項

第一項では、本審判の具体的要件を定めています。
・商標権者が、
・故意に
・指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品・指定役務に類似する商品・役務についての登録商標又は登録商標に類似する商標の使用であって
・商品の品質・役務の質の誤認又は他の業務に係る商品・役務と混同を生ずるものをしたときは、
・何人も、
・その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

つまり、専用使用権者た通常使用権者の使用は本条の適用外です。
また、「故意」が要件となっています。
さらに、本審判は制裁的な意味合いがあるので、一部の商品・役務についての使用であっても商標登録全体が取り消されます。
本審判の適用があるのは、「類似の範囲」ですので、登録商標の指定商品・指定役務への使用は適用外ですし、そもそも、非類似の範囲も全く関係の無い範囲ということができますので、適用外となります。
具体的な条文は以下の通りです。

「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。 」

第二項

第二項は、第一項の審判により商標登録を取り消された場合、商標権者であった者は、一定期間、当該登録商標と同一・類似の範囲での商標登録が禁止される旨を規定しています。これも第一項の審判が制裁規定であることを表しているといえます。
具体的な条文は以下の通りです。

「商標権者であつた者は、前項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から五年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができない。 」