商標法第十一条は、「出願の変更」に関する規定です。
商標法上、商標は、文字商標、図形商標、立体商標、音商標、位置商標、色彩商標、動き商標、ホログラム商標などに分類することができます。
これらとは、別の観点で、我が国の商標法上、次の3つの商標の種類に分類することができます。
・通常の商標
・団体商標
・地域団体商標
商標法第十一条は、これらの3つの種類の商標についての商標登録出願を相互に変更することができることを定めています。
第一項
商標法第十一条第一項では、団体商標の商標登録出願を通常の商標登録出願又は地域団体商標の商標登録出願に変更できることを規定しています。
条文は以下の通りです。
「商標登録出願人は、団体商標の商標登録出願を通常の商標登録出願(団体商標の商標登録出願及び地域団体商標の商標登録出願以外の商標登録出願をいう。以下同じ。)又は地域団体商標の商標登録出願に変更することができる。 」
商標法第十一条第一項の規定は、例えば、団体商標として商標登録出願した商標が、商標法第七条に規定する団体商標の要件を満たさないと特許庁の審査で判断された場合などに利用されます。
第二項
商標法第十一条第二項は、第一項に引き続き、商標登録出願の変更について規定しています。
我が国の商標法上、商標はある観点から「通常の商標」、「団体商標」及び「地域団体商標」に分類できます。
商標法第十一条第二項は、地域団体商標の商標登録出願を通常の商標登録出願又は団体商標の商標登録出願に変更することができることを規定しています。
条文は以下の通りです。
「商標登録出願人は、地域団体商標の商標登録出願を通常の商標登録出願又は団体商標の商標登録出願に変更することができる。 」
商標法第十一条第二項は、例えば、地域団体商標として商標登録出願した商標が全国的に周知で、商標法第三条第二項の適用を受けて通常の商標又は団体商標として登録を受けようとする場合に利用されることが考えられます。
第三項
商標法第十一条第三項も引き続き、商標登録出願の変更について規定しています。
商標法第十一条第一項が、団体商標から通常の商標又は地域団体商標へ、
同第二項が、地域団体商標から通常の商標又は団体商標の商標登録出願へ変更できることを規定していました。
商標法第十一条第三項は、通常の商標登録出願を団体商標又は地域団体商標の商標登録出願へ変更することができることを規定しています。
商標法第十一条第三項は、通常の商標登録出願の過程で、商標登録出願人の地位が商標法第七条に定める法人等に変更され団体商標として利用した方がよくなった場合や、商標法第三条第一項第三号の拒絶理由通知を受けて地域団体商標として商標登録をした方がよくなった場合などに利用されることが想定されます。
商標法第十一条第一項乃至第三項の規定により、通常の商標、団体商標及び地域団体商標の商標登録出願は、相互にいずれの種類の商標登録出願へも変更することができます。
このように商標法第十一条により商標登録出願の種類の変更は認められていますが、当然、商標登録出願している商標等が、変更後の商標の要件に合致している必要があります。
条文は以下の通りです。
「商標登録出願人は、通常の商標登録出願を団体商標の商標登録出願又は地域団体商標の商標登録出願に変更することができる。 」
第四項
商標法第十一条第一項乃至第三項は、通常の商標登録出願、団体商標の商標登録出願及び地域団体商標の商標登録出願を相互に変更することができることを規定していました。
商標法第十一条第四項は、これらの変更をすることができる時期的要件を定めています。具体的には、商標登録出願の変更は、商標登録出願について査定又は審決が確定する前に行う必要があります。
条文は以下の通りです。
「前三項の規定による商標登録出願の変更は、商標登録出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。」
第五項
商標法第十一条第一項乃至第三項の規定に基づいて、商標登録出願の変更があった場合の元の商標登録出願の取り扱いについて定めているのが、商標法第十一条第五項です。具体的には、商標登録出願の変更があった場合、元の商標登録出願は取り下げたものとみなされます。ある意味、当然のことを確認的に定めているといえます。商標法第十一条第五項が存在しなかった場合、商標法第十一条第一項乃至第三項の規定に基づいて商標登録出願の変更があったときに、元の商標登録出願と変更後の商標登録出願の両者が併存してしまい不都合となるためです。
条文は以下の通りです。
「第一項から第三項までの規定による商標登録出願の変更があつたときは、もとの商標登録出願は、取り下げたものとみなす。 」
第六項
商標法第十一条第六項は、商標法第十条第二項及び第三項の準用規定です。
すなわち、まず、商標法第十一条第六項は、商標登録出願の変更があった場合、変更後の商標登録出願は、元の商標登録出願があった時に出願したものとみなすことを規定しています。
次に、商標法第十一条第六項は、上述のように変更後の商標登録出願の出願の日が遡ることにより、提出書類等が提出期間内に提出できなくなる不都合を回避するための規定を定めています。
条文は以下の通りです。
「前条第二項及び第三項の規定は、第一項から第三項までの規定による商標登録出願の変更の場合に準用する。 」