商標法第九条の四は、商標登録出願をした商標と、指定商品・指定役務についてした補正が要旨変更であった場合の規定です。
この規定は、商標登録がされた後に、商標や指定商品・指定役務の補正が要旨変更であったことが判明した場合、その商標登録出願は、実際の商標登録出願日ではなく、要旨変更とされた手続補正書を提出した時にしたものとみなすものです。
これにより、要旨変更があった場合、その商標登録出願の出願日は繰り下がりますので、実際の商標登録出願日と当該手続補正書提出日の間に、第三者による同一又は類似の商標登録出願があった場合には、当該要旨変更とされた登録商標は無効とされる可能性がでてくることになります。
「要旨変更」とは、特許庁の「商標審査基準」によれば、次のようになります。
〈商標の要旨変更〉
・商標の付記的分部に、に「JIS」「JAS」「特許」「実用新案」「意匠」等の文字や記号、又は商品の産地・販売地・役務の提供場所を表す文字がある場合に、これらを削除することは原則として要旨変更になりません。
・商標の付記的部分でない普通名称、品質表示、材料表示等の文字、図形、記号、立体的形状を変更、追加、削除することは要旨変更になります。
・商標の色彩の変更は要旨変更になります。
・平面商標を立体商標に変更すること、立体商標を平面商標に変更することは要旨変更になります。
・標準文字の商標を標準文字でない商標に変更すること、またその逆も要旨変更になります。
〈指定商品・指定役務の要旨変更〉
・指定商品・指定役務の範囲の変更や拡大は要旨変更となります。
・指定商品・指定役務の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載を明瞭にすることは要旨変更になりません。
以上、商標審査基準から商標と指定商品・指定役務の要旨変更の例を一部抜粋しましたが、特に商標については補正で変更することができないと考えておいた方がよいです。ですので、商標登録出願をする前に慎重に商標について吟味・検討することが推奨されます。
条文は以下の通りです。
「願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものと商標権の設定の登録があつた後に認められたときは、その商標登録出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。 」