商標法第七条の二

第一項

商標法第七条の二第一項は、「地域団体商標」の要件等を定めている条文です。
地域団体商標制度は、地域ブランドを保護するために平成18年4月から導入されています。
地域団体商標は、簡単にご説明すると「地域名称+商品・サービスの普通名称等」という商標です。このような商標は、通常の商標では、全国的に有名になる等、例外的な場合を除いて商標登録されません。そのため、このような地域ブランドは適切な保護を受けることが難しいという問題があり地域団体商標制度ができました。
商標法第七条の二第一項は、長い条文になりますが、地域団体商標の主体要件、団体商標的要件、周知性要件、商標自体の要件を定めています。
条文は以下の通りです。

「事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除き、当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。)、商工会、商工会議所若しくは特定非営利活動促進法 (平成十年法律第七号)第二条第二項 に規定する特定非営利活動法人又はこれらに相当する外国の法人(以下「組合等」という。)は、その構成員に使用をさせる商標であつて、次の各号のいずれかに該当するものについて、その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、第三条の規定(同条第一項第一号又は第二号に係る場合を除く。)にかかわらず、地域団体商標の商標登録を受けることができる。
一  地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
二  地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
三  地域の名称及び自己若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務の普通名称又はこれらを表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字並びに商品の産地又は役務の提供の場所を表示する際に付される文字として慣用されている文字であつて、普通に用いられる方法で表示するもののみからなる商標 」

地域団体商標の商標登録が認められる要件は以下の通りです。
1.主体要件 組合、商工会議所、商工会、NPO法人等で、正当な理由がないのに加入資格の有る者の加入を拒んだり、困難な条件をつけてはならないとの定めがある団体に限られます。
2.団体商標的要件 団体自らが使用するのではなく、その団体の構成員に使用させる商標である必要があります。
3.周知性要件 全国的に有名ではなくとも、ある程度有名な商標である必要があります。商品・サービスの特性等に応じて、「商標審査基準」でその程度の周知性が必要であるか定められています。
4.商標自体の要件
(1)「地域名称+商品・サービスの普通名称」
(2)「地域名称+商品・サービスの慣用的に使用されている名称」
(3)上記(1)又は(2)の商標に加えて「商品の産地・サービスの提供場所を表示する際に慣用的に使用される文字」を含む商標
上記(1)~(3)の商標に、さらに別の文字を加えたり、図形要素を加えたり、かなり特殊な文字である場合には地域団体商標として商標登録は認められません。
また、地域名称のみ、普通名称のみの商標も認められません。
上記(3)の「商品の産地・サービスの提供場所を表示する際に慣用的に使用される文字」は、例えば、「本場」、「特産」、「名産」などです。

第二項

商標法第七条の二第二項は、地域団体商標における「地域の名称」について定めています。
まず、この「地域の名称」には、現在の行政区画単位の地名に限らず、旧地名、旧国名、河川名、山岳名、海域名なども含まれます。
そのうで、商標法第七条の二第二項は以下のように規定されています。

「前項において「地域の名称」とは、自己若しくはその構成員が商標登録出願前から当該出願に係る商標の使用をしている商品の産地若しくは役務の提供の場所その他これらに準ずる程度に当該商品若しくは当該役務と密接な関連性を有すると認められる地域の名称又はその略称をいう。」

この条文の「商品の産地」とは、例えば、農産物であれば当該商品が生産された地域、海産物であれば当該商品が水揚げ又は漁獲された地域、工芸品であれば当該商品の主要な生産工程が行われた地域が該当します。
また、「役務の提供の場所」とは、例えば、温泉における入浴施設の提供であれば温泉が存在する地域です。
また、「密接な関連性を有する地域」とは、加工品の主要原材料の生産地域、工芸品の伝統的製法の由来地などが該当します。

第三項

商標法第七条の二第三項は、団体商標の場合と同じように、商標法第三条第一項の規定を読み替える規定です。
これらは、地域団体商標も、その商標登録出願人である団体のみが使用する商標ではなかく、その団体の構成員に使用させる商標であることが前提となっているためです。
条文は以下の通りです。

「第一項の場合における第三条第一項(第一号及び第二号に係る部分に限る。)の規定の適用については、同項中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。」

第四項

商標法第七条の二第四項は、地域団体商標を商標登録出願する際に必要となる特有の書類を定めています。
具体的には、商標登録出願人が商標法第七条の二第一項に定める組合等であることを証明する書面と、商標登録出願に係る商標が商品・役務と密接に関連性のある地域名称を含んでいることを証明する書面が必要となります。
条文は以下の通りです。

「第一項の規定により地域団体商標の商標登録を受けようとする者は、第五条第一項の商標登録出願において、商標登録出願人が組合等であることを証明する書面及びその商標登録出願に係る商標が第二項に規定する地域の名称を含むものであることを証明するため必要な書類を特許庁長官に提出しなければならない。」