商標法第三十一条

商標法第三十一条は、商標の通常使用権に関する規定です。
通常使用権は、専用使用権と同様、商標権のライセンスの一形態です。
専用使用権と異なるのは、通常使用権は、基本的には登録商標を独占使用できる権利ではありません。そのため、通常使用権を許諾した商標権者も自ら登録商標を使用することができますし、複数の者に通常使用権を許諾することができます。その意味で、専用使用権は物権的、通常使用権は債権的性格を有するとされています。
また、通常使用権は、専用使用権と異なり、設定登録は効力発生要件ではありません。

第一項

第一項では、商標権者は通常使用権の許諾をすることができる旨を定め、例外として、国や地方公共団体等の商標についてはこれを認めないことを定めています。
具体的な条文は以下の通りです。

「商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権については、この限りでない。 」

第二項

第二項は、通常使用権者の権利を定めています。
専用使用権同様、通常使用権も商標権の全てを許諾することができますが、内容、時期、地域的な制限を設けて許諾をすることもできます。制限がある場合、通常使用権者はその制限の範囲内で登録商標を使用することができます。
具体的な条文は以下の通りです。

「通常使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有する。 」

第三項

第三項は、通常使用権の移転について定めています。
通常使用権は、商標権者及び専用使用権者の承諾がある場合、又は一般承継の場合にのみ移転をすることができます。
具体的な条文は以下の通りです。

「通常使用権は、商標権者(専用使用権についての通常使用権にあつては、商標権者及び専用使用権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。 」

第四項

第四項は、通常使用権を登録したことの効果を定めています。
具体的には、通常使用権を登録すれば、商標権者や専用使用権者に対しても効力を生ぜしめることができます。
具体的な条文は以下の通りです。

「通常使用権は、その登録をしたときは、その商標権若しくは専用使用権又はその商標権についての専用使用権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる。 」

第五項

第五項は、通常使用権の登録が第三者対抗要件であることを定めています。
即ち、通常使用権の移転、変更、消滅、処分の制限は、登録をしなければ第三者に対抗することはできません。
具体的な条文は以下の通りです。

「通常使用権の移転、変更、消滅又は処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。 」

第六項

第六項は、特許法の準用規定です。
具体的な条文は以下の通りです。

「特許法第七十三条第一項 (共有)、第九十四条第二項(質権の設定)及び第九十七条第三項(放棄)の規定は、通常使用権に準用する。 」