商標法第五条の二

商標登録制度は「先願主義」という、先に商標登録出願した者が優先されるという制度です。そのため、商標登録出願の日というのは非常に重要となります。
商標法第五条の二は、この商標登録出願の日の認定等に関する事項を定めています。

第一項

商標法第五条の二第一項の具体的な条文は以下の通りです。

「特許庁長官は、商標登録出願が次の各号の一に該当する場合を除き、商標登録出願に係る願書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。
一 商標登録を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
二 商標登録出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が商標登録出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
三 願書に商標登録を受けようとする商標の記載がないとき。
四 指定商品又は指定役務の記載がないとき。」

商標法第五条の二第一項は、基本的には、商標登録出願に係る願書の提出日を商標登録出願の日と認定しなければならないという特許庁長官の義務を規定しています。
しかしながら、同項各号に掲げる場合は、商標登録出願の手続として瑕疵が大きいため、これらの場合は願書の提出日は商標登録出願の日とは認定されません。

第二項

商標法第五条の二第二項は、商標登録出願のための願書に、商標法第五条の二第一項に定める瑕疵がある場合の規定です。具体的な条文は以下の通りです。
「特許庁長官は、商標登録出願が前項各号の一に該当するときは、商標登録を受けようとする者に対し、相当の期間を指定して、商標登録出願について補完をすべきことを命じなければならない。」
つまり、商標登録出願の願書に前項に定める瑕疵があった場合でも、「補完」をすることができることとされています。

第三項

商標法第五条の二第三項は、商標法第五条の二第二項に定める「補完」の手続を定めています。
具体的な条文は以下の通りです。

「商標登録出願について補完をするには、手続の補完に係る書面(以下「手続補完書」という。)を提出しなければならない。」

商標登録出願を補完する場合には、「手続補完書」を提出することを定めています。商標など特許庁に対する手続を修正する場合、「手続補正書」を提出することがありますが、それとは区別しています。

第四項

商標法第五条の二第四項は、商標登録出願の願書に瑕疵があり、手続補完書を特許庁に提出したことによる効果を定めています。
条文は以下の通りです。

「特許庁長官は、第二項の規定により商標登録出願について補完をすべきことを命じた者が同項の規定により指定された期間内にその補完をしたときは、手続補完書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。」

適切に手続補完書を特許庁に提出した場合、手続補完書の提出日が商標登録出願の日となります。商標法第五条の二第一項各号に定める瑕疵があった場合には、商標登録出願は、その商標登録出願の日が認定されませんでしたが、本項の規定によって、繰り下がって、手続補完書提出日が商標登録出願日となることが定められています。

第五項

商標法第五条の二第五項は、商標登録出願に瑕疵があり、指定期間内に手続補完書も提出しなかった場合の効果を定めています。
条文は以下の通りです。

「特許庁長官は、第二項の規定により商標登録出願について補完をすべきことを命じた者が同項の規定により指定された期間内にその補完をしないときは、当該商標登録出願を却下することができる。」

商標登録出願に重大な瑕疵があり、手続補完書も提出しないので、特許庁長官は、その商標登録出願を却下することができることが定められています。
ここで、「商標登録出願を却下しなければならない。」ではなく、「商標登録出願を却下することができる。」というように、商標登録出願を却下するか否かは特許庁長官の裁量に委ねられています。
そのため、指定期間を過ぎて手続補完書を提出した場合でも商標登録出願の日を認定される余地はあります。
しかし、キチンと指定期間内に手続補完書を提出するべきでしょう。