商標法第一条

商標法の第一条は、商標法の目的を定めています。
具体的には、以下のように規定されています。

「この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」

商標を一定期間、商品やサービスに使用することによって、商標には、その商標使用者の信用が蓄積されます。
例えば、ある商品に付された商標を見れば、その商品の品質は優れたものだと消費者が判断できたり、特定の商標が付された商品には、いわゆる「プレミア価格」と呼ばれる、他の商標が付された商品よりも高い価格で取引されることがありますが、こうした現象は、まさに商標に商標使用者の信用が蓄積されているためです。
これが、商標法第一条に定める「商標の使用をする者の業務上の信用」です。

以上のように、「商標の使用をする者の業務上の信用」は非常に価値のあるものとなります。
一方で、他人の業務上の信用に「あやかろう」とする者も出てきます。つまり、他人の売れている商標をマネしようとする者達です。このような人達は得てして、上辺の商標だけをマネするのですが、商品・サービスの質が悪いことが多いです。優れた商品・サービスを提供する技術やノウハウがないとか、コストをかけていないからとかの理由で、粗悪な商品・サービスが提供されてしまいます。

このような場合、商品・サービスの需要者は、商標が似ているので、商標をマネされてしまった方の商品・サービスなのか、商標をマネした方の商品・サービスなのか区別がつきません。
そうなると、優れた品質の商品・サービスを提供していた商標だと思って買ったのに粗悪な商品・サービスをつかまされてしまったと需要者は不利益を被ります。
また、この時、需要者は、以前は優れた商品・サービスを提供していたのに今はもうダメだと考えるので、「商標使用者の信用」も低下してしまいます。

そこで、商標法は、商標登録制度、つまり、商標を特許庁に登録することにより、登録した商標を独占的に使用できる権利を与えたり、民事的な救済措置や刑事罰を用意して、「商標を保護」しています。

これによって、商標使用者の信用と需要者の利益を保護しつつ、産業の発達が促進されます。