商標登録を弁理士に依頼すべき理由は?

商標登録をするために、弁理士に依頼する必要があるのか?

商標登録をするための手続は、必ずしも弁理士に依頼する必要はなく、ご自分で行うこともできます。
商標登録の手続を弁理士に依頼すると、当然のことながら、弁理士報酬が発生しますので、コスト的にはデメリットがあります。
しかし、一般的には、商標登録の手続は、弁理士に頼んだ方が良いと考えられています。
その理由は、概ね、以下の理由であると考えられます。

”商標登録の手続は、専門的であるため、その手続を自分で行うためには、時間をかけて商標登録の手続の内容や流れを調べて、手続に必要な書類を作成しなければならず、しかも、自分で手続を行うと間違いを起こす可能性も高いため、それならば、最初から弁理士に頼んだ方がよい。”

つまり、商標登録は、スピードと正確性を重視するなら弁理士コスト重視ならご自身で、ということになりそうです。

大まかにいえば、商標登録を弁理士に依頼するメリットは、上述の通り、スピードと正確性です。
ここで、スピードは、文字通り、商標登録手続に必要な書類を迅速に作成して特許庁に提出することです。
一方、正確性は、商標登録を行うための「商標登録願」と呼ばれる願書の記載事項を間違いなく記載することになります。
願書の記載事項には、商標登録出願人の氏名(個人の場合)又は名称(法人の場合)と住所のように形式的な事項もありますが、「商標登録を受けようとする商標」や「指定商品・指定役務」といった、記載するにあたり慎重な判断が必要で専門的な記載事項もあります。
この専門的な記載事項を正確に記載することに、商標登録を弁理士に依頼すべき本当の理由が隠されていますので、以下、深堀してみたいと思います。

弁理士に商標登録を依頼すべき本当の理由①「商標登録を受けようとする商標」

商標登録願には、上述の通り、「商標登録を受けようとする商標」という記載事項を記入する欄があります。
この欄には、商標登録をしたい商標を記載します。
一見、簡単そうに思えますが、本当にそうでしょうか?
なお、「商標登録を受けようとする商標」欄に、商標をどのように記載するかによって、商標登録ができたときの商標権の効力に影響(例えば、他社が同じような商標を使用してきたときに、それを止めさせられるかどうか)が出てきますので、この記載は非常に重要です。

まずは、商標とはどのようなものであるか振り返ります。
商標は、商品やサービスの提供者を示す標識で、例えば、「LABRADOR」のような文字の商標や「★」のような図形の商標があり、さらには、「★LABRADOR」のように、文字と図形を組み合わせた商標もあります(これらの他にも、立体的な形状や音など、文字や図形以外の種類の商標もありますが、ここでは典型的な文字や図形の商標についてご説明します。)。

「商標登録を受けようとする商標」欄に、どのように商標を記載するかについては、例えば、次のようなことを検討する必要があります。

・文字の商標の場合、書体はどうするか? ありふれた活字体のような書体にするのか、実際に使用する特殊な書体にするか?

・文字の商標も図形の商標も色はどうするか? 媒体によって色が異なる場合、どの色にするか?

・漢字の商標の場合、ふりがなを付けるか、アルファベットの商標の場合、対応する発音のカタカナを併記するか?

・文字と図形を組み合わせた商標の場合、文字と図形を組み合わせた状態の商標にするのか、それとも、文字と図形を分けて別々の商標にするのか?

これらの検討項目には、通常、絶対に正解というものはなく、いずれを選択しても一長一短あるのが普通です。
そのため、それぞれの検討項目についてメリット・デメリットを考慮のうえ、具体的な事案に基づいて、ベストな選択をして「商標登録を受けようとする商標」を決定することは、弁理士に商標登録を依頼すべき本当の理由の1つといえます。

弁理士に商標登録を依頼すべき本当の理由②「指定商品・指定役務」

商標登録願には、「指定商品・指定役務」を記載する欄があります。
「指定商品・指定役務」の欄には、商標登録をした商標を、どのような商品・サービスに使用するのかを記載します。
商標登録ができたときには、「商標登録を受けようとする商標」とともに「指定商品・指定役務」で商標権の効力の範囲が決まりますので(登録商標は、指定商品・指定役務の範囲で独占使用できますので、指定商品・指定役務の記載内容によって、登録商標を独占使用できる商品・サービスの範囲が決まります。)、「指定商品・指定役務」欄の記載も重要です。

「指定商品・指定役務」欄には、「商標登録を受けようとする商標」を使って提供する商品や役務(サービス)の名称を記載します。
ちなみに、商品やサービスの名称として、固有名詞を記載することはできませんし、不明確な記載も許されません。
上述の通り、指定商品・指定役務は、商標権という権利の範囲を定める要素ですので、固有名詞であったり、不明確な名称であると、権利の範囲を定めることができないためです。
指定商品・指定役務の記載の仕方には、こうした基本的なルールがありますので、一般的に通用する明確な商品・サービスの名称を記載する必要があります。

しかし、商標登録を弁理士に依頼すべき本当の理由の2つめとしてご紹介するのは、このような指定商品・指定役務の記載の基本的なルールに関するものではありません。

商標登録を弁理士に依頼せずに行った商標の案件で散見される、取り返しのつかない致命的なミスは、指定商品・指定役務の記載ミスであることが多いです。
このような致命的なミスは、上述の指定商品・指定役務の基本的なルールは守られているのですが、それとは別の大きなミスがあるのです。
それは、どちらかというと指定商品、つまり、商品の名称の場合は起こりにくいのですが、指定役務、つまり、サービスの名称の場合に起こりやすいミスです。

指定商品・指定役務は、商標登録を受けようとする商標を使って提供する商品・サービスのことです。
ですので、「指定商品・指定役務」欄には、実際にその商標を使って提供している(或いは、将来的に提供する)商品やサービスの名称を記載すべきなのですが、「指定商品・指定役務」欄に記載の商品・サービスと実際の商品・サービスにズレが生じてしまっているというミスが散見されるのです。

本当に、そのようなズレのミスが起きるのか疑問もあろうかと思いますので、このミスの典型例をご紹介します。
レストランの名前を商標登録する場合を想定します。
レストランが提供するサービスは、飲食物を提供するサービスです。
そのため、レストランの名前を商標登録する場合、指定役務は「飲食物の提供」と記載するのが基本になります。
一方、そのレストランの名前は、どこに表示するかというと、レストランの建物や看板、レストランのホームページなどです。その他に、レストランのパンフレットやチラシなどの広告宣伝物にも表示するかもしれません。
レストランの名前をパンフレットやチラシなどの広告宣伝物に表示することを考えると、レストランの名前を商標登録するにあたり、指定役務は「広告」にすべきと考えてしまう方も多いようで、本来、「飲食物の提供」とすべき指定役務を「広告」と記載してしまうミスが生じてしまうのです。

指定商品・指定役務の記載などは、「手続補正」という手続で修正をすることが一応可能です。
しかし、手続補正によっても無制限に修正をすることはできません。例えば、上の例のように指定役務の「広告」を「飲食物の提供」に修正することはできません。

「指定商品・指定役務」欄に記載の商品・サービスと実際の商品・サービスにズレが生じてしまっている場合、本来取得すべき権利範囲の商標権は得られずに、必要のない範囲の商標権を取得してしまうことになるので、致命的なミスになります。
また、これが手続補正で修正できない場合、取り返しもつきません。
そうなると、その商標登録出願がムダなものになってしまいます。


以上は、商標登録願の記載方法、つまり、商標登録出願の際の弁理士に依頼すべき本当の理由です。
以下では、商標登録に関わる別の段階での弁理士に依頼すべき理由をご紹介します。

弁理士に商標登録を依頼すべき本当の理由③「ムダな商標登録出願をなくす」

「商標登録を受けようとする商標」に関係します。
弁理士に商標登録を依頼すべき本当の理由①では、商標登録願の「商標登録を受けようとする商標」欄の書き方について述べましたが、ここでは、細かい具体的な書き方ではなく、商標そのものに着目します。

商標登録の手続は、まず、特許庁に商標登録出願(商標登録願を特許庁に提出する手続。一般の方は”商標申請”と呼ぶこともあるようです。)をし、特許庁の審査を受けて、審査に通ったものについて商標登録料を特許庁に納付することで商標登録されるという流れになります。

このように、商標登録出願をした商標は、特許庁に審査されますので、商標出願をした商標が全て商標登録される訳ではありません
特許庁における商標審査は、基本的には、「商標法」という商標や商標登録のことを定めた法律の規定や特許庁の「商標審査基準」という基準に則って行われます。商標法には、商標登録をすべきでない商標の類型が記載されているのです。

また、例えば、特許庁が提供している「J-PlatPat」という知的財産権に関するWEBサイトがあり、商標登録されている登録商標を検索できるサービスがあります。
商標法が定めている商標登録すべきでない商標の代表的なものは、”他人が先に出願した商標と同一又は類似の商標”です。
上述した「J-PlatPat」で他人の登録商標を検索して調べることができますので、出願しようとしている商標が、”他人が先に出願した商標と同一又は類似の商標”であるかどうか確認をすることができるのです。

商標法や商標審査基準についての知識を持っていたり、登録商標を検索することで、出願しようとしている商標が商標登録可能なのか予測することができます。
場合によっては、微妙な商標もあって、商標登録の可能性が五分五分と考えられるようなものもありますが、中には、一見して商標登録はほぼ不可能と考えられる商標もありますが、このようなほぼ不可能な商標を商標登録出願してしまうとムダな商標登録出願になってしまいます。

つまり、商標法などの知識を持っていて、登録商標の検索を行うことができる弁理士に商標登録を依頼すれば、ムダな商標出願を防止することができたり、事前に商標登録の可能性を知ることができるというメリットがあります。

弁理士に商標登録を依頼すべき本当の理由④「適切な反論」

特許庁に商標出願した商標は、特許庁に審査されると上で述べました。
特許庁の審査に通る場合は、「登録査定」という書類が届きます。
他方、審査に通らない場合は、まずは、「拒絶理由通知書」という書類が届きます。
拒絶理由通知書には、出願した商標について、”こういう理由で商標登録すべきでない”ということが書かれています。
拒絶理由通知書は、特許庁の最終判断ではありません。
拒絶理由通知書に対しては、「意見書」等の書類を特許庁に提出することで反論を行うことができ、特許庁は、提出された意見書等を考慮して、改めて出願された商標を審査するのです。
拒絶理由通知書の内容にもよりますが、意見書を提出することで、拒絶理由通知書に示されていた特許庁の判断を覆して、最終的には登録査定を得て、商標登録できたというケースが弊所でも多数あります。

しかし、拒絶理由通知書の判断を覆して、特許庁から商標登録をしてもよいとの判断を勝ち取るには、それ相応の内容の意見書が必要になります。
おそらく、そのような有効な意見書を作成することは、弁理士以外では難しいと考えられますので、弁理士に依頼することが得策です。

弁理士に商標登録を依頼すべき本当の理由 「まとめ」

商標登録の手続を弁理士に依頼することのメリットは、一般的には、手続を早く・正確に行うことができることと考えられています。

本稿では、さらに商標登録を弁理士に依頼することのメリットを深堀して、以下の4つのことをご紹介しました。

1.弁理士に依頼して、商標登録願の「商標登録を受けようとする商標」欄の商標の記載方法を適切なものとすることにより、取得した商標権の効力の範囲を適切なものとすることができる

2.弁理士に依頼して、商標登録願の「指定商品・指定役務」の記載を適切なものとすることにより、実際のビジネスとかけ離れた意味のない商標登録になってしまうことを防ぐことができる

3.弁理士に依頼することによって、最初から商標登録が不可能と分かっている商標を出願してしまうような”ムダな商標出願”を防ぐことができる

4.特許庁の審査で拒絶理由通知書を受けてしまった場合でも、弁理士に依頼すれば、商標登録できる可能性がある


最後に、とても重要なことをお伝えします。

これまで、商標登録に関係する手続を弁理士に頼んだ方が良い理由を述べてきましたが、上で述べてきた内容の事柄を全ての弁理士ができる訳でもありません。
弁理士にも得意・不得意の分野があるためです。

そのため、上述してきました、弁理士に商標登録を依頼すべき本当の理由、つまり、弁理士に商標登録を依頼するメリットを受けるためには、商標に特化した弁理士に依頼すべきです。

 

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