商標登録の新しい制度?
先週の金曜日(11月20日)に、特許庁審判官との連絡協議会に参加しました。
審判官とは、商標登録出願や特許出願の審査結果に不服がある場合の「拒絶査定不服審判」や特許や登録商標を無効にするための「無効審判」などの審判を審理します。特許庁の「裁判官」といったところでしょうか。
審判官の方から、商標に関係する各種の審判の受付・処理状況や審理期間(審理のスピード)などの報告がありました。
特許庁からは、事前にアンケートもされていて、アンケート結果に基づいて、意見交換やQ&Aが行われました。
識別力喪失登録商標の取消制度
個人的に1番関心があったのは、「識別力喪失登録商標の取消制度」というものです。
商標は、自社商品・サービスと、他社商品・サービスとを「区別する」ための標識です。
なので、その商標を使用する商品やサービスの普通名称や一般的に使用されている品質表示ではなく、「区別」できるような商標でなければ商標登録されません。この「区別」できる商標の能力を「識別力」「自他商品役務識別力」などと言います。
元々識別力があった商標でも、事後的に識別力を喪失する場合があります。
海外の食品の名称など、当初日本では全然知られていなかったので商標登録されたけど、何十年か経過して日本でも食品の名称として一般的になってしまったという場合や、商標登録されたけど、多くの会社に同じような商標を使われてしまったのを放置してしまって、登録商標が「普通名称化」してしまった場合などが想定されます。
例えば、商品「菓子、パン」という分野で「モンブラン」や「もちもち」といった登録商標が存在しています。個人的には、この商品分野でこれらの登録商標は識別力を喪失しているように思われます。
「識別力喪失登録商標の取消制度」とは、こういった識別力を喪失した登録商標を取り消すための制度です。
ご注意頂きたいのは、このような制度が導入されるかどうかはまだまだ分かりません。現時点では、この制度に対するニーズがあるのかを特許庁で調査している段階のようです。
もし「識別力喪失登録商標の取消制度」が導入されたら?
仮に、識別力を喪失した登録商標の取消制度が導入されたら、当り前のことですが、識別力を喪失した登録商標は取り消されてしまうかもしれません。
もう一歩進んで考えると、登録商標の所有者(商標権者)は、自分の登録商標が「普通名称化」してしまわないように、今まで以上に自分の商標権を侵害する者がいないかの監視を強化することが予想されます。そうなると、他人の登録商標を気にせずにビジネスを行うことは、ますますリスクを伴うことになりそうです。