店名がカブっていたときの商標リスクとは?

別々の店舗が同じような店名を使ったらどうなるか?

街を歩いていると、似通った店舗名の飲食店を多数見かけます。ラーメン屋同士、焼肉屋同士、焼き鳥屋同士、寿司屋同士で似たような店舗名が使われているのを見たことがありませんか?

同じような店名だから、系列店同士の場合もあれば、全く関係の無い店同士ということもあるでしょう。

系列店であれば、お互いに同じ店名をつけるのが基本でしょうし、系列店、つまり仲間同士なので、同じ店名にしても問題は起きないと思います。

しかし、全く関係の無い店同士が、全く同じ店名や似たような類似の店名をつけたらどうなるでしょう?
例えば、「焼肉ABC」という店名と「焼肉abc」という店名を、全く関係の無い店が使ったような場合を想定してみてください。

お客さんの側から考えてみます。

「焼肉ABC」と「焼肉abc」は、似たような店舗名です。
そのため、お客さんは、「焼肉ABC」と「焼肉abc」は系列店なのだろうと勘違いをします。
また、これらの2つの店舗が同じ地域に出店していたら、インターネットで検索をして焼肉屋を探した人などは、これら2つの店舗を同じ店舗と勘違いをするかもしれません。
その結果、「焼肉ABC」に行ったつもりが、実際に行ったのは「焼肉abc」だったとか、「焼肉abc」に対して電話でクレームをしたつもりが、実際に電話をかけたのは「焼肉ABC」の方だったというようなことが起こります。

もう少し深堀してみます。

例えば、「焼肉ABC」は、味も良く接客も良い店だとします。
一方、「焼肉abc」は、味が悪く接客も悪い店だとします。
上で述べたように、店名が紛らわしいのでお客さんは、両店を系列店と勘違いします。
「焼肉ABC」の常連客が、ドライブをしていると「焼肉abc」を発見したとします。その常連客は、いつもの「焼肉ABC」が新しく別の店舗を出店したものと勘違いをして入店しました。
しかし、そこで提供された料理や接客は最低のものでした。
その常連客は、”しばらく「焼肉ABC」には行っていなかったけど、味も接客サービスも落ちたな”と思い、以後「焼肉ABC」に行かなくなってしまった...
味も接客も良いと評判の「焼肉ABC」は、その評判を落としてしまうのです。
実際に、こういうことが起きています。

つまり、別々の店舗が同じような店名を使うと、それまでに築き上げたお店の評判や信用を落としかねないのです。

そのためにあるのが商標登録

上の例でお示ししまたように、「焼肉ABC」は、「焼肉abc」に類似の店名を使われてしまったために、お店の信用・評判を落としてしまいました。
また、「焼肉ABC」の常連客も「焼肉ABC」に行ったつもりが「焼肉abc」に行ってしまい、料理・接客とも悪いサービスを提供され不利益を被りました。

このように、同じような店名(商品名やサービス名なども同様ですが)を使われてしまうと、商品・サービスの提供者もお客さんも不利益を受けます
そして、実際にこういうことが起こるので、それを防ぐために商標登録という仕組みがあるのです。

商標登録は、「商標法」という法律で定められていますが、商標法の第1条には、商標法の目的が書かれています。商標法の目的は、まさに上で述べたような、(店名などの)商標の使用者の信用を保護し、お客さんの利益を保護とされています。

商標登録は、店名などの商標を特許庁に登録することです。
そして、商標登録をすると、登録した商標を独占的に使うことができるようになります。
したがって、「焼肉ABC」を商標登録しておけば、「焼肉abc」を別の店舗に使わせないようにすることができます。
「使わせないようにする」とは、同じような商品・サービスの業界(例えば、飲食店同士)で、同じか類似の商標を使っている事業者に対して、法的に、同じような商標を使わせないようにすること(差し止め)や損害賠償を請求することができるという意味です。
もう少し補足しますと、商標登録をすると、登録した商標に関して「商標権」という権利を手に入れることができ、同じような商品・サービスの分野で同じような商標を使っている事業者は「商標権を侵害」していることになりますので、上述の差止や損害賠償を請求できるのです。

もう1つの商標リスクがある?!

繰り返しになりますが、商標登録をすると、登録した商標を独占使用できます(正確には、商標登録した商品・サービスの分野で)。
ですので、具体的に、次のような事態が起こりかねないのです。

「焼肉ABC」が商標登録されておらず、逆に、「焼肉abc」が商標登録されていたとします。
この場合は、優良店の「焼肉ABC」は、「焼肉abc」の商標権を侵害することになるので、「焼肉abc」から”「焼肉ABC」という店名を使うな(差止)、損害賠償を請求する”というような警告を受けてしまうかもしれません。

商標の使用差止は、今まで使ってきた店舗名が使えなくなるということですので、看板、メニュー、店舗内装、従業員の制服、ホームページ等に表示していた店舗名が使えなくなることを意味します。
これは大変な損失となりますが、店舗名の変更を余儀なくされる訳ですから、それまで使用してきた店舗名に蓄積されたお店の評判や信用も一瞬で消え去ってしまうというとてつもなく大きな損失も生じてしまいます。

ちなみに、これまでのストーリーでは「焼肉ABC」が被害者、「焼肉abc」がやや悪者のような印象がありますが、商標登録は早い者勝ちです。先に特許庁に申請(正確には「商標登録出願」)をした方が商標登録できます。
そして、同じような商品・サービスの分野で、別々の事業者が同じような商標を商標登録することはできません。
そのため、「焼肉abc」が商標登録されたから、後から慌てて「焼肉ABC」を商標登録しようとしてもできないのです。

「もう1つの商標リスク」とは、商標登録をしないで店名などの商標を使っていると、他の事業者から商標権侵害で警告を受けるかもしれないというリスクです。

もう1つの商標リスクは本当に起こる?

商標登録をしないで店名などの商標を使っていると、他の事業者から商標権侵害で警告を受けるかもしれないと述べましたが、”本当にそんなことが起きる? 何年もこの商標を登録しないで使っているけど、一度も警告を受けたことなんかないよ。それに、そんな話、他でも聞いたことがない。”という疑問をお持ちの方も多いかもしれません。

確かに、そのような警告を受ける可能性がどれ位あるかという数字を出すことはできません。
ただ、商標権侵害に関する裁判は、実際に起きています。また、裁判まで行かなくても、警告書を送る等の対応で内々に決着している案件は相当な数があると思われます。

また、今では、多くの会社さんやお店がご自分のホームページを持っています。
そのため、インターネットで商標権侵害をしていることがバレ易い状況でもあります。
(ちなみに、知っていてわざとでなく、知らずに他者の登録商標と同じような商標を使っていても商標権侵害になります。)

もう1つ、”自分の店名と同じような店名を他人が商標登録するという偶然は、そんなに起きないでしょう”という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、一番最初に述べましたが、街で同じような店名を飲食店をよく見かけませんか?
意外と多くの事業者さんが、お互いに同じような名称を使いたがるものです。
例えば、弊所では、商標登録をご希望のお客様に、事前に商標調査というサービスを提供しています。これは、商標登録出願の前に、既に商標登録されている商標を調べて、ご希望の商標がどの位の確率で商標登録できるかを確認するサービスになります。そして、商標調査をしてみると、ご希望の商標と同じような商標が、もう既に商標登録されているということが割とよくあります。
つまり、結構、店舗の名称などはカブリ易いのです。

あとは、例えば、飲食店の店名の商標は、「飲食物の提供」というサービスの分野で商標登録しますが、「飲食物の提供」の分野で商標登録されている商標と出願中の商標は、既に99,164件存在しています(2021年5月調査時)。
加えて、毎年20万件近くもの商標が新たに出願されています。
これだけの数の商標登録や出願中の商標があるので、ご自分の店名と同じような名称が商標登録されてしまうリスクは相当程度あるのではないでしょうか。

 

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