商標登録を思い立った方が知っておくべきこと

ビジネスを行っている中で、或いは、これから新しくビジネスを立ち上げようとするときに、「商標登録」をしておくべきではないか? と思い立つこともあるかと思います。
これまで何度か商標登録をご経験された方は、特に問題がないかもしれませんが、これから初めて商標登録をしようとされている方にとっては、商標登録にあたり、まず何を考え、何をしなければならないか、わかりにくいことと思います。
そこで、本稿では、初めて商標登録をしようとしている方に向けて、必要な情報を商標登録に特化した弁理士がご説明致します。

そもそも商標とは?

商標は、「商い」の「標(しるし)」です。もう少し具体的に言うと、商品やサービスの出所を識別するための標識です。別の言い方をすれば、商品・サービスの製造者や販売者・提供者を区別するためのマークです。もっと具体的な例を挙げると、会社名、商品名、サービス名、店舗名、ロゴマーク、マスコットキャラクター等が商標になります。つまり、商標は、ビジネスで使うネーミングやマークで、基本は、文字や図形から構成されます。

では商標登録とは?

商標登録は、商標を特許庁に登録することです。商標登録をすることによって、登録した商標について商標権という権利が発生します。商標権は、登録した商標を(後述する)指定商品・指定役務について独占的に使用することができる権利です。商標権は、商標を独占使用できる権利なので、他人・他社に同じような商標を使わせないようにすることができる権利なのです。

なぜ商標登録をするのか?

ここで、商標登録をする目的を考えてみたいと思います。
この記事をお読みの方は、何らかの理由(目的)で”商標登録をしよう”と思い立った方なのだと思います。
その理由(目的)は何でしょうか?
商標や商標登録について、多くの方からご相談やお問合せを受けている中で感じるのは、”良いネーミングやマークだから他人にマネされたくない”というお考えの方が非常に多いことです。このようなお考えは正しく、上述しましたように商標権が商標を独占使用できる権利なので、他人に商標をマネされないようにするために商標登録を最も有効なツールなのです。

ただし、もう1つ重要な商標登録の目的・メリットがあります。
それは、ご自身の”商標を安全に使うため”です。

繰り返しになりますが、商標登録して発生する商標権という権利は、登録した商標を独占使用できる権利です。
ですので、もし仮に、ご自分の商標を商標登録せずにいて、他人が先にその商標を商標登録してしまうと、その他人がその商標を独占使用できることになりますので、ご自分がその商標を使えなくなってしまうのです。
そのような事態を防ぐ、つまり、安全にご自分の商標を使うためにも商標登録は大変有効なツールになります。

このように商標登録をする目的は、”他人に同じ商標を使わせない”ということの他に、”自分の商標を安全に使用するため”という重要な目的があります。ちなみに、私見では、他人に商標をマネされることよりも、まずはご自分が商標を安全に使用することを最優先で考えるべきと考えています。

どの商標を商標登録すべきか?

ここまで、商標、商標登録、商標登録の目的について、ご説明してきましたが、これらは商標登録をするうえでの前提知識といえます。
ここからは、実際に商標登録をする際に検討すべきことをご説明していきます。

”どの商標を商標登録すべきか?”というのは、具体的にどの商標を商標登録するか決まっている方にとっては、もしかしたら当たり前のことのように思われるかもしれません。しかし、実際には、どの商標にすべきかは色々と考えておくべきことがあります。

例えば、ABC株式会社という会社名の会社が、「ABC」(「ABC」の文字はかなり特殊な書体で、かなり独特な色の文字であるとします)というロゴを使っていたとします。この場合、どの商標を商標登録すべきか単純には決められません。もちろん、色々な態様の商標を幾つも商標登録できれば理想ですが、現実的には商標登録をするためには費用がかかりますので、端から端まで商標登録していく訳にもいきません。仮に、1件の商標登録をするとして、どうでしょうか? 特殊な書体・独特な色の「ABC」ロゴをそのまま商標登録することも考えられますが、普通の書体や白黒で商標登録することも考えられます。また、「ABC」のロゴの左側に会社のシンボルマークのような図形がある場合はどうでしょうか? 「ABC」ロゴとシンボルマークの図形を別々に2件の商標として商標登録することももちろんできますが、「ABC」ロゴとシンボルマークを組み合わせて1件の商標として商標登録することもできます。

このように、一口に会社のロゴといっても、色々な態様で商標登録をすることができます。
色々ある態様の商標の中で、どれを商標登録すべきかは、商標登録の予算や今後商標をどのように使っていくか等の事情により一概には言えませんが、実際に使用している(或いは使用頻度が最も高い)商標を商標登録するのが基本と考えます。

商標登録する商標をどのような商品・サービスに使うのか?

商標権は特許庁に登録した商標を独占使用できる権利であると上で述べましたが、必ずしもありとあらゆる場面で独占使用できる訳ではありません。
商標登録をする際には、その商標をどのような商品・サービス(以下、サービスのことを役務と呼びます)に使うのかを決め、商標登録できた場合は、その決めた商品・役務について登録商標を独占的に使用できるのです。
ここで決めた商品・役務は、「指定商品・指定役務」と呼んでいます。
また、商品・役務は、45通りの「区分」というくくりで分類されていて、商登録をするにあたり区分も決める必要があります。
商標登録をする際、指定商品・指定役務と区分をどうするか、ということが最も悩ましい事柄かもしれません。
指定商品・指定役務は、商標とともに商標権の範囲を決めるものともいえますので、その選択は非常に重要です。商標登録はできても指定商品・指定役務がビジネス内容と異なっていると、商標登録をした意味がなくなってしまいます。
ちなみに、指定商品・指定役務や区分は1つでなくてもよく、複数個選択できます。
商標登録にかかる費用については後述しますが、区分の数が幾つになるかによって費用は変わってきます(区分の数が増えると商標登録の費用は大きくなります)。

自分でやるか弁理士に頼むか?

商標登録をするための特許庁に対する手続は、弁理士がその専門家といえますが、ご自身で行うことも可能です。

ご自分で商標登録の手続を行うことのメリットは当然、費用が安く済むことです。特許庁に支払う印紙代は、ご自分で行う場合でも必要になりますが、弁理士への報酬が不要になります。
逆に、ご自分で商標登録の手続を行うことのデメリットは、時間が余計にかかってしまうかもしれないことと手続を間違えてしまう場合があることです。
商標登録の手続に関して間違いやすいのは、上述した指定商品・指定役務の記載方法や区分の選択です。

一方、商標登録を弁理士に依頼するメリット・デメリットは、上述したご自身でされる場合の裏返しになりますが、1つ弁理士に頼むメリットを付け足すならば、”拒絶理由通知書への対応”です。
拒絶理由通知書」とは、特許庁の商標審査で、商標登録は認められないと判断された場合に通知される文書です。拒絶理由通知書を受け取ったからといって直ちに商標登録を断念する必要はなく、拒絶理由通知書に対しては反論等をする機会が与えられます。拒絶理由通知書への反論等の対応方法によって商標登録できる・できないが変わってくる場合があります。そのため、この点は専門である弁理士に商標登録を依頼する大きなメリットかもしれません。

商標登録のための手続は?

商標調査

必ずしも”商標登録のための手続”とはいえませんが、一般的には、まず最初に商標登録しようとしている商標について、どれ位の確率で商標登録できるのか(特許庁の商標審査に通る可能性)を探るために「商標調査」を実施します。
商標調査をしてからでないと商標登録できない訳ではありませんが、特許庁の商標の審査に通らないと費用等が無駄になってしまいますので事前に商標調査を実施することをお奨め致します。
商標調査は、登録商標のデータベースを用いて検索をして行います。データベースとしては、特許庁が提供していて無料で利用できる”J-PlatPat”が有名です。

商標登録出願

前述の商標調査が任意の手続ですので、商標登録をするための必須の手続としては「商標登録出願」が最初の手続になります。「商標登録出願」が正式な名称ですが、略して”商標出願”と呼ばれることや、商標にあまり詳しくない方から”商標申請”と呼ばれることもあります。
商標登録出願は、「商標登録願」という願書を特許庁に提出する手続です。
商標登録願には、上で述べました、商標登録を受けようとする商標、区分、指定商品・指定役務等を記載します。その他の願書の主な記載項目は、商標登録の名義人となる商標登録出願人の氏名・名称と住所・居所、手数料(印紙代)の金額等です。

特許庁による審査

商標登録出願をすると、次は、特許庁による審査になります。ですので、この間は、商標登録出願人は特に手続をする費用はありません。
ちなみに、現状(2019年5月の時点)、特許庁の商標審査には6~9ケ月間ほどかかっています。特許庁の商標審査のスピードは、その時々で変わります。早い時には4ケ月間ほどであったこともあります。
また、商標登録を急ぎたい場合は、要件が整えば、「早期審査」の適用を受けるという手段もあります。早期審査の場合、商標登録出願から2ケ月ほどで審査結果が出るのが一般的です。

特許庁の審査でNGとなった場合

特許庁の審査で商標出願した商標について、商標登録を認めるべきではないと判断された場合、上述した拒絶理由通知書が送られてきます。拒絶理由通知書には、その名の通り、商標登録認めない(拒絶する)理由が記載されています。
拒絶理由通知は、あくまで特許庁の一次審査結果であって、最終的な処分ではありません。ですので、「意見書」という書類で拒絶理由通知へ反論をしたり、「手続補正書」で指定商品・指定役務の記載を修正したりすることで、商標登録を目指すことが可能です。これらの手続もご自身で行うことができますが、上述しましたように、特にこれらの手続は弁理士に依頼した方が無難です。
意見書や手続補正書を特許庁に提出すると、出願した商標について、再度、特許庁に審査されます。

特許庁の審査でOKとなった場合

商標登録出願をして、すんなりと特許庁の審査に通った場合、又は拒絶理由通知書が来て意見書・手続補正書を提出して審査に通った場合、「登録査定」という書類が送られてきます。

登録査定を受け取った日から30日以内に特許庁に登録料を納付すると、出願した商標は商標登録されます。

また、商標登録されると、「商標登録証」という賞状のようなものが送られてきます。


以上が商標登録のための手続の大まかな内容になります。
商標登録された後は、10年後(場合によっては5年後)に更新の手続をすることにより、半永久的に商標権を維持することが可能です。


商標登録の費用はどの位かかる?

商標登録にかかる費用は、まず特許庁に納付する印紙代と、弁理士に依頼する場合は弁理士報酬です。
以下の商標登録の手続ごとに費用をご説明します。

商標登録出願

商標登録出願の際に必要な印紙代は次の計算によります。
3,400円+8,600円×区分の数

区分の数が1つの場合は12,000円、2つの場合は20,600円、3つの場合は29,200円という具合になります。

商標登録出願の弁理士報酬は、弊所の場合は次の計算になります。
30,000円+20,000円×区分の数

区分の数が1つの場合は50,000円、2つの場合は70,000円、3つの場合は90,000円という具合になります。実際には、これらの金額に消費税がかかります。以下、同様に弁理士報酬の部分には消費税が発生しますが、その旨の記載は省略します。

商標登録出願の印紙代と弁理士報酬を合わせると、区分の数が1つの場合は62、000円、2つの場合は90,600円、3つの場合は119,200円という具合になります。

拒絶理由通知書への対応

特許庁の商標審査において拒絶理由通知書が送られてくることがあると上述しましたが、その際の対応として意見書や手続補正書を提出する場合の費用は以下の通りです。

意見書・手続補正書には印紙代はかかりません。
ですので、弁理士報酬のみ次の費用が発生します。

意見書作成料 50,000円
手続補正書作成料 10,000円

商標登録査定

特許庁の審査に通ると「登録査定」が送られてきて、特許庁に登録料を納めることになりますが、この登録料の印紙代は次の通りです。
28,200円×区分の数

商標登録の期間は10年間が基本になります。上で述べた28,200円×区分の数は基本の10年間登録する場合の金額です。

商品のライフサイクルが短い等の理由で商標を使用する期間が短い場合や初期費用を抑えたい場合等は、10年間ではなく5年分の登録料を納付することもできる”分納”という制度もあります。
しかし、その商標を5年を超えて使用する場合、分納は割高になりますので注意が必要です。

登録査定となると、弁理士報酬として成功報酬がかかることが一般的です。
弊所の場合、区分の数にかかわらず成功報酬は50,000円とさせて頂いております。

商標登録出願から商標登録査定までの合計

各手続ごとに、印紙代・弁理士報酬ごとにかかる費用をご説明しましたが、商標登録出願から登録査定が来た際にかかる費用を合計すると次のようになります(拒絶理由通知書が来なかった場合)。

区分の数が1つの場合、140,200円
区分の数が2つの場合、197,000円
区分の数が3つの場合、253,800円

 

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