商標登録に関する弁理士のセカンドオピニオンの有効性

「セカンドオピニオン」というと、日本では医療の分野で比較的によく用いられる言葉であると思います。
「広辞苑」を見ますと「よりよい治療法を見出すために、主治医意外の医者から聞く意見。」とあります。

とはいえ、セカンドオピニオンは、必ずしも医療の分野に限る必要は無いと考えられます。
我々のような弁理士を始めとする、所謂”士業”も専門的な業務を行っている訳でして、よりよい専門業務を行ってもらうためには、士業に対するセカンドオピニオンも有効ではないかと思います。

そこで、本稿では、商標登録に関する弁理士のセカンドオピニオンの有効性について、以下に述べたいと思います。

商標登録に関して求めるべきセカンドオピニオンの項目

これは、商標登録に関し、ある弁理士から何らかの見解を得たうえで、他の弁理士にも見解(セカンドオピニオン)をもらうことが有効ではないかと思われる事項です。
以下に、代表的と考えられるものを挙げてみます。

・商標登録ができる可能性

・指定商品・指定役務の範囲

・料金

商標登録ができる可能性

商標登録を行う場合、事前に商標調査を実施するのが一般的です。
商標調査とは、商標のデータベースを検索して、商標登録を希望している商標と同じような商標が既に商標登録されていないか等を調べることです。
商標調査によって、商標登録を希望している商標が商標登録できる可能性を探ることができます。

商標調査の結果から、その商標が商標登録できる可能性はどの程度あるのかという弁理士の見解は、弁理士によって異なることがあります。
これは、弁理士ごとに、商標調査の精度が違うことや、実務経験等が異なることから、生じる見解の相違です。

ここで、注意が必要なのは、商標登録ができる可能性が高いと判断した弁理士に仕事を頼むべき、とは必ずしも言えないということです。

弁理士の側からすると、「ご希望の商標は商標登録できる可能性が低い。」と言ってしまうと、仕事を頂けなくなるかもしれないので、残念ながら、無理に楽観的な見解(商標登録できる可能性が高い)を示してしまう弁理士もいるようです。
このあたりの見極めは、かなり難しいと思われますが、弁理士の人柄など総合的に判断して信頼できる弁理士を選ぶべきでしょう。

指定商品・指定役務の範囲

商標登録をする場合には、その商標をどのような商品・サービスに使用するのかを決める必要があります。
これらの商品・サービスを指定商品・指定役務と呼びます。

商標登録をするための特許庁に対する手続は、まず、商標登録出願という手続で、特許庁に商標登録願という願書を提出します。
願書には、指定商品・指定役務を記載しますので、指定商品・指定役務の願書への記載内容は、基本的には弁理士の判断に委ねられます(出願人となるクライアント様が所定の指定商品・指定役務の記載を弁理士に指示することは可能です。)。

そのため、指定商品・指定役務は、弁理士によって記載内容が変わってくる可能性があります。

指定商品・指定役務を広い範囲で指定した方が、商標登録されたときの商標権の範囲が広くなり、クライアント様に有利とも考えられます。

しかし、指定商品・指定役務を必要以上に広げすぎると、商品・役務を分類している「区分」というくくりの数が多くなるため、その分、特許庁に払う印紙代が高くなるとともに、弁理士に支払う報酬も高くなっていまいます。

ですので、クライアント様のビジネスの内容に則した適切な範囲での指定商品・指定役務の判断が我々弁理士に求められるところです。

上述の通り、区分の数が増えると弁理士報酬も大きくなります。
以前、クライアント様から、他の弁理士から「『これだけの商品・役務を指定すべきで、区分の数はこうなる。』という説明を受けたけど、商品・役務の範囲は適切だろうか?」とセカンドオピニオンを求められたことがあり、検討してみると、そんなに広い範囲の商品・役務、区分は到底必要無いと考えられるものでした。
残念ながら、その弁理士は弁理士報酬額を大きくするために、必要以上に広い範囲での商品・役務を指定しようと考えたのかもしれません。

料金

商標登録の費用については、本ブログでも何度か触れているので、ここでは詳細には述べません。

商標登録の費用は、まず、以下の2種類があることをご理解ください。

・特許庁に払う印紙代

・弁理士に払う弁理士報酬(手数料、成功報酬など)

印紙代については、基本、どの弁理士に依頼しても同じですが、1点注意が必要です。
商標登録料です。
商標登録料は、特許庁に10年分ごとに納付するのが基本ですが、5年分ごとに納付することもできます。
ですので、弁理士によっては、10年分で計算している場合と、5年分で計算している場合があります。
一概には言えないものの、5年分で計算すると弁理士にメリットは大きいですが、クライアント様にはデメリットの方が大きいと考えられますので、この点には注視すべきでしょう。

次に、弁理士報酬ですが、弁理士報酬は、現在では、弁理士が自由に金額を設定することができますので、弁理士によって弁理士報酬はマチマチです。
ご注意頂くとすれば、弁理士報酬は、最初の商標登録出願のときにだけ発生するものではない、ということです。
つまり、最初の出願時の費用が安くても、後から発生する費用が高く設定されている場合もありますので、後々発生する、意見書作成手数料、更新登録料納付手数料などの金額も事前に確認をすべきでしょう。
とはいえ、これらを事前に確認するのも困難な場合があるので、別の弁理士にセカンドオピニオンを求めるのも有効といえます。

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