商標登録で弁理士選びに迷ったら

商標登録をご検討中の皆様、商標登録の手続をどの弁理士・事務所に頼むべきか迷ってしまうことはありませんか?

今では、多くの弁理士が事務所のホームページを持っていますし、また、弁理士によるインターネット広告も盛んに行われていますので、商標や弁理士に関する情報が特にインターネット上では氾濫しています。

本稿では、このような状況の中、商標登録の手続をどの弁理士に依頼すればよいかのヒントをお伝え致します。

弁理士とは?

まずは、弁理士についてご説明致します。

弁理士は一言で言うと”知的財産に関する専門家”です。

知的財産とは、発明、考案、植物の新品種、意匠(デザイン)、著作物、商標、商号、営業秘密などの人間の創造的活動により生み出されるもの、商品・役務を表示するもの、事業活動に有用な技術・営業情報などが含まれます。

弁理士の主な業務は、上記知的財産のうち、発明、考案、意匠及び商標に関するものとなります。
これら発明、考案、意匠及び商標は、それぞれ特許庁に登録(特許登録、実用新案登録、意匠登録、商標登録)をすることで保護されるという共通点があります。
そこで、弁理士の主な業務をもう少し具体的に言いますと、発明、考案、意匠及び商標を特許庁に登録するために、最初に行う出願(特許出願、実用新案登録出願、意匠登録出願、商標登録出願)の手続であり、出願に必要な書類を作成し、特許庁に提出ことになります。
この出願業務が弁理士の業務の大きな割合を占めています。

弁理士にも専門分野がある

上述のように、弁理士の主な業務は特許、実用新案、意匠及び商標に関するものです

ここで、特許と実用新案の保護対象は、それぞれ発明と考案になりますが、両者はいずれも技術的なアイデアで、これらの出願業務としては、技術的なアイデアを文章と図面で説明する書類を作成することになります。そのため、特許と実用新案に関する業務は、基本的には同じような内容となります。
これらは、技術的な事柄を取り扱いますので、理系の学校出身の弁理士が得意とする分野といえます。

次に、意匠ですが、意匠登録はデザインを保護する制度です。
意匠の出願業務は、意匠出願の対象となるデザインの施された物品の図面や写真を掲載した書類を作成することが主となります。
意匠は、特許・実用新案とは異なり、技術的事柄でもないので、文系出身の弁理士が取り扱うことも多く、後述する商標と意匠に特化している弁理士もおります。

最後に、商標ですが、商標は自社商品・サービスと他社商品・サービスとを区別するための標識で、商標登録は、こうした識別標識を保護する制度です。
商標も意匠と同様、技術的ではないため、文系出身の弁理士が得意とする分野といえます。

以上のように、主な弁理士業務といっても、特許・実用新案と、意匠と、商標とでは、内容が全く異なりますので、商標登録を依頼する弁理士としては、やはり商標を得意とする弁理士に依頼した方が間違いはないでしょう。

ちなみに、2016年の特許、実用新案、意匠及び商標の日本における出願件数はおおよそ以下の通りです。

・特許   300,000件
・実用新案   6,000件
・意匠    30,000件
・商標   160,000件

一見して明らかですが、特許出願の件数が圧倒的に多いです。
また、各出願業務にかかる手間や時間でみても、特許・実用新案業務にかかる手間暇の方が意匠・商標に比べて各段に大きいです。
そのため、特許・実用新案業務に主として従事する弁理士が多く、弁理士のうち約8割が理系出身者となっています。
逆に言うと、商標を専門とする弁理士は比較的に少ないといえます。

弁理士への報酬

弁理士を選ぶ際に、弁理士に支払う報酬がどの程度であるかということも大きな基準になると思われます。
商標登録にかかる費用は、弁理士報酬と特許庁に支払う印紙代がありますが、印紙代は当然のことながら、どの弁理士に頼んでも変わらないので、ここでは基本的に弁理士報酬のみに言及します。
また、商標登録に関するコストや弁理士の報酬に関しては、本ブログの他の記事でも多く取り上げていますので、ここでは、弁理士報酬の仕組みについて詳しく述べることはせず、弁理士報酬の体系の類型をご案内するにとどめたいと思います。

10年以上前になりますが、弁理士の報酬は、弁理士を束ねる組織である日本弁理士会が定めた報酬額に従う必要がありましたので、弁理士報酬額は一律でした。
しかし、現在では、こうした規制がありませんので、弁理士の報酬体系は、各弁理士が独自に設定することができるようになっています。
そのため、各弁理士がそれぞれ独自の報酬額を決めている現状では、弁理士の専門性だけではなく弁理士報酬額も考慮する必要があり、ますます弁理士を選択するのが困難になっているともいえるでしょう。

そこで、少し分かり易くなるよう、各弁理士・特許事務所が採用している報酬体系の傾向から、ざっくりと次の3つの類型にわけてみました。

・”激安”タイプ
・”弁理士会報酬”タイプ
・”中間”タイプ

”激安”タイプ

「商標出願10,000円~」「商標調査は無料」「商標登録できなかったら全額返金保証」「登録料5年分」といったキーワードが激安タイプに該当します。インターネット広告などでよく見かける類型です。

仕事の質はどうなのか?
商標出願の後に発生する費用の額はいくらになるのか? 
返金保証の条件は?
登録料は10年分が基本であるところ、なぜ5年分なのか?

といった疑問もありますが、実際にトータルで安くて、良い仕事をしてくれるのであれば、お薦めできるかもしれません。(が、元々、激安タイプの弁理士を利用されていたクライアント様が弊所に事務所を変更されるケースも次第に多くなってきています。)

”弁理士会報酬”タイプ

こちらは、上述した過去日本弁理士会が定めていた報酬額を現在もそのまま採用している弁理士事務所です。
弁理士報酬額の規制は撤廃されていますが、弁理士が自主的にこの報酬額を採用することは構わないので、継続してこの報酬額を採用しているということです。
この類型は、古い特許事務所や大きな特許事務所に多い傾向があるように思われます。
以前は、当たり前の報酬額でしたが、現在の相場に照らすとちょっと高いかもしれません。

”中間”タイプ

弊所もこの類型に当てはまります。
文字通り、激安と弁理士会報酬の中間的な金額の弁理士報酬体系を採用している弁理士事務所です。

個人的には、”現在の相場感を見据えつつ、いい加減な仕事はしない”というつもりで、このような報酬体系を採用しています。

弁理士事務所の規模

弁理士事務所或いは特許事務所と呼ばれる弁理士の事務所は、大きい所では弁理士及び弁理士資格を持たない事務員合わせて数百名規模の事務所から、小さい所では弁理士1人という感じです。
数的には、弁理士1人と数名の事務員というパターンが最も多いのではないでしょうか。

結論的に、商標登録において事務所の規模はあまり影響がないように思われますが、大きな事務所の場合、上述のように弁理士報酬が高額になる可能性があります。

弁理士事務所の地域

結論から申しますと、特に商標登録ということからすると、弁理士の事務所の所在地はあまり関係がないように思われます。

クライアント様の所在地と弁理士事務所の所在地が近い方が何となく安心感があるようにも思われるかもしれないのですが、実際に商標登録の手続をご依頼頂くとご理解頂けると思いますが、商標登録のご依頼は、電話、メール、ファックス等で完結してしまうことがほとんどです。
実際、弊所のクライアント様も北は北海道、南は静岡県におられ、何も不自由なく対応致しますので、弁理士の所在地はあまり影響がないと考えられます。

弁理士の前職は?

弁理士を選ぶポイントとして最後に挙げるのは、弁理士の前職です。
この点は、通常あまり議論されることのないポイントかもしれません。

弁理士のこれまでの職務経歴はどうか、という点も考慮すべきかもしれないということです。
少数派とは思いますが、学校を卒業していきなり弁理士事務所に就職をして一般企業勤務経験の無い弁理士もいるかもしれません。
また、弁理士事務所勤務が長く一般企業での実務・勤務経験が少ない弁理士もいるかもしれません。

何を申したいかと言いますと、一般企業での商標実務経験がどれ程あるのか?ということです。

弁理士事務所の弁理士の商標の実務は、クライアント様へのアドバイスやコンサルティングを行うこともありますが、基本は、クライアント様の指示に従って業務を行うことです。

一方、一般企業における商標実務担当者は、企業という商標ユーザーの視点で商標実務を行います。
つまり、企業における商標担当者は、弁理士事務所のクライアントの立場であり、実際に商標を”使う”現場を知っています。

このように、同じく商標に関する業務に携わる弁理士事務所の弁理士と企業の商標担当者とでは、商標実務に対する視点が異なります。
当然、弁理士事務所視点だけではなく、クライアント視点・商標ユーザー視点でも商標のことを検討できる方が望ましいと考えられます。

以上、網羅的に商標登録において弁理士を選ぶポイントをご説明致しましたが、弊所では無料相談も行っておりますので、お気軽に以下のフォームやお電話(043-372-1500)でお問い合わせください。

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