パロディ商品対策となるか?

「白い恋人VS面白い恋人」、「フランク・ミューラーVSフランク三浦」など、本家とパロディとの間での争いが度々起きています(「フランク三浦事件」は、商標権侵害や不正競争防止法違反の事件ではなく、「フランク三浦」の登録商標の有効性を争った事件です。)。

そんな中、2017年5月11日のヤフー・ニュースで興味深い記事を読みました。

サマンサタバサが、パロディ商品側の商標「サマンサタバタ」を商標登録出願した、という記事です。

サマンサタバサのパロディ商品として「サマンサ田端」というブランド(?)があるのですが、「サマンサ田端」の読みであり、カタカナ表記「サマンサタバタ」を本家のサマンサタバサが商標登録出願してしまったという事例です。

「サマンサタバサVSサマンサ田端」は、構造としては「フランク・ミューラーVSフランク三浦」と比較的似ているように思います。

ここで、サマンサタバサの今回の商標登録出願は、サマンサ田端側に「サマンサ田端」を商標登録されてしまうのを防ぐためという意図があったのかどうかはわかりません。一見すると、そのようにも見えます。

比較的に大きく、資金的に余裕がある会社の中には、自社の重要な商標を模倣やパロディから保護するために、当該自社の商標を商標登録するのはもちろんのこと、当該重要商標と類似する商標も商標登録してしまうという商標出願戦略をとっているケースもたまに見聞きします。
自社の商標を商標登録することにより、自社商標と同一又は類似商標を他者に使用されることを阻止できます。
さらに、自社商標と類似する商標を商標登録することにより、当該類似商標と類似する商標まで他者の使用を阻止することができます。

しかしながら、こうした自社商標と類似する商標まで商標登録していく戦略には、弱点もあります。

そもそも商標制度は、商標そのものである文字列やマークを保護するためにあるのではなく、商標そのものの文字列やマークに蓄積された、その商標を使用する事業者の”信用”を保護するものです。
そのため、使用されていない商標には”信用”が蓄積されないので、商標登録すべきでないという考えがあります。
(もっとも、日本の商標登録制度のもとでは、近い将来使用する商標であれば、現在使用していない商標であっても商標登録される可能性はあります。)

つまり、上述したような重要な商標と類似する商標を使用する予定がないのであれば、そのような類似商標は商標登録すべきでないということになります。

今回でいうと、サマンサタバサが商標出願した「サマンサタバタ」がこれに該当します。

特許庁の商標審査の段階で、出願された商標を使用しているのか、或いは近い将来使用するのか、といったことの審査は行いませんので(商品・役務を幅広く指定した場合等はあります。)、サマンサタバサの「サマンサタバタ」は商標登録される余地はあります。

上述した”使用されていない商標は商標登録すべきでない”という考えの表れの1つが「不使用取消審判」という制度です。
端的に言うと、日本で3年以上使用していない商標は、誰でも特許庁に不使用取消審判を請求することができ、商標権者が当該商標を使用している、或いは3年以内に使用したことがあるといったこと立証できない限り、当該商標の商標登録は取り消されてしまいます。

サマンサタバサ側も当然不使用取消審判制度の存在は知っているでしょうが、サマンサタバサ自身が「サマンサタバタ」商標を使用するとも思えないので...今後の行方を注視したいと思います。

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