コメダ珈琲店VSマサキ珈琲中島本店

「コメダ珈琲店」を運営する株式会社コメダが、「マサキ珈琲中島本店」というカフェを運営する株式会社ミノスケに対し、不正競争防止法を根拠として、酷似する店舗外観や内装等の使用の禁止を求める仮処分事件の決定が東京地方裁判所にてなされたことが報道されています。

この仮処分事件の決定に関する詳しい情報や本案訴訟の行方も不明の段階ですが、興味深い裁判所の判断が示された事件であると思われます。

こうした飲食店同士の知的財産に関連する紛争は、比較的に多く発生しています。流行っている・売れている店のビジネスモデルや外観等が模倣されるというケースが業界的に多いのかもしれません。

ビジネスモデルに関しては、上手く工夫をして特許を取得することができれば、そのビジネスモデルを模倣から守る(独占的に実施する)ことができるかもしれません。しかし、飲食店のビジネスモデルは、そもそも特許の保護対象である”自然法則を利用した技術的思想”でない場合が多く、特許で保護することが困難です。

一方、飲食店の”上っ面”の部分、例えば、店舗の名称、店舗の外観、店舗の内装、従業員の制服、食器のデザイン等も模倣の対象となります。
店舗の名称に関しては、店舗名称を商標登録をしておくことで模倣から守ることができます。商標登録は、店舗名称をパクりや偶然の一致等によって同じような名称を使用されてしまうのを防ぐ有力な手段といえます。ですので、店舗名称を商標登録しておけば、同じような店舗名称を使われてしまう危険性は低くなりますし、万が一同じような店舗名称を使用されてしまっても商標権に基づいて、使用の差止等をすることは比較的容易です。

これに対し、店舗の外観、店舗の内装、従業員の制服、食器のデザイン等は、商標登録で保護を受けることが難しいといえます。商標は、商品・サービスの出所識別機能をその基本的機能としていますが、店舗の外観、店舗の内装、従業員の制服、食器のデザイン等は基本的に出所識別機能を発揮しないとも考えられるため、商標登録制度で保護するのが困難なケースが多いです(例外はありますが)。

しかしながら、上述の通り、店舗名称は商標登録で保護し易いことからマネをされないけど、店舗の外観、店舗の内装、従業員の制服、食器のデザイン等をマネされてしまうというケースも多く見受けられます。今回のコメダ珈琲の事件もこれに当てはまります。
このようなケースでは”不正競争防止法”を根拠として模倣を排除することがなされる傾向にあります。不正競争防止法は、所定の行為を”不正競争”行為と定め、簡単に言いますと、これらの不正競争行為を禁止する法律です。
飲食店等の知的財産関連の紛争でよく使われるのは、不正競争防止法2条1項1号に定める”混同惹起行為”と呼ばれる不正競争行為を定める条文です。
不正競争防止法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用して、他人の商品・営業と混同を生じさせる行為を不正競争行為として規定しています。ここで、”商品等表示”について条文では”人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの”と規定しています。最後に”その他の商品又は営業を表示するもの”となっていますので、商品等表示は、その前に例示されているものに限られないことが条文からわかります。そうは言っても、ここに例示されていない、店舗の外観、店舗の内装、従業員の制服、食器のデザイン等は、一般的には商品等表示として認められにくいと考えられています。

今回の仮処分事件に戻りますと、(繰り返しになりますが詳細な情報がないのでアバウトになりますが)今回の決定では、店舗の外観や内装(席の配置)に関しては、商品等表示に該当すると判断されたようで、この点については興味深い決定であると考えられます(なお、食器の組み合わせは商品等表示該当性を否定したようです)。

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