弁理士の不適切な宣伝

2016年10月11日付で日本弁理士会の会長名で、会員の弁理士に対し、ホームページや広告における表示について注意がなされています。
(日本弁理士会は、弁理士になるための必要加入団体のため、弁理士は全て日本弁理士会の会員です。)

具体的には、弁理士事務所・特許事務所のホームページや広告に、以下のような不適切な表示が記載されているのが多々見受けられるため、改善を求めるという内容です。

・「他の事務所との比較」
・「登録率の表示」
・「格安」
・「激安」
・「業界初」
・「日本初」
・「最低水準の費用」
・「通常の半額の費用」
・「登録されなかったときは印紙代を含む費用を返す」

以上のような表示を弁理士や特許事務所のホームページや広告で見かけたら、その弁理士や特許事務所は”要注意”かもしれません。

個人的には、あまり規制を強めることはいかがと思うところもありますが、確かに過大な表現や事実に基づくのか不明な表現は慎むべきと考えています。

他の事務所との比較

「他の事務所との比較」に関しては、
A事務所は¥50,000
B事務所は¥40,000
当事務所は¥20,000
のような表示になろうかと思われますが、数ある弁理士・特許事務所の中からなぜA事務所やB事務所を抽出したのか? 
恣意的に選んだのではないかとの疑義が生じます。
また、上の金額は、手続に必要な費用の総額ではなく、最初にかかる一部の費用の場合も多いです。弁理士の費用は、一括で全額を請求することはあまりなく、何回かに分けて請求することが一般的です。
例えば、最初に特許庁にする出願の手続の費用を請求し、次に特許庁の審査に通ってから成功報酬を請求するという具合です。
そのため、上の「当事務所」は、最初の手続費用は、A事務所やB事務所よりも安いのですが、2回目以降にかかる費用がA事務所やB事務所よりも安いかどうか分かりません。

登録率の表示

登録率の表示は、例えば、”当事務所での特許成功率は95%”とか”当事務所の商標登録率は95%”といった表示です。
このような登録率は、確かに、担当する弁理士や事務所の手腕によって左右されることもあります。
しかし、どの弁理士が担当しても、上手くいくであろう案件が多いのも事実です。
また、例えば、特許の場合、取得しようとする特許の範囲を狭めていけばいくほど特許は取りやすくなるという仕組みになっています。あまりに狭い範囲で特許を取得しても、特許成功率は上がるかもしれないのですが、良い特許とはいえません。
さらに、特許にしても商標にしても、依頼者から”ダメ元”で出願を依頼されることもあります。
このように、弁理士や事務所の手腕以外の要素で登録率が変わってくることもあり得るので、登録率の表示によって、”この事務所に依頼すれば、特許や商標登録が相当高い確率で上手くいく”との誤解を与えかねないので、望ましい表現とはいえません。

格安・激安・最低水準の費用・通常の半額の費用

「格安」「激安」「最低水準の費用」「通常の半額の費用」等の表示は、弁理士への報酬が安いことをアピールするための表現ですが、何らかの基準となる価格があって、それとの比較において”安い”ということになろうかと思いますが、そもそもどの価格を基準としているのか不明です。
弁理士の報酬は、弁理士と依頼人との間で自由に決めることができるので、基準価格などありません。
特に、「通常の半額の費用」という表現は、違法な表現の可能性もあります。いつも「通常の半額の費用(¥10,000が¥5,000)」になって常態化していると、「通常の費用(¥10,000)」は元々存在せず、”半額と言っている費用(¥5,000)”が”通常の費用(¥5,000)”になるため不適切なのです。

業界初・日本初

「業界初」「日本初」という表示については、本当に「初」なのか、どのように調べたのか大いに疑問があります。
全ての弁理士・特許事務所がホームページを持っていて、そこに業務内容や価格等が全て表示されている状況であれば、「初」かどうか調べられるのかもしれないのですが、ホームページを持っていない事務所もありますので、「初」かどうかなど、全ての弁理士にアンケート調査でもしない限り調べようがないでしょう。

以上のように、不適切で過激な表現をしているホームページや広告にはよく注意をされた方が良いでしょう。

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