商標法第四十一条の二

商標法第四十一条の二は、商標登録の登録料の分割納付に関する規定です。
商標権の存続期間は10年間で、何回でも商標権の存続期間を更新登録することができます。
そのため、商標登録のために特許庁に納付する登録料は、原則として10年分の登録料になります。
しかし、そうは言ってもライフサイクルが短いと考えられる商品等の場合、商標権は10年間も必要ないということも考えられます。
そこで、商標法は登録料を10年分ではなく5年分ごとに納付する、分割納付という仕組みを用意しています。
分割納付はある意味便利な仕組みですが、以下のような注意も必要です。

分割納付を2回繰り返して10年間商標登録をした場合、登録料10年分を一括で納付した場合よりも割高になる。
分割納付を利用して5年ごとに登録料を納付する場合、5年ごとに弁理士に登録料納付手数料を支払う必要がある。

以上のように、分割納付にはデメリットがあります。
弁理士の側から見ると、分割納付の場合、登録料納付手数料を一括納付の場合の2倍頂けるのでありがたいものですが、会社のブランドや店舗のブランドの商標登録のように長期的に使用すると考えられる商標は、一般的には10年分の一括納付をおススメいたします。

第一項

第一項は、分割の納付の基本的内容を規定しています。
分割納付の場合の登録料は、16,400円に区分の数を乗じた額になります。
分割納付の場合の最初の5年分の登録料を「前期分」、後半の5年分を「後期分」等と呼んだりすることがあります。
前期分の登録料の納付期限は、商標法第四十条第一項に定める一括納付の場合と同様です。
後期分の納付期限は、商標権の存続期間の満了前5年までに納付する必要があります。
具体的な条文は以下の通りです。

「商標権の設定の登録を受ける者は、第四十条第一項の規定にかかわらず、登録料を分割して納付することができる。この場合においては、商標登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に、一件ごとに、一万六千四百円に区分の数を乗じて得た額を納付するとともに、商標権の存続期間の満了前五年までに、一件ごとに、一万六千四百円に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。 」

第二項~第五項

第二項から第五項までは、分割納付の場合の納付期限を徒過してしまったときの救済規定です。
一括納付の場合と同様に納付期限を過ぎてしまっても納付できる場合があります。
具体的な条文は以下の通りです。


第二項「特許庁長官は、前項の規定により商標登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付すべき登録料(以下「前期分割登録料」という。)を納付すべき者の請求により、三十日以内を限り、同項に規定する期間を延長することができる。 」

第三項「前期分割登録料を納付すべき者は、前期分割登録料を納付すべき期間(前項の規定による期間の延長があつたときは、延長後の期間)内に前期分割登録料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、前期分割登録料を納付することができる。 」

第四項「前期分割登録料を納付すべき者がその責めに帰することができない理由により、前項の規定により前期分割登録料を納付することができる期間内に前期分割登録料を納付することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその登録料を納付することができる。 」

第五項「第一項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料(以下「後期分割登録料」という。)を納付すべき者は、後期分割登録料を納付すべき期間内に後期分割登録料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、その期間の経過後六月以内に後期分割登録料を追納することができる。 」

第六項

第六項は、分割納付の場合で後期分の登録料の納付がなかったときの商標権の取り扱いを規定しています。
この場合は、当然のことながら商標権は5年間で消滅します。
具体的な条文は以下の通りです。

「前項の規定により後期分割登録料を追納することができる期間内に後期分割登録料及び第四十三条第三項の割増登録料の納付がなかつたときは、その商標権は、存続期間の満了前五年の日に遡つて消滅したものとみなす。 」

第七項

第七項は、商標権の存続期間の更新登録申請をする場合も登録料の分割納付ができることを定めています。
商標権存続期間の更新登録申請の際の分割納付の登録料は、22,600円に区分の数を乗じた額となります。
また、この場合の後期分の納付時期は、次の商標権の存続期間満了前5年までとなります。
具体的な条文は以下の通りです。

「商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、第四十条第二項の規定にかかわらず、登録料を分割して納付することができる。この場合においては、更新登録の申請と同時に、一件ごとに、二万二千六百円に区分の数を乗じて得た額を納付するとともに、商標権の存続期間の満了前五年までに、一件ごとに、二万二千六百円に区分の数を乗じて得た額を納付しなければならない。 」

第八項

第八項は、更新登録申請の場合の後期分の納付について、最初の商標権の後期分の納付の規定である、本条第五項及び第六項の規定を準用しています。
具体的な条文は以下の通りです。

「第五項及び第六項の規定は、前項の規定により商標権の存続期間の満了前五年までに納付すべき登録料を追納する場合に準用する。この場合において、第五項中「第一項」とあるのは、「第七項」と読み替えるものとする。 」

第九項

第九項は、商標権が国、又は国と国以外の者の共有に係る場合の登録料の取り扱いを定めた商標法第四十条第三項から第五項までの規定を分割納付の場合に準用しています。
具体的な条文は以下の通りです。

「第四十条第三項から第五項までの規定は、第一項及び第七項の場合に準用する。 」