商標法第三十条

商標法第三十条は、専用使用権について定めています。
専用使用権は、商標権者が他人に自分の登録商標の使用を許諾する、所謂、商標のライセンスの一形態です。
商標権者から専用使用権の設定を受けた者は、その商標を独占的に使用することができます。この場合、商標権者も自分の登録商標を使用することができなくなります。

第一項

第一項は、商標権者が専用使用権を設定できることを定めています。
しかし、例外があり、国や地方公共団体等の一定の商標と地域団体商標については、専用使用権を設定することができません。これらの商標については、商標権者となれる者に制限がある(主体的要件)ところ、専用使用権が設定できるとなると、主体的要件を定めた趣旨が没却されてしまうからです。
具体的な条文は以下の通りです。

「商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権及び地域団体商標に係る商標権については、この限りでない。 」

第二項

第二項は、専用使用権者の権利の内容を定めています。
専用使用権者は、「設定行為で定めた範囲内」において、登録商標の使用をする権利を専有するとされていますので、専用使用権の内容は、時間、内容、地域等で制限を付けることができます。
具体的な条文は以下の通りです。

「専用使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。 」

第三項

第三項は、専用使用権の移転について定めています。
専用使用権の移転は、商標権者の承諾がある場合か、一般承継の場合に認められます。
具体的な条文は以下の通りです。

「専用使用権は、商標権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。 」

第四項

第四項は、特許法の準用規定です。
特に重要なのは、特許法第九十八条第一項第二号を準用している点です。
この規定から、専用使用権の設定等は、登録をしなければ効力を生じないこととなります。
具体的な条文は以下の通りです。

「特許法第七十七条第四項 及び第五項 (質権の設定等)、第九十七条第二項(放棄)並びに第九十八条第一項第二号及び第二項(登録の効果)の規定は、専用使用権に準用する。」