商標法第十五条の三

商標法第十五条の三は、先願に係る未登録商標の存在を理由とした拒絶理由通知に関する規定で、「先願未登録商標に基づく拒絶理由通知制度」とも呼ばれます。

第一項

商標法第十五条は、拒絶理由を列挙しており、その中には商標法第四条第一項に該当する商標も含まれています。
商標法第四条第一項第十一号は、他人の先願の登録商標と同一又は類似の商標は商標登録を受けることができない旨を定めています。ここでの他人の商標は「登録商標」です。
商標法第十五条の三は、他人の登録商標ではなく、他人の先願の商標登録出願中の商標と同一又は類似の商標についての商標登録出願に対して拒絶理由を通知することができることを定めています。
この規定がないと、先願の商標登録出願に対しての最終的な処理がされないと、後の商標登録出願の処理が進められないことから、全体的な処理スピードが遅くなってしまいます。そこで、このような処理の遅滞を防止するべく本条の規定が設けられています。
しかし、本条の規定は「審査官は、~できる。」との規定ですので、審査官が本条に基づいて拒絶の理由を通知するのは義務ではありません。
具体的な条文は以下の通りです。

「審査官は、商標登録出願に係る商標が、当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の商標又はこれに類似する商標であつて、その商標に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものであるときは、商標登録出願人に対し、当該他人の商標が商標登録されることにより当該商標登録出願が第十五条第一号に該当することとなる旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。 」

第二項

商標法第十五条の三第二項の規定は、確認的な条文とも思われますが、第一項に基づく拒絶理由通知がなされている場合は、先願の他人の商標登録出願に係る商標が商標登録されたときは、改めて拒絶理由を通知する必要がないことを定めています。
第二項の条文は以下の通りです。

「前項の通知が既にされている場合であつて、当該他人の商標が商標登録されたときは、前条の通知をすることを要しない。 」